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 生徒が積極的に活動して活き活きとしている授業を作ることは、そう簡単ではありません。それを可能にする手法の一つとして、私は長年、授業にクイズ形式を取り入れてきました。
 生徒自身が「考える価値がある」と判断する質問を発すれば、生徒諸君は自発的に思考力を働かせ、喜んで自分の意見を発表してくれます。その結果、授業は自然と双方向的になります。同時に、その考えたことは単なる記憶に留まらず、しっかりと定着する内容となってくれます。

 これは、その実例の紹介です。また、時代に合わせて作った新作も含まれています。それぞれについて、授業論とか技術論とかの視点から私の意図する所はありますが、煩わしい定義は別として、普通に興味深く読んでもらえる作品群になっていれば幸いです。

※2013年12月、新学習指導要領にあわせて、前文を訂正
※2009年7月、メニュー項目と説明を修正


<メニュー>それぞれの分野ごとにまとめてあります。
日本史 @原始〜古墳時代 A飛鳥〜平安時代 B鎌倉〜戦国時代
C安土桃山時代 D江戸時代 E幕末〜明治維新期
F自由民権〜日露戦争期 G明治末〜昭和初期 H満州事変日中戦争期
I太平洋戦争期 J戦後期 K高度経済成長期〜 
世界史  @先史の世界  A四大文明 B古代地中海世界
C東アジア世界 Dイスラム世界 Eヨーロッパ中世
F近代ヨーロッパの誕生 Gアメリカの独立と発展 Hヨーロッパの膨張
I二つの世界大戦 J戦後世界と東西対立 K現代の世界 
現代社会
@国内政治 政治の諸相 A国内の政治制度・機関 B国際政治の諸相
D現代日本経済の諸相 E産業の発達・経済成長 F国際経済の諸相
G宗教 H哲学・心理  
I日本の文化 J世界の文化  
J現代の課題 環境 K現代の課題 人口  

<方法論 授業の中でのクイズの進め方について> 
    ※教員以外の方は、とばしていただいてかまいません。
 
 授業中にクイズをする方法については、いくつかの方法があるでしょう。私は、おもに次の二つの方法をとりました。

1 クラス全体に対して行う質問
 3〜4の選択肢を作って出題し、挙手によって生徒全員に一斉に答えを示させます。答えAと思う人は「ぐー」・「ちょき」・「ぱー」の「ぐー」の形で挙手という具合です。これは、授業の導入部分などで、よく使用しました。たとえば、ヒトラーが首相となったのは、「グー」クーデター・「チョキ」選挙・「パー」前任者の暗殺のうちどれか、といった問題です。

正解は「選挙」なんですが、導入ですから、間違いが多ければ多いほど、その後の授業における、生徒の「探求心」が高まることになります。
 余談ですが、選択肢が多くなると、手の形がいろいろ必要となります。「キツネ」・「ツーアウト」・「キリン」とか・・・。これも生徒とのコミュニケーションのネタになります。

2 グループ別に考えるクイズ
 1のやり方では、複雑な思考を要する問題は、解答することはできません。
 そこで、生徒にグループを作らせ、生徒がグループ内で議論(思考)した上で、解答させるという方法とりました。
 
 また、より高い意欲を高めるために、「競争原理」も利用しました。つまり、次のようにグループを作らせて、「グループ対抗で行うクイズ」という形で、年間を通して実施してのです。
次は、説明用として生徒に配布したプリントの一部です。
 


〈やり方〉
A先ず次の方法でグル−プをつくる。

  1. 人数は2〜5人とする。(原則としてメンバ−は1年間変更無し)

  2. リ−ダ−を決める。

  3. 素敵なグル−プ名をつける。

B授業中の発問にグル−プで相談して答えるほか、グル−プ別対抗クイズを行う。

  1. クイズの内容は、地歴公民科の知識から答えるものの他、他教科の常識を総合的に利用するもの、その場に示されていろいろな要素から考えるもの、時には、ヒラメキ・勘に頼るものなどいろいろあり。

  2. 正解グル−プには毎回1〜3点ぐらいの点数を与え、一定期間(おおむね2ヶ月ぐらい)に多くの点数を獲得したグループが優勝。期間ごとの優勝グループは、席替えの優先選択権を獲得。年間の最優秀グループは、クイズで登場した「現物」を賞品として獲得できる。

  • 「現物」とは、日本史では、「フカヒレのスープ」・「琉球産黒砂糖」・「理研のワカメスープ」などなど。日本史の専門家ならこれらがどこで登場したかはおわかりいただけると思います。

<クイズ学習のねらい このページのトップ(クイズメニュー)へ戻る

 クイズ学習のねらいは、次の諸点です。
1

 通常は知識注入(教師の一方的な教え込み)型になりがちな高校地歴公民科の授業を、生徒が十分に考える時間や発表する時間を設定し、双方向型の授業に切り替える。

2

 考える過程で、歴史的思考力・資料活用の技能や表現力・疑問を見いだす力などを育てる。

3

時にはいわゆる「討論」になるような、答えが一つではない問題提起も行い、いわゆる「価値偏差縮小型」の授業も取り入れる。

4

 全体として、「テストのために覚えなさい」型の授業から脱却し、生徒が主体的に活動し、学ぶ楽しみ、追究する面白さを実感できる授業を構成する。(これは、本来自分の努力が中心となる受験勉強においてもプラス効果をもたらす。)


<ねらいを実現するクイズ問題の種類について>
 上記のようなねらいを実現するには、それぞれねらいを持ったいろいろなパターンの問題が必要です。クイズの問題そのものがしらけたものでは、ねらいは実現できません。
 私は、次の三種類のクイズを用意して、これらを組み合わせて効果を上げました

@

授業の内容・学習の展開に重大に関わるクイズ

 TV番組と違うわけですから、学習する内容をクイズを使ってうまく学習できるのが、クイズ学習の第一の目的です。議論になる問題、歴史的思考力を高める問題、次の疑問を生み出す問題等が、クイズの中心です。但しこればかりだと、正直、面白くありません。まじめさ一途では、初めから意欲が高くない生徒がいたりした場合は、途中で破綻します

A

複数の答えが出るようなオープンエンド型のクイズ

 そもそも、学会でも定説がないような問題とか、多様な価値観が反映される問題とか、意見を発表し、いくつかの答えに収束できるようなクイズ。設定の仕方によっては、討論にもなります。

B

事件・登場人物のエピソード等に関するクイズ

 これは学習内容に深刻に関係するものではありませんが、授業の理解を助け、イメージを作り上げ、学ぶことを楽しくさせるためのものです。答えに意外性があればあるほど生徒にとっては目から鱗です。

C

授業の題材に関して数字で答えるクイズ

 生徒の発想は多様です。その多様性ができるだけ発揮できるように、できるだけ意外性のある数字の問題を考えます。

 「授業論」「優れた授業手法」という観点からは、クイズの問題は、本来は、@やAのタイプのものばかりであるべきかもしれません。
 
 しかし、実際にやってみると、それだけではうまくいきません。
 地歴科のB科目なら、1年間に100時間以上の授業時間数があります。
 その毎回において、@・A型の問題を続けることは、時間的にも、クイズの問題の質の維持からも、無理があります。
 いくらいいものでも、生徒に「飽きられる」たら終わりです。

 そこで、B・C型のクイズ問題が必要となります。
 これは、クイズ学習をより効果的にするため、グループ別の対抗戦をやっている場合は、絶対必要な配慮となります。
 たくさんの生徒のいろいろな得意分野が授業中に「表現」されるような展開が重要です。