ヨーロッパの膨張1
<問題編> クイズは時代の古い順に並んでいます。答えは各問題のをクリックしてください。  
最終更新日 2006年11月07日 ※印はこの5週間に新規掲載 
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番 号 掲載月日   問                     題

901

06/11/07

改正

 19世紀末、帝政ロシアは、シベリア開発と東アジア進出を果たす手段としてシベリア鉄道を建設します。現在もウラジオストクからモスクワまでを結んで、世界で最も長く走る列車が運行されています。さて、ウラジオストク・モスクワ間の所要時間はどのくらいでしょうか。 

<解説編>

901 現在の列車ダイヤでは、シベリア鉄道はどのくらいの時間がかかりますか。   問題編へ     

 昨年に掲載したこのクイズでは、解答の説明に、大きなミスをしました。
 「シベリア鉄道は全線電化されており」と書きましたが、実は、まだ電化されていない区間があったのです。
 12月26日のニュースで、「苦節73年シベリア鉄道が完全電化」と報じられました。(
asahi.com)以下に引用します。

  • ロシア・シベリア鉄道の極東区間で続いていた電化工事がこのほど完了、ウラジオストクからモスクワまでの全約9300キロを初めてディーゼル機関車を使わずに走り切る「一番電車」が25日、モスクワに向け出発した。鉄道は前々世紀に建設が始まり、1916年に現行路線で開通。電化工事は29年からで、丸73年かかった。(中略)
    電化工事を終え、25日に供用されたのはルジノ駅をはさむ175キロの区間。これで93年に始まった
    ハバロフスクとウスリースク間の極東区間電化工事が完了。60年代に電化されていたウスリースク−ウラジオストク区間とつながった。

    電化工事はモスクワから順に東に進んできた。第2次大戦後の50年代から本格化。ソ連末期から数年の停滞をはさんで少しずつ距離を延ばした。
    電化の最大の目的はスピードアップだが、鉄道省によると1列車による輸送貨物の上限重量も6000トンとこれまでに比べ倍増する。

 つまり、これまではウラジオストクからハバロフスクの間の一部区間に未電化区間が175キロあったわけです。それがこのほど電化されて、1916年の現行路線開通以来はじめて、全線電化ということになったのです。 

 シベリア鉄道は、ロシアのシベリア開発と東アジア進出を果たす重要な手段として建設が開始されます。皇帝アレクサンドル3世が鉄道建設の勅書を発したのは、1891年の3月のことです。資金不足に悩むロシアをフランスが援助しました。
 鉄道は、とりあえず、清国内の満州を横切る近道ルートで建設されました。1916年には、アムール川沿いに沿海州を回る純粋にロシア国内の鉄道として開通します。おおむね現在のシベリア鉄道のルートです。
 シベリア鉄道は、日露戦争時の物資輸送、第二次世界大戦末期のソ連の対日宣戦のための大移動など、戦争では大きな力を発揮しました。
 
 当時の列車ダイヤは調べることはできません。
 現在運行されているウラジオストック→モスクワ間の直通列車「ロシア号」のダイヤは、ロシア旅行の専門代理店ユーラスツアーズのホームページによって確かめることができます。
 それによると、2002年12月の列車ダイヤでは、直通列車「ロシア号」は、ウラジオストクとモスクワ(ヤロスラブリ駅)間9258qを、149時間52分かけて走ります。全線乗車すれば車中で6日泊まることになります。
 
 2001年のダイヤでは、所要時間は152時間46分でしたから、1年の間に3時間ほど早くなったことになります。よくよく調べると、駅での停車時間合計時間が、65分間短縮され、走行時間が2時間ほど短縮されています。

【2006/11/07 追記】
2006年11月段階のダイヤでは、
1日目の13:11にウラジオストクを出発して、7日目の17:42にモスクワ(ヤロスラブリ駅)到着というダイヤになっています。所要時間は、148時間31分です。
2002年12月のダイヤから、さらに、
1時間21分短縮されました。


 今度の全線電化によるダイヤ変更について、ユーラスツアーズの担当者に電話で聞いてみました。
「全線電化ですか、いや、それによるダイヤの変更は今のところ聞いていません。変わる時は、突然変わりますから。」とのことでした。

 ちなみに今現在のロシア号のスピードですが、日本の新幹線的感覚では、あまり速くありません。
 走向キロ数を単純に時間で割ると、列車の時速は、平均61.8qとなります。しかし、途中、71もの駅に停車し、長いところでは、30分の停車時間があります。このため停車時間の合計だけでも、829分(13時間49分)もあります。この分を除くと、平均時速は、67qほどとなります。
 現在日本の列車で最も長距離を走るのは、大阪・札幌間の1495.8qを走る「トワイライトエクスプレス号」です。こちらは、2002年7月のダイヤでは、大阪を12:00に出発して、札幌に翌日の9:07に着きます。所用21時間07分、平均時速は、70.8qです。この時間は、停車時刻も含んでいますが、トワイライトエクスプレスの停車駅は僅か16駅、各駅の停車時間はロシアの鉄道のように長くはありません。したがって、正味の時間も、それほど大きくは違いません。
 つまり、シベリア鉄道のロシア号は、特別に遅いというわけではありません。駅での停車時間が長く、のんびりしているということでしょう。全線乗車するだけのヒマと忍耐は、今の私には無理ですね。 
  もちろん、今から100年前の開業時は、電化はされていませんから、輸送はもっと困難を極めたでしょう。

 日露戦争後、日本とロシアの関係は改善され、1911年には、日露は国際鉄道輸送に関する協定を結びます。この前年には、朝鮮が日本の植民地になっていましたから、朝鮮海峡を除けば、日本とヨーロッパが鉄路で結ばれたことになります。
 現物は入手できていませんが、1911年、日本の国鉄(JRの前身、国有鉄道)は、大阪→パリ、大阪→ベルリンという切符を発行します。一体何日かかって目的地に付けたのでしょうか。
 ※海野福寿『集英社版 日本の歴史Q 日清・日露戦争』(集英社1992年)
 但し、先ほどのニュースは、シベリア鉄道と南北朝鮮縦貫鉄道との連結に付いて次のように報じています。

  • 現在の鉄道関係者の関心事は朝鮮半島の南北縦断鉄道との連結計画。しかし、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核開発疑惑のあおりで停滞が心配されている。イタル・タス通信によると、ルジノ駅での記念式典には韓国の建設交通省、北朝鮮の鉄道省高官も出席。ロシアのファデーエフ鉄道相は「連結は政治ではなく経済の問題だ」と連結推進を訴えた。

 ひょっとすると、「釜山発モスクワ行き特急電車」なんてのが、やがて登場するかもしれません。

 最後に、現在のロシア号のダイヤを、地図入りで紹介します。ウラジオストク発のロシア号が何日目の何時にどこにいるかという説明図です。(時間は、駅の発車時刻。全てモスクワ時間。モスクワとウラジオストクとの時差は、7時間)
 ※詳しいダイヤは、ユーラスツアーズ(EURAS TOURS) 
    TOPページhttp://www.euras.co.jp/train/index.htm
    時刻表http://www.euras.co.jp/train/index.htm(電話 03-5562-3381)


  ※ユーロスツアーズにメールして教えてもらいました。3泊4日でシベリア鉄道にちょっとだけ乗るツアーです。

              新潟               ウラジオストク           ババロフスク
    @日目      15:40発(飛行機)  →   19:10着 ホテル泊
    A日目                        市内観光   18:40発  →  車中泊
    B日目                                             08:36 市内観光  
                                         車中泊    ←    19:10発  
    C日目                        市内観光   08:56着  
               16:15着        ←    14:50発   

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