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 夏の旅行は 出雲・石見の島根県シリーズ  10/08/08記述

 2010年7月30日から8月1日にかけて、夏の旅行に行きました。またまた妻と二人の旅行です。行き先は、出雲・石見です。
 今回の行き先は、もうすでに、6月の下旬には決まっていました。経緯は、日記2010年6月20日の日記を見ていただければわかります。(→)

「今年の夏の旅行は、かねての打ち合わせ通り、島根県に行こう。」」

石見銀山出雲の一畑電鉄。一昨年の佐渡金山に続く、金山銀山シリーズ。」」

「そんなに無理矢理シリーズにしなくてもいい。その代わり、出雲大社にも参拝しよう。日本海のおいしい魚も食べよう。温泉にも泊まろう。それから・・・。」」

「何?」

「以前に行ったことがある、余部鉄橋に立ち寄りたい。」

余部って、4・5年前に、城崎に行った時に立ち寄ったところ?」」

「そうそう、あの鉄橋がこの7月でお役御免となり、新しいコンクリートの橋が使われることになる。それを見に行きたい。餘部は兵庫県だから、立ち寄るとちょっと時間がかかると思うが、我慢しておくれ。」 


 ルート説明と経費      | 全行程目次・地図へ || 先頭へ |

 このところの夫婦旅行は、金曜日の夜に出発し、土日をフルに利用して、日曜日の夜には帰ってくるというパターンでした。しかし、今回は、出雲・石見旅行といいながら、初日に兵庫県の日本海側の余部に立ち寄るため、いつもの計画では、時間的に大変苦しいことが判明しました。
 そこで、金曜日に夏休みのうちの1日を取って、昼から出発するという新しいパターンを採用しました。
 以下が、その行程と日程です。




  <訪問地と時間、走行距離>

日付

時間 行 程 距離 

30日

13:00

岐阜出発   0km
 

 

 
17:50 兵庫県餘部着   351km
18:35 兵庫県餘部発   
     
19:35 鳥取着(食事)   397km
20:05 鳥取発  
     

22:46

出雲市着ホテル泊 556km

31日

05:55

ホテル発  
 

 

  

06:10

JR出雲市駅着 563km

06:46

山陰線出雲市駅発 駅駐車場
 

  

07:26

山陰線松江駅着  
 

↓(松江市内散策)

  

08:33

一畑電鉄松江宍道湖温泉駅発

     

09:11

雲州平田駅着

  
10:00 平田駅ロケ地ガイド   
11:15 雲州平田駅発  
 

  

日付

時間 行 程 距離 

31日

11:35 出雲大社前駅着   
 

出雲大社参拝
・県立出雲古代博物館見学
  

15:06 出雲大社前駅発   
     
15:30 出雲市駅着   
16:20 出雲市駅駐車場発   563km
     

17:35

石見温泉津(ゆのつ)温泉泊 624km

1日

08:15

石見温泉津温泉発

624km

08:37

石見銀山世界遺産センター着 642km
09:15

大久保間歩ツアー参加 

  

12:15

大森銀山町散策  

14:00

石見銀山世界遺産センター発 642km
 

 

  

17:25

三田-吹田間渋滞   
 

  

22:25

岐阜着 1174km

全走行距離は1174kmとなりました。実質運転時間は、約18時間30分です。(休憩時間を含む)


 自動車旅行のポイントは、安い高速道路を使用することですが、今回は、道を間違えたり、途中で三男Dのアパートに立ち寄ったりして、理想的な費用設計とはほど遠い金額となっています。また、途中、山陰高速道路のように試験無料区間もあって、次に同じ所を通ったらいくらになるかよくわかりません。
 参考までに、経費です。 


項 目

説 明

単価等

合計金額

高速道路料金    

関ヶ原−名神吹田

2,750

6,800

中国吹田−若狭道春日インター

1,250

北近畿豊岡道路遠阪トンネル

300

中国自動車道路三次−名神瀬田西  2,500
新名神草津田上−関ヶ原   1,000

ガソリン代

全走行距離1174km@ 燃費16.5km/リットルA
ガソリン単価 125円/リットルB @÷A×B 

8,894

鉄道料金等  

一畑電鉄 1日チケット

1,500

3,000

雲州平田駅ロケ地観光ツアー   1,000  2,000
島根県立古代出雲歴史博物館入場料   600  1,200
山陰本線 出雲-松江片道   570  1,140
石見交通バス 世界遺産センター−代官所往復   460  920
旧石見大森代官所跡銀山資料館入館料   500  1,000

石見銀山大久保間歩一般公開ツアー 

3,800

7,600

宿泊   

ホテル日本海(素泊まり)

9,450

温泉津温泉輝雲荘     28,405
温泉津温泉元湯温泉入浴料(外湯)   300  600

駐車場料金

出雲市営駐車場

1,000

総費用

(交通費・宿泊費の総額) 

 

72,009


 今回の二人分の総費用は、72,009円となりました。
 今年春の高知・愛媛旅行の
57,031円、連休中の高岡・富山・宇奈月旅行の27,295円、昨年の長野・群馬・新潟・富山旅行の45,237円 に対して、今回は、大奮発の旅行となりました。
 温泉宿泊代、二つのツアー代がちょっと高く付きました。


 まずは余部鉄橋です | 全行程目次・地図へ || 先頭へ |

 まず最初の行き先は、兵庫県の日本海側、美方郡香美町香住区余部にある余部鉄橋です。
 今、再び、
山陰本線余部鉄橋が話題となっています。

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 若狭道を春日まで走り、朝来・養父を経て、豊岡に入り、国道178号線沿いに余部に至るルートです。


 写真01−01       ありし日の余部鉄橋              (撮影日 06/08/12)

 1912(明治45)年3月1日に完成して以来、98年にわたって活躍してきましたが、2010年7月から撤去が始まりました。


 その理由は、余部鉄橋については、2007(平成19)年3月から架け替え工事が始まり、順調に続けられてきましたが、このほど最終段階を迎え、まもなく新しいコンクリート製の橋が完成という状況にあるからです。

旧鉄橋については、2006年に訪問しており、旅行記:「若狭・丹後・但馬旅行5 城崎・余部鉄橋」→で説明しています。訪問直後に建設が本格化しました。

 旧鉄橋の利用は、2010(平成22)年7月16日(金)で終了し、これを書いている8月8日現在は、旧線路と新線路の取り替え工事中のため、香住駅と浜坂駅の間が列車運休となっており、代行バスが運行されています。

 この措置は、8月11日まで続き、
8月12日からは、鉄橋だった旧橋に代わる新しいコンクリート橋の上の新線を、列車が走り始めることになります。

標記について
鉄橋のある町は、
兵庫県美方郡香美町香住区余部です。町の名前も橋梁の名前も、「余部」という漢字を使います。ただし、山陰本線の駅名は、「餘部駅」と難しい漢字を使います。

 写真01−02 代行バス通知 (撮影日 10/07/30)

 鉄橋以外の部分は、旧来の線路やトンネルをそのまま利用する形で掛け替えが進められていますから、新橋もずいぶん高い所を通る橋となっています、


 写真01−03 新コンクリート橋を南側から撮影 残念ながら逆光です (撮影日 10/07/30)

 香美町のサイトには、新しい橋は次のように紹介されています。
  ※香美町観光情報 余部鉄橋 http://www.town.mikata-kami.lg.jp/www/contents/1146037271953/index.html

・全体事業費  約30億円

 

・橋梁形式  エクストラドーズドPC橋(コンクリート橋) 

 

・橋梁規模  橋長310m、 幅員7.5m、 高さ41.5m、橋脚4基、橋台2基 

 

・新橋の位置(線路中心) 

 

現在の余部鉄橋の線路中心から約7m南側(山側)へ建設します。駅のホームは、現在の山側から海側に移動することになります。

 旧橋は、全部で11もの橋脚がありましたが、新橋は、僅か4本です。上の写真の新橋コンクリート橋脚は、右から1番目・2番目(東側、鎧駅側から数えて)のそれです。道路の上に立っているように見える旧橋の3本の鉄橋脚は、同じく、東から3番目・4番目・5番目のそれです。

 左手前の3階建ての建物は、
香美町立余部小学校の校舎です。
 同校の校歌の2番には、「
緑の谷に そびえたつ 鉄をくみたる 橋の塔」とあり、今も歌い継がれているそうです。新コンクリート橋になるとどうなるのでしょうか。後ほど聞いてみたいと思います。
  ※余部小学校のサイトです。→http://amarube-es.town.mikata-kami.lg.jp/


 新橋の建設の方法がすごいです | 全行程目次・地図へ || 先頭へ |

 新橋の建設は、技術的には、高いところの作業、大きなクレーン車が必要という困難な点はあるでしょうが、明治時代末期の工事に比べれば、それほど難しいものではないと想像されます。
 しかし、建設工事・土木工事というのは、どんな場合でも、一般人には思いも付かない工夫や仰天の手法が使われるものです。それが、技術者の意気込みというものでしょう。
 今回の新余部コンクリート橋の建設にも、「
橋桁移動旋回工法」というのが使われています。
 
 今回の新余部橋の完成については、いろいろなサイトにいろいろな写真が掲載されています。また、鉄道マニアの方は、鉄橋を通過する列車の写真をたくさん掲載されるでしょう。
 「撮り鉄」でも、「乗り鉄」でもない、私、「語り鉄」としましては、この新しい工法について、現地で見たり聞いたり、またいろいろ調べたことをお話ししようと思います。


 まず、旧橋・新橋の基本的な位置関係と建設上の課題です。下の地図03と地図04をご覧ください。



写真は、国土交通省の「国土情報ウェブマッピングシステム」の「カラー空中写真閲覧」の航空写真を借用しました。下の地図04も同じです。サイトはこちらです。→http://w3land.mlit.go.jp/WebGIS/index.html


 余部鉄橋は見上げるような高いところにある鉄橋です。問題点は、それだけではありません。鉄橋は、長谷川という小河川が造る河口部の谷をまたいでいます。東も西も山になっています。西の駅側には駅を作るだけの平坦地がありますが、東側は、鉄橋からいきなりトンネルに入ります。


 写真01−04 旧餘部駅ホームと旧線路と桂。 (撮影日 06/08/12)

 餘部駅の方から眺めると駅の前の直線線路が、そのまままっすぐ鉄橋につながり、そのまままっすぐ、鉄橋東側のトンネルに入っていることが分かります。




 つまり、橋の東側は、すぐにトンネルにつながっているため、新しいトンネルをセットで掘ることでもしない限り、上図の紫の部分の橋・線路(S字型橋桁)の建設に大変手間取ってしまうことになります。
 通常の発想なら、
 1 列車をそのまま運行させて、赤い部分を建設
 2 列車を
長期間不通にして、まず、紫と重なる旧鉄橋の撤去、続いて、紫の部分の建設
となります。
 ところが、事実は違っていました。
 山陰本線の不通期間は、
7月17日から8月11日までの、僅か26日間です。この期間で、上記の1・2を行うのは不可能です。
 しかも、下の写真を見てください。



 写真01−05 新橋のトンネル側部分                   (撮影日 10/07/30)

 この写真は、不通になった7月17日から、僅か14日目の7月30日の写真です。
 旧鉄橋の重複部分の上部がすでに解体撤去されていることはまだしも、驚くべきことに、もうすでに、
S字型にカーブした新しいコンクリート橋桁S字型橋桁)ができあがって、トンネル出口と新橋がちゃんとつながっています。
 何というスピードでしょう。


 さて、どうやって、このような短期間にこの大仕事を成し遂げたのでしょうか?いちおうクイズ仕立てにしました。


 ※例によって、黒板をクリックしてください。答が現れます。


 このページを最初からちゃんと読んでいれば、自ずと正解が選択できますね。
 クレーンはまだしも、ヘリコプターは無理ですね。コンクリートの場合、鉄橋とは違って橋桁の重量が、それこそ桁違いです。
 上の写真の
S字型橋桁は、長さ93m、重量3800トンです。


 新橋の架橋方法の説明です | 全行程目次・地図へ || 先頭へ |

 まず、新橋全体の架橋の方法を説明します。


 以下の説明図の元の図面や絵は、この橋の工事を担当している、「清水・銭高JV 山陰線鎧・余部間余部橋りょう改築他工事事務所」が発行している、「余部橋りょう便り」の25号(2010年4月発行)・26号(同6月発行)から複写・転載しました。

 この「余部橋りょう便り」は、現地の橋りょう工事現場の掲示板に貼り付けてあったものです。工事事務所(TEL 0796−34−0071)に確認して、当サイトでの利用の許可をもらいました。
 親切な電話対応及び許可してくださったことに感謝します。

写真01−06 余部橋りょう便り (撮影日 10/07/30)





 上の両図の@橋脚の部分が、今話題にしている、S字型橋桁の部分です。
 説明図02に見れば、
@橋脚の上に乗っかるS字型橋桁は、他の橋桁と同じように、橋脚の上で左右に腕を伸ばすように建設されています。
 決して、旧橋の橋桁や橋脚との重複部分(
説明図01の赤塗りの部分)を撤去してから架設するのではありません。
 では、その重複部分はどうするのでしょうか?
 それが、橋桁移動旋回工法」なのです。


 では、その工法の具体的な説明は、次のページで行います。
 「ここまで来てそれはないでしょう」と思いでしょうが、しばらくお待ちください。 


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