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グーグルで探す授業ネタになりそうな世界の興味ある光景01
 グーグルで発見した世界各地の面白そうな光景をあれこれについて紹介します。
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 アメリカの石炭採掘場の列車積込と石炭の鉄道輸送1
 13/02/12掲載 13/03/06修正

 う~ん、また新しいシリーズを始めてしまいました。本当に目から鱗の話になるかどうか、ちょっと不安がありますが、挑戦してみます。最初は、石炭とアメリカの鉄道輸送です。
 
 まずは全体のメニューです。

 まずは石炭に関する予備知識です 

   このページの主役登場の前に  
   アメリカの炭田での石炭の積み込み  
   アメリカ第一の石炭産出地域 ワイオミング州  Powder River Basin 
   ホッパー車への積み込みと輸送ー驚くべき輸送量ー 
   アメリカの鉄道の発達史1 アメリカの鉄道の意義 
   アメリカの鉄道の発達史2 大陸横断鉄道とその意義ーgolden・spike国立史跡 
   アメリカの鉄道の発達史3 アメリカの鉄道の現状 
   アメリカの貨物輸送と石炭輸送 
 10  BNSF鉄道とUP鉄道による石炭輸送 
 11  BNSF鉄道とUP鉄道によるオリン支線の共同運行 
 12  高校の地理の教科書とワイオミングの石炭 
 13  付録 アメリカの鉄道の撮影名所 三カ所

 1 まずは石炭に関する予備知識です 石炭輸送のメニューへ戻る

 「今時、何で石炭?」
 このページを書くきっかけは、2012年8月24日の『読売新聞』の記事、「超巨大 石炭の土地」を読んだことに始まります。これを読んでいろいろ調べているうちに、日本の石炭事情やアメリカ石炭の採掘や鉄道に関して、いろいろ面白いことが発見できました。このページでは、そのいくつかを紹介したいと思います。
  ※参考資料1 『読売新聞』2012年8月24日「超巨大 石炭の土地」

 石炭は日本ではほとんど採掘されておらず、また、日本の日常生活ではほとんど見ることはありません。その石炭をとりあげることは、そもそも意外性があって目から鱗になるかもしれません。

 
世界の石炭生産量と輸出量は、次の表のとおりです。 

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 ※参考資料3 上記の数値は次のHPから確認できます。 アメリカ合衆国エネルギー・情報局 http://www.eia.gov/
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 アメリカの2011年の石炭の産出量は、9億8290万トンでした。消費量は、9億2560万トンであり、わずかですが、輸出超過国となっています。(同年の輸出量は、9690万トン)

 アメリカは、オバマ政権の「グリーン・ニューディール」政策により、省エネルギーに取り組むと同時に原子力化やクリーンエネルギー化を推進しているため、石炭の需要は減少しつつあります。
 しかし、それでも、2010年の全発電量実績における石炭の割合は、約45%あります。東日本大震災より以前の時点では、日本の場合は石炭の割合は約15%でしたから、アメリカ国内における石炭消費量は日本と比べるとずいぶん多いことがわかります。

 アメリカ国内の石炭産出の主な地域は、次の3地域です。
  ・ウエスト・バージニア州、ペンシルバニア州を中心とするアパラチア山脈周辺の東部地域
  ・イリノイ州・インディアナ州・ケンタッキー州西部を中心とする中部地域

  ・ワイオミング州・モンタナ州を中心とする西部地域
 
 東部が高品質炭を産出するのに対して、一般炭の産出の中心は、
ワイオミング州東部からモンタナ州南部へかけての、パウダー・リバー盆地です。(Powder River BasinPRBと略され、パウダー・リバー炭田とも訳されます)
 
PRBは全米の石炭の4割を産出し、2012年から13年にかけてはこの比率はさらに増加すると推定されています。

 下のグラフ2をご覧ください。
 日本ではあまり有名ではありませんが、
州別石炭産出ランキングの全米第一位は、2011年実績で4億3867万トンの産出したワイオミング州です。全米の生産量約10億トンの40%以上は、このワイオミング州から産出されています。
 現在13の炭鉱が採掘をしています。すべて露天掘りです。
  ※参考資料4 『ワールド・コール・レポートVol.4 2012』P9・33


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 ちなみに、現在の日本の石炭の生産量は、年間130万トン程度です。消費量は、約1億8700万トンですから、自給率はわずかに0.7%程度となります。先進国中最低です。まあ、石油は0.4%ですから、それよりはましです。
 という説明をすると、日本の石炭生産量が少ないことより、むしろ反対に、「年間130万トンの石炭って、今の日本のどこで掘られているの?」という疑問の方へ関心が向くかと思います。
 
 
北海道では、石炭採掘でまだ頑張っている企業があるのです。現在も、北海道の8カ所で石炭が掘られています。
 そのうち、地中で掘っているのは、釧路市にある
釧路コールマインが運営する釧路炭鉱ただ一つだけです。採炭量は最も多く、年間55万トンの石炭を掘り出しています。
  ※ここへの訪問記があります。→「北方領土・北海道訪問記11 石炭が採れたところ北海道

 ほかの7カ所は、露天掘りです。
 
石狩炭田空知新炭鉱北菱(ほくりょう)美唄炭鉱三美炭鉱砂子炭鉱新旭炭鉱東芦別炭鉱留萌炭田吉住炭鉱です。
  ※参考資料5 「北の炭坑、輝き取り戻す 写真は語る」『日本経済新聞』(2012年10月9日)
  ※参考文献6 「世界と日本の石炭事情」(2009年 資源エネルギー庁資源・燃料部石炭課資料)P60
 
 石狩炭田にある新旭炭鉱については、別ページに
付録1 芦別炭鉱新旭炭坑高根沢露天坑の航空写真があります。→こちらです
 このページの下の方で、アメリカの炭鉱の露天掘りの様子が出てきますので比較してください。
 
 これらの炭鉱の石炭は、ダンプトラックで、近くにある
北海道電力砂川発電所(25万キロワット)、奈井江発電所(35万キロワット)等へ運ばれます。これらの発電所は、海岸の石炭ではなく、道内の国産の石炭を燃料とする石炭火力発電所です。北海道にはそういう発電所もあるのです。

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 2 このページの主役登場の前に 石炭輸送のメニューへ戻る

 日本の場合、石炭の用途のほとんどは、火力発電所の燃料炭や製鉄所のコークスの原料です。上記の北海道電力の発電所のような内陸の発電所はまれで、多くは石炭運搬船で輸入してきたものを専用埠頭で陸揚げして貯蔵するという形です。鉄道が輸送にかかわることはほとんどないと思われます。

 ということは、このページの下で確認するアメリカにおける鉄道を使った石炭輸送を、日本のそれとは比較できないということになります。
 そこで強引に持ってきたのが、石灰石の積載・運搬の写真です。


 写真01-01・02 西濃鉄道乙女坂駅での石灰石の積み込みⅠ (撮影日 左:08/08/02 右:08/07/19)

 写真01-03・04 西濃鉄道乙女坂駅での石灰石の積み込みⅡ (撮影日 左:08/08/02 右:08/07/19)

 日本では貨物列車に石灰石を積み込む場合、この写真の、西濃鉄道乙女坂駅のような手順となります。
01 空の貨車を牽引してきた機関車は、積み込み線に貨車を停止させ、切り離されます。
 02 機関車だけがスィッチバックして側線に入り、貨車の横を通って、帰還する方向へ向かいます。 
 03 反対側でまたスィッチバックして側線から積み込み線に入り、来た時の最後部の貨車に機関車が連結されます。 
 04 機関車が一両ずつ小刻みに貨車を引っ張り、石灰石を積み込みます。 


 アメリカの積み込みの手順は、日本とは違います。そんなにせこくないのです。

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 3 アメリカの炭田での石炭の積み込み  石炭輸送のメニューへ戻る

 ワイオミング州の炭田からは、単純計算で毎日100万トン以上の規模の石炭が国内各地や海外へ搬出されており、そのほとんどが列車で運ばれています。
 その積み出しの様子は、次の衛星写真を見ればおおよそわかります。


 上の地図は、Google から正式にAPIキーを取得して挿入した、アメリカ合衆国ワイオミング州東部にある Powder River Basinの一部の地図です。

 

 上の地図の見方を説明します。いきなりズームに切り替えたり、写真画面に切り替えると訳がわからなくなりますから、下の説明をよくごらんください。
 まず、地図のねずみ色の線は、アメリカ合衆国
BNSF鉄道ユニオン・パシフィック鉄道UP)(両鉄道とも鉄道貨物輸送専用会社)の支線と石炭鉱山の専用引き込み線を示しています。曲がりくねっていますが、上下(南北)に走っているのがワイオミング州Donkey CleekShawnee とを南北に結ぶオリン支線の一部です(北部の一部分。この支線の説明は、ページ4にあります。→「BNSF鉄道とUP鉄道によるオリン支線の共同運行」)
 三つのループは、支線から分岐した引き込み線を示しています。それぞれ、一つの石炭鉱山の引き込み線となっています。上(北)から、
CaballoBelle AyrCordero Rojoの各炭鉱の石炭を貨車に積載する施設です。

 このうち、その様子が最もよくわかるのは、一番下の、Cordero Rojo炭鉱のそれです。
 クリックして、一番下のループを地図の中央に移動させ、地図のまま2回ズームして、航空写真に切り替えて、さらにズームしてみてください。
 これから石炭積載業務に入ろうとしている2編成の貨物列車を見ることができるはずです。小さな虫がつながっているようにか、または縞模様のヘビのようにも見えるかもしれません。これが、石炭を積む貨車です。
 暇のある方は、貨車が何両つながっているかを数えてみて下さい。 
 

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 この写真を見て驚くことがいくつかあります。

 石炭積載場では、日本のように機関車をスィッチバックさせて、反対方向に付け替えるなどというせこいことはしません。ループになった線路の上を進んでいくだけです。
 広大な土地があればこそできる技です。

 

 周りは露天掘り炭鉱です。このCordero Rojo炭鉱は、2009年の数値で、年間産炭量は3,940万トンあり、全米2位の炭鉱です。(1位は、この同じオリオン支線の南端にあるNorth Antelope Rochelle炭鉱です。)

 

 貨車の数を数えられましたか、長い方はゆうに130両を超える数です。これを前後合計4台の機関車で引っ張っていくようです。いったいどれだけの石炭をどこまで運ぶのでしょうか?

 この面白い写真を見ると、もっといろいろ調べてみたくなります。
 とりあえず、この石炭輸送列車の広報用の映像(BNSF鉄道ユニオン・パシフィック鉄道
(UP))が、Youtubeにありましたのでご覧ください。
  ※ 「
Coal Trains of the Powder River Basin 」 
     http://www.youtube.com/watch?feature=endscreen&v=2xyIsimIspI&NR=1


 ここまでくると、このアメリカの石炭のことやアメリカの鉄道輸送について、さらに調べたくなります。
 続きは、次週にアップロードします。しばらくお待ちください。


 【アメリカの石炭と鉄道輸送 参考資料一覧】
  このページ1の記述には、主に次の書物・論文・ウェブサイトを参考にしました。
  『読売新聞』2012年8月24日「超巨大 石炭の土地」 

World Coal Assosiation編『Coal Facts2012』(2012年)

  アメリカ合衆国エネルギー・情報局  http://www.eia.gov/ 

『ワールド・コール・レポートVol.4 2012』(財団法人石炭エネルギーセンター アジア太平洋コールフローセンター 技術・情報委員会編 2012年) http://www.brain-c-jcoal.info/JCOAL/temp/wcr4all.pdf

「北の炭坑、輝き取り戻す 写真は語る」『日本経済新聞』(2012年10月9日)
  http://www.nikkei.com/article/DGXNZO46991340W2A001C1M11700/ 

「世界と日本の石炭事情」(2009年 資源エネルギー庁資源・燃料部石炭課資料)
  
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g90206d07j.pdf


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