西濃鉄道石灰石専用列車と
大垣赤坂金生山02
 通称「矢橋ホキ」って知っていますか?貨物列車の1編成から産業と故郷を考えます。
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 1日3往復運転されています どこからどこへ?  08/12/28 23/11/23改正

 1ページ目(第1項目前半)では,「矢橋ホキ」の基本について説明しました。
 このページでは,どこからどこまで走り,また,1日にどれぐらいの頻度で運行されているかについて,現地の写真を掲載しつつ説明します。


 どうやって調べるか 電話,インターネット,そして「JR 貨物時刻表」

 石灰石専用貨物列車「矢橋ホキ」は,前回のページの「矢橋ホキ」の説明から,おそらくは大垣北部にある金生山から石灰石を積んで,岐阜駅を通過してどこかへ向かっていることはわかりました。
 では,どこからどこへ向かうのか,あるいは,どのくらいの頻度,毎日かそれとも週あたり何回か,または1日に何回もか,等についてはどうやって確認するのか?
 これについては,まず,インターネットで先学のサイトを確認しました。インターネットを使えば概ねのことはわかります。次に,本家本元の矢橋工業株式会社に電話しました。これでさらに確実な情報を得ました。
 そして,もうひとつ,この件に出会うまで私自身はこれまで見たことがなかった便利な物を購入し,それで確認をしました。

 その便利な物とは,
社団法人鉄道貨物協会編『2008 JR貨物時刻表 平成20年3月ダイヤ改正』です。
 普通の市販の時刻表には,貨物列車の運行は記入されていません。しかし,現実には,JR線路内にはJR貨物の貨物列車が正確に時間通り運行されています。
 その貨物列車の時間のみを掲載した本が,この貨物時刻表なのです。

 主な中味は次のようになっています。

 グラビア:最新の貨物列車(電気機関車)

 2

 全国貨物取扱駅・路線表 

 JR貨物線区別時刻表 

 オフレースステーション時刻表

 臨海鉄道時刻表

 私鉄貨物列車時刻表

 コンテナ高速貨物運行表

 列車番号の付け方・貨車の形式記号

 JR貨物営業案内

10

 輸送技術

11

 機関車運用表

12

 コンテナ取扱駅構内図 

13

 フォトギャラリー 

 

 ただの時刻表だけではなく,貨物を利用しようとする人に便利に,そして,仕事とは関係のない単なる鉄道ファンにもたまらなく魅力的に編集されています。
 しかも,嬉しいことに,
『2010時刻表』は創刊30周年記念号で,JR全線の貨物列車運行図表ダイヤグラム)が3枚にまとめられて付録として付いていました。  


 下に,「東海道・山陽・鹿児島・本四備讃・予讃線貨物列車運行図表 平成20年3月15日改正」の一部を引用しました。


 【入手方法】
 この貨物時刻表は,鉄道貨物協会のサイト(トップは,http://www.rfa.or.jp/,時刻表のページは,ttp://www.rfa.or.jp/timetable/sell_timetable.htmllです)から注文できます。定価2,500円(+送料500円)です。
 現在は,
2023年3月改正版が発売されています。


 矢橋ホキの運行 乙女坂−美濃赤坂−大垣−笠寺−新日鐵 1日3往復

 その貨物時刻表を調べた結果,矢橋ホキは次のように運行されていることがわかりました。

 西濃鉄道乙女坂駅名古屋臨海鉄道新日鐵駅に接続する引き込み線を経て新日本製鐵名古屋製鉄所間を結ぶ

 経由地の詳細は次のとおり。
乙女坂→(
西濃鉄道)→美濃赤坂駅→(JR美濃赤坂線)→南荒尾信号所→(JR東海道線)→大垣駅→岐阜駅→稲沢駅→名古屋駅→笠寺駅→(名古屋臨海鉄道)→東港駅→新日鐵駅→新日本製鐵名古屋製鉄所

 1日3往復の運行(日曜日は1往復のみ。)


 運行経路と駅を地図にすると次のようになります。ここまでの地図は他の同類サイトにはあまりないと思いますが,凝り性だもんで作ってしまいました。 


上の地図は,NASA World Wind→http://worldwind.arc.nasa.gov/index.html)の写真を利用して作製しました。


 矢橋ホキの運行時間

 続いて,2008年3月改正の矢橋ホキの運行時間表です。これもあまり他の同類サイトにはないと思いますが,むちゃくちゃ凝って作ってしまいました。
もちろん,上記の貨物時刻表を調べて作りました。 

  ※この表は,2009(平成21)年3月14日のJRダイヤ改正によって一部変更となりました。
   
2009年版新タイムテーブルは,P12にありますこちらです。→P12

  ※この表は,さらに2010(平成22)年3月13日のJRダイヤ改正によって一部変更となりました。
   これによって矢橋ホキを牽引する東海道線の機関車が,
EF65からEF66へ変更になりました。
   
2010年版新タイムテーブルは,P17にあります。こちらです。→ 

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  主な特色,留意点,面白い点をまとめます。

 矢橋ホキは,1日に乙女坂と新日鐵を3往復しています。表01では,@ABで示しました。「空」は,新日鐵から乙女坂へ向かう石灰石を積んでいない空の列車,「積」は反対に石灰石を積載した列車です。
 時刻表上の表記は,積み荷を積んでいない帰りの空の貨車のことを,「返空」と表記しています。つまり,その道のプロは,「返空」という言い方を使いますが,ここでは,分かりやすく,「積」に対して「空」と表現します。

 3往復していますが,車両は2編成しかありません。朝の@と夕方のBは同じ編成が1日2往復していることになります。@・BとAとは貨車の車両数,積載する荷物が違いますが,それについては他のページで説明します。

 祭日には運行されますが,土曜日はAが運行されない時もあります。日曜日は13本とも運休です。

 平日の夜は,@列車は稲沢に留まります。朝5:00に出発して乙女坂に向かいます。もうひとつのA列車は名古屋臨海鉄道の東港駅に留まります。 

 運休している日曜日は両編成とも同じ所に休憩しています。これもまた他のページで説明します。


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 路線の主な部分の写真です

 このページの後半は,路線の主な部分の写真を掲載して,矢橋ホキの走る路線の概要を説明します。紹介は北から南へと進めます。

写真02−01 西濃鉄道乙女坂駅北端         (乙女坂駅@空→積 撮影日 23/07/24)T氏撮影

 これが矢橋ホキの運行上の最北端の場所,西濃鉄道の乙女坂駅です。正確にはこの写真の位置では,西濃鉄道のピンク色に塗装された(2023年4月からこの色で運用開始)のディ−ゼル機関車DD451号機は動いていて,あと200m程進んで停車します。そこが乙女坂駅の最北端になりす。
 といっても西濃鉄道は旅客は扱っていませんから,ホームのようなものはありません。ディーゼル機関車が列車の先頭から戻ってきて,今までと反対に,それまでの最後尾を先頭にして折り返し牽引できるように,ディーゼル機関車が移動するための側線が一本付いているだけです。(機関車を回すことを「機回し,そのための線路を機回し線といいます)」西濃鉄道は電化されていませんから,JRの電気機関車は入れません。後ページで詳しく紹介します。
 周りの工場は,矢橋工業ほかの金生山の石灰石関連企業の工場です。

 このページから矢橋ホキが写っている写真には,「@積」「@空」とかの記号を付けます。この記号については次の部分で説明します。↓


 写真02-02 西濃鉄道乙女坂駅             (乙女坂駅@空→積 撮影日 08/07/12 )

 西濃鉄道の乙女坂駅をその南にある踏切から北を向いて撮影したものです。手前のポイントのもう一つ手前が踏みきりで,撮影者の私はその踏切を横切る道路の上に立っています。
 遠くに写っている機関車は,西濃鉄道の
DD403号機です。
 周りの工場は,矢橋工業ほかの金生山の石灰石関連企業の工場です。その一画に採掘した石灰石をホキ車に積載する装置があります。つまり,西濃鉄道乙女坂駅に停車するということは,停車中に工場から直接石灰石を積載するということです。
 上の時刻表で確認していただければわかりますが,乙女坂駅には平均2時間ほど停車して,石灰石を積み込むのです。

 写真02-03 乙女坂駅入り口(南端),DE10501号機まもなく出発 @荷(乙女坂駅@空→積 撮影日 08/12/27)

 乙女坂駅の南で作業中のDE10501号機と矢橋ホキ。朝のまばゆい光を受けてとても綺麗です。
 まもなく石灰石積載を終え,出発です。


 写真02-04 乙女坂駅を出発し踏切を通過  @荷   (@積 撮影日 08/07/22)

 石灰石の積載を完了した矢橋ホキは,西濃鉄道のDD403号機に引かれてて美濃赤坂駅に向かいます。後方には矢橋等の巨大な工場群が見えます。虚空蔵菩薩へ通じる丘陵からの撮影です。

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 写真02-05 美濃赤坂駅を出発する前の矢橋ホキ  @荷   (美濃赤坂駅@積 撮影日 08/07/12)

 西濃鉄道のDD403号機に引かれて美濃赤坂駅に到着した矢橋ホキは,牽引する機関車を,待っていたJRJR貨物の
EF65−1065号機に換え,JR美濃赤坂線を経由して東海道線大垣駅へ向かいます。
 この写真は,機関車付け替え作業が完了してまもなく出発というシーンです。 

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 写真02-06 西濃鉄6道・JR美濃赤坂線美濃赤坂駅の背後の山から @空→積 撮影日 23/07/24)T氏撮影

 いよいよ出発です。この写真は金生山の南部,虚空蔵の手前からの撮何故ことさらに影です。
 矢橋ホキはどこを通っているかわかりますか。そうです。右辺中央部で弧を形成しているのが,矢橋ホキA列車です。
 一方,写真中央を左右に横切っている白い千が,建設中の
東海環状自動車道路です。すでに完成している養老ジャンクションを経て,こちらも今建設中の三重県(北西地域y愛知県北部と繋がります。また,この区間の北側,大垣西−本巣の開通は,2024年になります。
 ところで,貨物列車の追っかけをしている小稿が,なぜ自動車道路の話しをするか?ここがこの未来航路の存在価値をあらしめているッ所以です。

 この山の上に登ってみるとその意味がすぐわかります。矢橋ホキの向こうに愛知県と結ばれる自動車専用道路があり,写真の上部奥には,この写真では雲にかすんで見えませんが,愛知県の工業地帯が並んでいます。列車輸送とトラック輸送,あなたはどちらを選びますか。
 こんなことを考えるのも,この未来航路の特色です。
 また,岐阜-新日本製鐵名古屋製鉄所の組み合わせは,まったく別のテーマ「戦艦大和について考える 46cm主砲によるアウトレンジ攻撃は可能か」 でも考える対象となっています。                               


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 写真02-07    南荒尾信号所を通過する矢橋ホキ @荷  (南荒尾信号所@積 撮影日 08/09/06)

 EF65−1076号機に引かれて,南荒尾信号所で美濃赤坂線からJR東海道線上り線へ入る寸前の矢橋ホキです。
 たくさん線路がありますから少し解説です。
 写真の中央にある線路がJR東海道線の上り線です。その隣は東海道線の下り線。その2線を渡っているのが美濃赤坂線,分岐して写真左方向に向かっているのが新垂井線(旧・新垂井駅経由,実は現在も正式にはこちらが東海道線下り本線)です。 (この複雑な線路事情は,04岐阜県の東海道線あれこれ 10垂井線の謎4南荒尾信号所 参照)
 国道21号線の高架橋からの撮影です。
 
東海環状自動車道路の大垣西インターチェンジの開通や大垣西−本巣間の建設によって,この南荒尾の地は景観が随分様変わりました。

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 写真02-08 大垣駅西の大垣電車庫横を通過するく矢橋ホキ A積     (撮影日 08/08/02)

 昔、2023年に亡くなった地元銀行の頭取が得意そうに語られた。「社会の先生なら知っとらなあかんことや。今の電車庫(区),昔の蒸気機関車の機関区が岐阜ではなく大垣に作られたのはなぜか。大垣の方が水が豊富だったからだ。特急は水をいっぱい補給した蒸気機関車に取り替えて,関ヶ原の25/1000の急勾配を登ったのだ。」


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 写真 02-09 矢橋ホキ,揖斐川橋梁通過 @荷  (揖斐川堤防 撮影日 08/12/27)
 大垣を過ぎて揖斐川橋梁にかかる矢橋ホキです。背景の削られた小山が金生山です。次の通過駅は穂積です。 

 写真02-10 揖斐川鉄橋を渡って犀川鉄橋にかかる矢橋ホキ  @積     (撮影日 09/01/31)

 全24両編成の矢橋ホキは,長すぎてカメラの横幅に入りませんでした。何年経ってもカメラ初心者ですみません。背景の大きな山は池田山,中央左の白く削られた山が金生山です。
 ところで,JJR東海道線は,揖斐川鉄橋を越えると次の長良川堤防まで,瑞穂市を過ぎる間,線路は高架か土盛りの上を走っています。もちろん踏切は一つもありません。何故でしょう?


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 写真02−11  矢橋ホキ,穂積駅待避線入線 @積            (撮影日 09/11/12)

 矢橋ホキのダイヤは,東海道線ではスピード優先には組まれておらず,岐阜西ターミナル,稲沢ターミナルなどでは時間調整のために側線で待機と言うこともあります。この写真はかつて存在した,穂積駅の上り線の外側へ待避する矢橋ホキです。。

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 写真 02-12 矢橋ホキ,岐阜西貨物ターミナル通過  A積 (岐阜貨物ターミナル@積 撮影日 08/06/29)

 長良川鉄橋を西から東へ渡って,岐阜西貨物ターミナルを通過する矢橋ホキです。この時のダイヤでは矢橋ホキは待避線には入らず,そのまま岐阜駅へ向かいました。 長良川左岸堤の江崎道踏切からの撮影です。 


 写真 02-13 矢橋ホキ,岐阜西貨物ターミナルの待避線より上り本線へ @積 (撮影日 23/11/28)

 岐阜西貨物ターミナルは上下の通過線の他に複数の線路を有しています。そのうち上下線の間に設けられている中線は最も利用される線路です。矢橋ホキの他、岐阜駅止まりの普通電車の折り返しにも使われます。
 写真では矢橋ホキの最後部が下り快速電車の先頭にぶつかりそうに見えますが,矢橋ホキは中線から上り本線へ入ろうとしていますから大丈夫です。


 写真 02-14 矢橋ホキ,最終列車B積,西岐阜駅通過 (撮影日 23/07/02)

 3番列車は乙女坂を19時前後に出発します。西岐阜駅通過は19時20分過ぎになります。夏至の前後でもなかなか光の加減が難しくなります。これも何回か通った結果の苦労の作品です。日没後のあかね色に浮かぶ稜線は伊吹山です未熟です。


 写真02-15 岐阜駅西側の高架部分を通って岐阜駅に近づく矢橋ホキ@積     (撮影日 08/07/04)
 EF65−1117号機に牽引されて岐阜駅に近づく矢橋ホキです。岐阜駅西のとあるビルの4階から撮影しました。 
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 写真02−16  矢橋ホキ,名古屋駅通過            (名古屋駅B積 撮影日 08/11/11)

 1日のうちの3回目の石灰石列車は,乙女坂駅17:59ですから,冬はもう陽がとっぷり暮れています。名古屋駅通過は20時5分頃です。多くの通勤客が電車を待っている2番線を,EF65−1075号機が豪快に通り過ぎます。うまい具合に東京出張の帰りに撮影できました。

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 写真02−17   矢橋ホキ,尾頭橋通過             (尾頭橋駅A積 撮影日 08/07/19)

 EF65−1078号機に引かれて名古屋駅と金山駅の間の尾頭橋駅を通過する矢橋ホキ。 

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 写真02-18   笠寺駅で停留中の矢橋ホキ            (笠寺駅A積 撮影日 08/07/19)

 矢橋ホキは笠寺駅で東海道線と別れ,そこから名古屋臨海鉄道線に入って,新日鐵駅に向かいます。A積は,笠寺駅で1時間半ほど待ちます。

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 写真02−08    新日鐵駅についた矢橋ホキ          (新日鐵駅A積 撮影日 08/07/26)

 名古屋臨海鉄道のND55210号機に引かれて新日鐵駅に着いた矢橋ホキB積。名古屋臨海鉄道も西濃鉄道と同じで,旅客は扱わない貨物だけの鉄道です。したがって乙女坂駅と同じで,駅といってもホーム何もありません。側線が1本あるだけです。

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 これで矢橋ホキの旅の概略は理解いただけたでしょうか?
 次ページからは,一つ一つを詳しく見ていきます。 


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