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各地の鉄道あれこれ00
 全国各地の鉄道の話題あれこれについて紹介します。

 新幹線のレールについて考える レールは曲がる?曲がらない?
 なぜこんなことを考えたのか                      | このページの先頭へ |

 鉄道のレールは、曲がるか、曲がらないか?
 
 この質問の答えは、「曲がると言えば曲がる、曲がらないと言えば曲がらない。」です。
 これでは答えになっていませんね。
 もう少し面白い考察に仕立てます。おつきあいください。

 まずは、下の写真です。
 これは、2003年10月29日(水)の午前6時50分の新幹線岐阜羽島駅の0番ホームの写真です。通常の新幹線の3号車停車位置から(大阪より)から、16号車の停車位置(東京方面)の方を見たものです。

 写真の中央は、普通のホームにある黄色い線です。
左側に黄色い柵のようなものがはるか向こうまで続いていますが、これは何か分かりますか? 

 
   

 この黄色いものは、工事用の柵なんかではありません。

 
これは、実は新幹線のレールを運ぶ、特別な車両(レール運搬・工作車)です。
 レールを載せる部分が12両、工作車、作業員の乗る車両、全体を引っ張っていくディーゼル機関車で1セットになっています。 下の左の写真は、先頭のディーゼル機関車。右は、機関車の右サイドのアップです。浜松レールセンターと書かれています。

 さて、話をもとに戻して、私がなぜレールのことを、この「目から鱗の題材」に選んだかを説明します。

 話は、10年以上前にさかのぼります。今大学生の長男がまだ小学校に入学したばかりのころ、NHKの子ども向け番組、「お母さんと一緒」を見ていて、あるクイズが出題されたことがありました。

 「新幹線は、普通のレールより長いレールを使っています。工場から、レールを交換する場所まで、200メートルもある長いレールをどうやって運ぶのでしょうか?」という質問です。
 選択肢が3つありました。

 1 200メートルのレールをヘリコプターでつるして運ぶ。
 2 200メートルのレールをまるごと運搬車両に積んで運ぶ。
 3 25メートルの普通のレールを運搬車両で運んで、交換現場で溶接してつなげる。

 
 みなさんは、正解はどれだと思いますか?

 すでに、このページで、レール運搬用の車両の話をしているわけですから、選択肢1はありえません。200メートルのレールをつるして運ぶヘリコプターなんて、すげえー。(*_*)
 さて、このとき私は、レールについて常識的な知識しか持っていませんでしたから、悩んで選択肢3を選びました。
 妻は、「そんなもの2にきまっとるがね。なんで2ではいかんの。」と、あっさり、選択肢2を選びました。

 私は、妻に、自分が悩んだ理由を力説しました。
「あのなー、200メートルのレールを列車で運ぶということは、カーブやポイントのところで、積んであるレールも曲がるのだぞ。本当にそうなると思う?」

 つまり、以下の図のように、200メートルもあるレールを運ぶと、運搬途中で、積まれているレールは曲がらなければなりません。

 これが、現実に可能かどうか?
 
 皆さんどう思います?
 これが、今回のテーマ、レールは曲がるか、曲がらないか? なのです。 


  レール運搬と交換の詳細                         | このページの先頭へ |

 本題に入る前に、これから書くことの情報源について説明します。
 実は、いろいろ調べるのに苦労しました。

 このレール運搬車両については、インターネットを使ってかなりの時間調べましたが、数ある新幹線マニアのサイトにも、詳しい説明は掲載されていませんでした。
 
 新幹線岐阜羽島駅に聞きましたが、「いや、駅は車両が止まるところで、特に工事車両などは、管轄外ですから、わかりません。」と素っ気ない返事。
 それなら浜松レールセンター(浜松工場)に直接聞こうと思い、104電話番号案内に問い合わせしたら、「そういう名前では登録はありません」。

 JR東海の公式サイトに「JR東海インフォメーションセンター」という電話番号を見つけて電話すると、「この電話はお客様に営業に関するご案内をするためのものです。レール運搬のような営業に直接関係のないものに関する情報はありません。」

 そりゃそうでしょう、でも、ここで引き下がるわけにはいきません。
「授業で子どもたちに教える素材を集めています。せめて、どこに聞いたらいいか教えてください。」
 無理して教えてもらった所は、JR東海広報部。なにやら格式張ったところで大丈夫かなと不安を感じつつ電話しました。
 ところが、あにはからんや。電話口の担当のお兄さんは、
「レール交換ですか、ちょっと今資料を探します。手元にあれば、お答えできます。えーと、あ、ありました。ありました。どうぞ何でもご質問ください。」
大変親切なお兄さんで、授業の素材のためにと言ったら、時間も気にせずに、いろいろ詳しいことを教えて貰うことができました。
 JR東海に感謝です。


 さて、「お母さんと一緒」のクイズの正解です。
 
 正解は、選択肢2の「200メートルのレールをまるごと運搬車両に積んで運ぶ」です。

 下の写真をご覧ください。左は、上の写真の運搬車両を最後尾から見たものです。長さは、通常の新幹線の12両分ほど、つまり、25m×12=300メートルほどあります。そして、右の写真、この運搬車両は、なんと長さ200メートルのレールをまるごと全部で16本積んで運びます。

 写真には、そのうち、7本が映っています。中央の通路のような部分の反対側に、残りがあると思われます。
 
 レールの基本的な長さは25メートルですが、それをレール交換場所ですべて溶接していては、手間がかかってしまいます。
 そこで、あらかじめ、25メートルレールを8本つないで200メートルレールを作っておいて、それを交換場所まで運び、そこで、また溶接でつなげて、もっと長いレールにするのです。

 では、積まれた200メートルの長いレールは、上図のようなポイントの所では、どうなるでしょう。

「え、曲がりますよ。」とJR広報担当。
「ポイントや、カーブでは、ほんの少しですが、レールは線路と車両の彎曲にしたがって、自然に曲がります。
 レール積載車両は、端っこがしっかりと固定してあります。途中の部分は、自然に変形するようになっているのです。」 

 上の左の写真のは200メートルのレールの端っこの部分です。しっかり固定されています。
 上の右の写真は、2本のレールが作業車のもっと先まで伸びていて、レールを軌道に降ろす部分につながります。

「曲がるといえば、レールを軌道上に降ろすときはどうするのか知っていますか?」(JR広報部担当)
「いえ、横から1本分全部をごろんと転がすのですか。」
「そんな乱暴なことはしません。そんなことをしたら、ちゃんとした定位置に戻すのが大変です。」
「では、どうやってやるんですか?」
「レールの片方の端を線路に固定し、車両の方を動かしていくと、200メートルのレールがずるずると軌道上に降りてくるのです。」
「え、ということは、そこでは、レールは、横ではなく、縦方向にまがるのですね。」
「そのとおりです。」

 私の言っている意味は、下図のことです。


 そう簡単には曲がりそうもない、鉄のレールですが、実際は、やはり曲がるのです。
 右の写真は、200メートルのレールの一番端っこです。

 岐阜羽島駅の車両の写真だけでは、作業の過程までは、わかりません。

 そこで、いい写真はないかと、あちこちウェブサイトを探したら、ちゃんとありました。

 レールの敷設の様子は、東北新幹線八戸駅開業の際の工事の様子を伝える、青森県八戸市企画部地域振興課政策推進室(旧名称新幹線交通政策室)のサイトです。
 ※こちらは、トップページ
 ※こちらは、作業の様子を伝えるページ
   その1からその2・3へと読み進んでください。
 
 また、この200メートルのレールは、現場でさらにガス溶接によって長くつながれ、1キロか2キロ、場合によっては、何キロもある長いレールになります。

 列車は、レールのつなぎ目があるとガタゴト揺れます。
 つなぎ目がない方が理想的ですが、次の理由から、レールのロング化には限界があります。

  1. ポイントのある場合は、レールは途中でとぎれざるを得ない。
  2. レールに信号用の電流を流しているため、レールを区切って絶縁しなければならない。
 現在、つなぎ目のない1本のレールとして日本国内最長は、新幹線ではなく、青函トンネルの中に敷かれているものだそうです。
 その長さは、なんと、52.57キロもあります。 

 何が「目から鱗か」                              | このページの先頭へ |   

 JR広報部の担当さんと話していて、何が誤解を生んでいるか、
この曲がったレールが鱗の原因?

何が目から鱗か、分かりました。

「レールというと、当然鉄製ですから、普通はそう簡単に曲がるものではない思えます。もちろん、簡単に曲がってもらっては、列車が脱線してしまいますから、曲がらないと言えば曲がらないものです。
 しかし、鉄とはいえ、曲がらないものではないです。
 早い話、線路のカーブ部分は、まっすぐな線路を曲げて作るのですから。」

「なるほど、今のお話って、当たり前ですが、一般の人には、錯覚があります。
 鉄道模型も、子どもが遊ぶトミーのプラレールも、直線レールと曲線レールってあるじゃないですか。
 だから、なんとなく、レールは曲げるのではなく、そもそも曲がったレールがあると勘違いしちゃいますね。
 鉄道の駅とかに、レールが置いてありますが、みんな25メートルの直線レールで、曲がったレールなんてないですね。」

「そのとおりです。レールは曲げるもので、はじめから曲がったレールなどはありません。」
 みなさんは、この話で、目から鱗が落ちますか?

 目から鱗が落ちるには、目の中に鱗(=錯覚、思い違い)があることが前提です。

 我が妻は、鉄道にも、レールにも何の興味もありませんから、鱗は落ちませんでした。(--;)


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