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日本人のアイデンティティを考える3
   
 □酒に強い人弱い人の全国分布 03/09/15作成 
どの地域でアルコールがたくさん飲まれるか| 関連ページの案内へ |

 縄文人と渡来系弥生人の違い、つまり、古モンゴロイドと新モンゴロイドの違いは、日本人のアイデンティティを考えるT「現代日本人のルーツ」で説明しました。寒冷地適応した新モンゴロイドは、手足が短い・一重まぶたなどの特色を持ちました。その特色のひとつに、酒に弱いという特色があり、それが現代日本人の「酒生活」に遺伝的な影響を与えているということは、「酒が弱い人強い人」で説明しました。
 目から鱗 日本人のアイデンティティを考えるT 「現代日本人のルーツ」
 目から鱗 日本人のアイデンティティを考えるU 「酒に強い人弱い人」 

 読者の皆さんは、上記の内容をお読みになっていて、酒に強い弱いの違いが遺伝的要因に大きく影響されていることや、アルコールの分解の決め手となるアセトアルデヒド分解酵素について、理解されているものとして、ここでは別のデータを中心に、酒が強い人弱い人の全国分布について考えます。

 これまでの研究では、研究者によってその数値は多少異なりますが、両親からALDH2不活性型(■とします)を引き継いでしまった、■■型の人はおよそ10%。片親から■を受けついだ■□型は40%。両親からALDH2活性型(□とします)をともに引き継いだ、□□型はおよそ50%とされています。
 言うまでもなく、■■型は、全く酒が飲めない人。■□型は、少し飲める人。□□型は普通に飲める人ということになります。

 この、■遺伝子が、新モンゴロイド、つまり、縄文晩期から以降にかけて大陸から渡来してきた人々によって、もたらされてものである以上、その分布は、地域によって差があるはずです。
 つまり、そういう人々が多く移り住んだと考えられる大阪府・奈良県などは、当然、■■の分布が多く、□□の分布は少ないと予想されます。

 反対に、理論的には、東北地方とか、九州南部とか、四国南部とか、いわゆる、中央部から離れた地域は、縄文時代以来の□□の遺伝子を持つ人々が多いということになります。

 これについて、筑波大学社会医学系の原田勝二助教授が、全都道府県の5255人を対象に調査をされました。
  ※『朝日新聞』2000年1月10日付け「酒に弱い?中部・近畿」を参考にしました。
 
 これによると、□□型が最も多かったのは、秋田県の77%、2位は岩手・鹿児島両県の71%、反対に、最も少なかったのは、三重県の40%、ついで愛知県の46%ということになりました。
全国順位は次のようになります。

<表1 アセトアルデヒド分解酵素活性型遺伝子を両親から受け継いだ人の割合の多い都道府県ランク>
順位 都道府県名 順位 都道府県名 順位 都道府県名 順位 都道府県名 順位 都道府県名
1 秋田 11 山形 20 山梨 31 佐賀 41 広島
2 岩手 12 青森 22 山口 32 長崎 42 大分
3 鹿児島 12 宮城 23 愛媛 33 徳島 43 和歌山
4 福岡 14 千葉 23 島根 34 京都 44 岐阜
5 栃木 15 新潟 23 鳥取 35 滋賀 45 石川
6 埼玉 16 神奈川 23 長野 36 群馬 46 愛知
7 北海道 17 香川 23 福井 36 富山 47 三重
7 沖縄 18 宮崎 28 福島 38 岡山    
9 熊本 19 東京 28 兵庫 39 奈良    
10 高知 20 茨城 30 静岡 40 大阪    
 

 上の表の上位1位から20位までの都道府県(20位が二つあるので総計21都道府県)を図示すると、左の地図のようになります。

 原田助教授の調査のサンプルは、1都道府県約100人ずつとそれほど多くはありませんから、多少の誤差はあると思います。
 それでも、□□型が多い都道府県は、周辺部にあることはよくわかります。反対に、■遺伝子が多い県が中央部に分布していることが、よくご理解いただけると思います。
 福岡県は、弥生時代以降に最も渡来人が多く渡ってきた土地だと想像されますが、活性型遺伝子の割合では、第4位です。
 単なる想像ですが、福岡市(博多)が九州の中心地であったことから、弥生時代に一時低下した割合が、その後、南九州などから割合が高い人が移住してきて、いつの間にか回復したというのはどうでしょう。
 我が
岐阜県は、44位です。(-.-)

 これを、現実のお酒の消費量 と比べるとどうなるでしょう。
 
 国税庁のホームページに、いろいろな統計が載っています。
  ※国税庁のサイトはこちら
 
 その中に、平成10年度の各都道府県別の酒の販売量をまとめたものがあります。ありがたいことにデジタルデータでダウンロードできます。
 このデータ元に次の加工して、基礎データを作りました。 

  1.  元データは、都道府県別の酒類の販売量をキロリットルで示したものであるため、これをエチルアルコールの量に換算した。つまり、販売量そのものでは、ビールばかりをたくさん飲む都道府県は量が多く、焼酎やウィスキーなどのアルコール度数が高いものばかりを飲む都道府県は、量が少なくなってしまうからである。
     換算の方法は、国税庁が課税の基準に使う平均的なアルコール度数を用いた。たとえば、清酒…15%、ビール…5%、発泡酒…5.5%などである。元データの種類別の販売量にそれぞれこの数値をかけて、正味のアルコール量を算出した。

  2. 次にそのデータを、平成10年の都道府県別人口で割り、1人当たりの量を求めた。

 これで、エチルアルコール換算の都道府県別1人当たりのアルコール消費量としまた。

<表2 都道府県別一人当たりの年間アルコール消費量 エチルアルコール換算>
順位 都道府県名 消費量 l 順位 都道府県名 消費量 l 順位 都道府県名 消費量 l
1 東京 9.5 11 大阪 7.3 20 福島 6.8
2 新潟 8.2 11 島根 7.3         
2 秋田 8.2 13 山形 7.1 39 栃木 5.6
4 宮崎 8.0 13 宮城 7.1 40 徳島 5.6
4 青森 8.0 14 岩手 7.0 41 埼玉 5.5
6 北海道 7.6 14 長野 7.0 42 三重 5.4
7 大分 7.5 17 広島 6.9 43 岐阜 5.4
7 鹿児島 7.5 17 福岡 6.9 44 茨城 5.3
9 山梨 7.4 17 山口 6.9 45 滋賀 5.2
9 高知 7.4 20 熊本 6.8 46 奈良 4.3

  ※消費量の単位は、l(リットル)
  ※沖縄県のデータは含まれていない。
  ※桃色は、表2のベスト21に入った県。

 これを見ると、表1のALDH2の所有率の高い県は、おおむね、消費量が多いことがわかります。
 ただし、第1位は表1で第19位の東京都です。
 この理由は、東京では、東京都民以外の通勤者・旅行者が東京で酒を大量に飲むことと考えられます。
 反対に、埼玉県などは、逆の現象があてはまるのでしょうか。  

追記・・読者のかたからメールをいただきました。
酒の名産地には、お土産効果というのがあって、他県から来た観光客が購入していくので、その分より販売量が多くなるとの指摘です。山梨県のワインなどは、その典型といえるでしょう。


 どこの県民がどれだけ飲んでいるかという量の把握は、お酒のアルコール度数の問題もあり、飲む場所の問題もあり、なかなかうまく把握できません。
 かといって、個人対象の聞き取り調査では、飲んだ量の把握はこれまた正確にはいきません。

 まあ、おおむねおもしろい結果とはいえますが、学問的に発表というようなレベルにするには、まだまだです。(-.-) 
 


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