四大文明
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最終更新日 2001年2月25日 ※印はこの5週間に新規掲載 
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番号 掲載月日   問                     題
201 01/01/08

 エジプトのピラミッドは、かつては、国王の墓として奴隷たちによって建設されたと言われてきました。しかし、近年では、建設に従事した労働者たちの村の遺跡の発掘などにより、違う目的のために建設されたという説が有力になってきました。その目的とは何でしょうか。

202 01/02/25

 パピルスに書かれた古代エジプトの『死者の書』には、死亡した人の魂を判定するシーンが描かれています。もし「不正な魂」と判定されれば、その魂に死後の世界は存在しません。ある怪物に食われてしまうからです。その怪物は、顔首・胴・下半身がそれぞれ三つの動物をつないだへんてこな変な形をしています。次から三つ選んで、組み合わせてみてください。
 かば はげたか ひょう ワニ さい かば 


<解説編>

201 エジプトのピラミッド建設の目的は何でしょうか。              | 四大文明の問題TOPへ | 

 エジプトのカイロの南西13キロほどの所に、ギザ地区があり、ここには教科書などの写真で有名なクフ王・メンカウラー王などの巨大なピラミッドが並んでいます。クフ王ピラミッドは、底辺の長さは230メートル、高さは147メートル。平均2.5トンの石材を約300万個を使っていると推定されます。
 このピラミッドは、現在では、内部に残された落書き等によって、今から4560年前のクフ王の治世の建造物であるということが判明しています。では、何のために誰によって作られたものでしょうか。
 
 その謎に最初に答えを出した人物は、記録上は、今から2500年ほど前の古代ギリシアの歴史家ヘロドトスです。彼は実際にエジプトを訪れ、その後に著した『歴史』の中で、巨大ピラミッドは10万人以上もの奴隷が20年間も働いて造った「クフという残忍非道なファラオ(国王)の墓である」と表現しました。これがその後の定説となり、ピラミッドは、エジプトの専制的権力や奴隷社会の象徴という理解が長く信じられました。(私もつい最近まではそう教えてきました)
 
 ところが、その説を覆す発見がなされました。そのきっかけとなったのが、1990年の「ワークマンズ・ビレッジ」遺跡の発掘です。クフ王のピラミッドの南にあるこの遺跡は、ピラミッド建設に従事した人々の村だったのです。1999年までに発掘された墓の数は600以上、人骨は1000体以上にのぼります。
 これらの人骨を調査した結果、中には、頭部に外科手術を受けた痕跡のある骨、骨折の治療を受けた骨など、医学的な処置の痕跡が残る骨が多くあることがわかりました。これは何を意味するでしょう。これまでの通説通り、建設従事者が奴隷であれば、骨を折ったりしたものは「消耗品」として捨てられたはずでないでしょうか。さらに、女性や子どもの骨が見つかり、労働者が妻や子どもと家族生活を営んでいたこともわかりました。
 この発見によりピラミッドを建設した人々が奴隷ではないことが明白となりました。では彼らは何故ピラミッド建設に従事したのでしょうか。
 
 イギリスの学者クルト・メンデルスゾーンは、すでに1974年に『ピラミッドの謎』を発表していました。彼は、ピラミッド建設の目的は、ナイル川の氾濫によって農耕ができない期間に行う「
公共事業」で、完成後の用途のためではなく、作ること自体に目的があるという「公共事業説」を提唱したのです。しかし、発表当初は、これは全くの仮説に過ぎませんでした。
 ところが、ワークマンズ・ビレッジの発見に続いて、1994年にはその近くの王の墓で「人々にビールとパンを支払い、彼らを喜ばすことを保証する」と書かれ多碑文が見つかりました。また、他の場所では、ピラミッド建設に携わった労働者たちが、労働の対価として衣食住を保証する国王を賛美する意味の落書きも見つかりました。また、すでに以前から、一人の国王がいくつものピラミッドを造っていたことも指摘されていました。
 
 これらの結果、現在では、メンデルスゾーンの唱えた「公共事業説」、すなわち、ピラミッド建設は「ナイル川氾濫期の失業者を救済するための公共事業」という考えが、有力なものとなっています。
 ※NHKスペシャル「四大文明」プロジェクト『四大文明 [エジプト]』(2000年日本放送出版協会) 
  


202 エジプトの『死者の書』に登場する奇怪な怪物は何か。            | 四大文明の問題TOPへ | 

 古代エジプトでは、魂は死後の永遠に不滅であると信じられていました。魂は永遠に生き続け、定期的に墓に戻ってきて備えの食物を取ります。そのために、遺体はできるだけ生前と同じ形にとどめねばならず、ミイラが作られました。 
 しかし、誰もが永遠であることを願いましたが、まったく無条件ですべての魂が永遠に生きることができるというわけではありませんでした。
 
 『死者の書』とは、古代エジプトで死者を葬る際に用いた文書で、死者に復活と「永遠に生きること」を得させ、かつ、来世で至福の生活を与えるための様々な呪文と祈祷の文章からなっていました。簡単にいえば、死後に迎える様々な障害や神の審判を乗り越えて、無事永遠の生命を得るためのガイドブックだったのです。
 紀元前16世紀からの新王国の時代にパピルスに書かれ、墓に副葬されました。『死者の書』という名前は、1842年にドイツのエジプト学者レプシウスが『エジプト人の死者の書』と名付けて出版したのが始まりです。
 
 大英博物館所蔵の「アニのパピルス」(書記官アニのために副葬された)はその代表的な物で、1888年にナイル川中流のテーベで発見されました。その中で特に有名なのは、第125章の死者の審判の場面です。
 冥界の神オシリスの裁きの場には、魂が正しいか正しくないかを判断する天秤ばかりが置かれています。そのはかりの片方の皿には死者の心臓(死者の良心を表す)が、もう片方の皿には法と真実の象徴である羽毛が置かれます。
 
 右の絵をご覧ください。白い服を着ているのは、その人物の誕生と教育を司った女神、つまり魂の応援団です。右手の黒い犬の顔をしているのは係員で、はかりの針をチェックします。そして、手前にいる四つ足のものが、問題の怪物です。
 本物のパピルスには、裁判官である12の神など他のキャラクターも描かれています。
 
 さて、天秤皿に心臓と羽毛が置かれました。うまく釣り合えば、「ユスト」であり、魂が正義で汚れのないことが神オシリスに報告され、永遠の命を得ます。もし釣り合わなければ、その場で怪獣の前に投げ出され、食われてしまいます。その怪獣は、
首から上はワニ、前足と胴体はひょう、後ろ足とお尻はカバという奇怪な生き物です。(左上図)
 ちなみに、釣り合ったときのことば「ユスト」は、英語ではjustとなり、また、正義を意味する言葉、justiceの語源ともなります。
 ※この写真は大英博物館の子ども用の土産物「Scaled of Justice」です。
  大英博物館のミュージアムショップのサイトから購入しました。価格は8.99ポンドです。
  購入方法は現物教材のページ参照。