| 旅行記のメニューへ  | | 飯田線秘境駅めぐり目次へ  | | 前へ | | 次へ |

 飯田線秘境駅めぐりレポート3 総括 魅力と課題  | 先頭へ |

 「春の小旅行その1」として、JR飯田線の秘境駅に行ってきました。日帰り旅行のレポートその3です。秘境駅のランキング順紹介を続けます。残るは2駅です。


 今回の旅行はツアー旅行、おとくな「JR50プラス」
 飯田線とはどういう路線 その魅力は
 豊橋から三河・遠江・信濃の国境へ
 まずは大嵐駅 そもそも秘境駅とは何だ
 秘境駅その1  千代駅 為栗駅 中井侍駅 金野駅  
   秘境駅その2  田本駅 小和田駅 
   飯田線秘境駅めぐりの総括 魅力と課題 付「ローカル線秘境駅訪問プラン」
   追加「ローカル線秘境駅訪問プラン」日帰り編 【13/05/26追加】

地図01飯田線全体図へ説明図01旅程表へ地図02秘境駅地図へこの旅行記の目次へ参考文献一覧へ
 6 秘境駅その2 田本駅 小和田駅         ページの先頭へ

 飯田線の秘境駅群のうち2駅が、ベストテンに入っています。秘境駅ランキングの第4位田本駅第2位小和田駅です。順に紹介します。 


  田本たもと 秘境駅ランキング4位

地図01飯田線全体図へ説明図01旅程表へ地図02秘境駅地図へこの旅行記の目次へ参考文献一覧へ

 さすがは、秘境駅ランキング第4位の駅です。立地条件、自然条件は、まさしく代表的秘境駅と思えます。


 写真03-01・02 田本駅は長野県下伊那郡泰阜(やすおか)村にあります。天竜川の渓谷にへばりつくように駅が設置されています。ホームの真上には、大きな岩石が・・・・。 (撮影日 13/04/21)


 写真03-03・04  駅の両側はトンネルです。左:北側、右:南側  (撮影日 13/04/21)

 左の写真は先頭車両から撮影した進行方向です。駅に隣接してトンネルがあり、すぐその向こうもまたトンネルです。
 右の写真は最後尾車両からの撮影です。
 人が通っているところはホームの南端部分ですが、そこから細い道がトンネルの入り口の左側へ続いて階段となっています。階段を上ると、トンネルの上に出ることができます。写真トンネル右上の鉄の手すりの部分です。そこから、飯田線秘境駅の写真の中でも「
これぞ秘境駅といえる定番の写真」を撮影することができます。
 次の写真です。
 


 写真03-05 駅南側のトンネル上からの田本駅の写真              (撮影日 13/04/21)

 天竜川の河岸段丘の下部の谷にへばりつくように駅がつくられています。断崖絶壁の途中に幅2m弱の狭いホームだけがあり、人家どころか駅の施設も小さな待合所以外はありません。この写真だけ見れば、まさしく秘境駅です。


 南側のトンネルの上へと続く道を川沿いにさらに進むと、断崖絶壁の上に上がる道に出ます。さらに行くと、天竜川対岸へ渡る吊り橋、竜田橋があります。
 しかし、断崖絶壁の上はというと、これが意外なことに、平坦な土地が広がっています。河岸段丘の段丘面と思われます。秘境駅探検家の本やJR東海の冊子には明示されていませんが、この田本駅のすぐ上、水平レベルの直線距離にして200mほどのところには、
泰阜村立泰阜小学校があります。秘境駅の写真ばかりに目を奪われると、この地域全体の特色が理解できなくなります。鉄道マニアではない、社会科の教師らしい指摘をします。次をご覧ください。
  →次の航空写真をご覧ください。「飯田線秘境駅めぐり3 付録」 航空写真 田本駅周辺


  小和田こわだ 秘境駅ランキング2位

地図01飯田線全体図へ説明図01旅程表へ地図02秘境駅地図へこの旅行記の目次へ参考文献一覧へ

 最後は、飯田線秘境駅群では最高のランク、第2位の小和田駅です。
 現在の飯田線の元となった4つの私鉄、
豊川鉄道・鳳来寺鉄道・三信鉄道・伊那電気鉄道のうち、最も遅く全線が開通したのは、三信鉄道です。そして、その最終開通部分が、大嵐ー小和田間でした。
 そういう意味では、飯田線の最も難所の部分であり、ランキング2位もさもありなんという感じです。
 まずは位置の確認です。


 上の地図は、Google から正式にAPIキーを取得して挿入した、小和田駅周辺の地図です。


 この駅も、トンネルとトンネルの狭間の駅です。
 すでに紹介したように、豊橋方向から来ると、佐久間ダムのために水窪川の谷へ迂回した飯田線が、長大な大原トンネルをくぐって天竜川の谷へ戻ったところにあった駅が大嵐駅でした。
 その大嵐駅から、これまた長いトンネルをくぐって次に出たところが、
小和田駅です。大嵐-小和田駅3kmのうち9割がトンネルです。ついでにいうと、小和田駅の次にまた長いトンネルをくぐって出たところが先に触れた中井侍駅です。長いトンネル-駅-長いトンネル-駅-長いトンネル-駅-長いトンネルの繰り返しパターンです。飯田線は全線で138のトンネルがありますが、この区間では、地上よりトンネル部分の方がはるかに長くなっています。「地下鉄飯田線」とあだ名される所以です。
 そして、
田本駅と違って、本当に近くには集落はありません。


 写真03-06・07 小和田駅の両方向側のトンネル  (撮影日 13/04/21)

 左:大嵐駅との間のトンネル(トンネル番号50) 右:中井侍駅との間のトンネル(トンネル番号51)  


 写真03-08・09 ホームは二つ。南側には、作業車両用の引き込み線があります。(撮影日 13/04/21)

 小和田駅は秘境駅の割りには、構内は広く、ホームは上下線二つ分有り、かつては電車のすれ違いが行われていました。牛山氏の著書(2001年刊)に掲載に写真には、山側のホームにも線路が敷かれています。参考文献3の岡田前掲書(2005年刊)P67の写真にも線路が映っています。線路がはがされたのはまだ最近のようです。
 それとは別に、川側ホームの南側に、作業用車両の引き込み線と小さいホームがあります。
 


 駅の周りは自然に満ちています。すぐ下は天竜川佐久間ダムによってせき止められたダム湖の上流部分です。


 写真03-10・11 小和田駅の周囲の自然 駅下のダム湖と天竜川の谷の山並み(撮影日 13/04/21)


 写真03-12  小和田駅の駅表示(赤い文字は「恋成就駅」)と古い駅舎   (撮影日 13/04/21)

 秘境駅群の中では、唯一以前は有人駅でした。1984(昭和59)年までは、泊まり込みの駅員が切符を売っていたそうです。その名残で立派な古い駅舎が残っています。 



 写真03-13・14 ここは3県の境です。  (撮影日 13/04/21)

 小和田駅そのものは静岡県浜松市天竜区にあります。しかし、この地は少し広い視野で見れば、静岡県と愛知県・長野県の3県の県境です。駅に二つの案内があります。
 一つは、色刷りの3県の位置を示した地図です。左の写真の、黄色は愛知県、茶色は静岡県、水色は長野県、そして青色は天竜川が佐久間ダムによってせき止められたダム湖です。
 二つ目はホーム上の標識です。「
三県境界駅」と標柱と、三県の方角を示す標識です。現在地「静岡県」、駅の向かい側「愛知県」、駅の右手「長野県」です。 


 写真03-15・16 古い駅名標識と花嫁号のヘッドマーク (撮影日 13/04/21)

 左は駅舎の軒にある、年代物の駅名標識です。
 右は特別列車「
花嫁号」のヘッドマーク。皇太子殿下が小和田(おわだ)雅子さんと結婚された時(1993年、平成5年)は、この駅はにぎわいました。
「実は以前、ここはある一大センセーション巻き起こして有名になった。そう、皇太子殿下のお相手である「小和田雅子様」と同姓(呼び名は異なるが・・・・)の駅であるため、ご成婚の幸運にあやかりたいと、全国の鉄道マニアや一般の観光客まで巻き込んで列車はラッシュアワー並みになり、ホーム上は人であふれかえった。それだけではなく、水窪町の主催により駅舎で結婚式まで挙げたカップルすらいたほどだ。」
   ※参考文献4 牛島隆信前掲書P114

 1993年6月6日には、小和田駅の利用者は開業以来初めて1000人を超しました。6月9日の結婚式の日には、臨時列車「
小和田花嫁号」が運転され、乗車率は200%以上となりました。
   ※参考文献2 東海旅客鉄道株式会社飯田支店監修前掲書P131 
 


 写真03-17・18 駅下にある廃車と廃屋  (撮影日 13/04/21)

 かつては自動車が通れる道路が駅まで通っており、その名残として、駅下の製茶工場の廃屋のそばには、往年の名三輪車ダイハツ・ミゼットの廃車があります。 


 この小和田駅は、佐久間ダムの建設によるダム湖の出現によって大きな集落が水没した影響で、この地域の人口が減って、秘境駅となったというわけです。
 これで秘境駅一つ一つのレポートを終わります。


地図01飯田線全体図へ説明図01旅程表へ地図02秘境駅地図へこの旅行記の目次へ参考文献一覧へ
 7 飯田線秘境駅めぐりの総括 魅力と課題         ページの先頭へ

 最後にこの飯田線秘境駅号で行く「飯田線秘境めぐり」ツアーの魅力と課題を総括します。


 このツアーの課題はといえば、次の諸点が考えられます。

 秘境駅一つ一つの駅の停車時間が短く、秘境駅を存分味わうことができない。

 6つもの秘境駅をめぐるため、次第に飽きてくる。

 そして、最大の課題は次の点です。 

 秘境駅というのは、人里離れた寂しい駅であり、当たり前ですが、人がいない寂しいところであるべきです。ところがこのツアーでは、ツアーですから仕方ありませんが、車両3両分、約100名以上の乗客が一気に秘境駅に降り立ちます。秘境駅のホームは、雑踏のようになってしまい、「秘境」のイメージからは遠ざかります。

 
 やはり、秘境駅では、一人ぽつんとたたずんで、しばらくの静寂を味わいたいものです。


 写真03-19 田本駅に降り立ったツアー客              (撮影日 13/04/21)

 秘境駅ランキング4位の田本駅も、この混雑では、台無しです。写真は発車2分前の状況です。みんな急いで列車に向かっています。私はといえば、この時点でトンネルの上から撮影していますから、撮影後、猛烈ダッシュで列車に向かったのは言うまでもありません。


 飯田線秘境駅号による「飯田線秘境駅めぐり」ツアーに以上のような課題があるのは確かです。だからといって、このツアーの魅力を全否定するのはまた、行き過ぎです。
 なぜかというと、ツアーという安易な手を用いず、通常の時刻表どおりに、ローカル線を乗り継いで、この秘境6駅をめぐるとしたら、とんでもなく時間がかかるからです。

「たかが6駅ぐらい、全部見て回るのはそれほどではないだろう。」
と思われそうですが、実は違います。
 この秘境駅群のエリアは、電車の運転本数があまりに少なく、一駅ずつ電車に乗ってきて降りて、そして次の電車で離れて次の目的駅へ向かうという「
正統派秘境駅訪問」をすると、全部回るのに大変な時間がかかってしまうのです。

 次の表をご覧ください。飯田線の秘境駅の列車ダイヤです。(秘境駅訪問に関係ないものは一部省略してあります)


地図01飯田線全体図へ説明図01旅程表へ地図02秘境駅地図へこの旅行記の目次へ参考文献一覧へ

 まずは日帰り旅行を考えます。
 長野県在住の方は別として、通常は飯田線沿線に入るのは、
東海道新幹線の豊橋駅からです。
 しかし、岐阜に住んでいる私にしても、その日の朝にいくら早く地元を出発しても、飯田線の電車としては
豊橋駅08:10発の511Mに乗るしかありません。
 ところが、この電車に乗ったとしても、最初の秘境駅の
小和田(11:20発)に停車して、次の519M(13時19分発)を待って次の中井侍に向かうという方法で次を訪問していっても(■■の線のプラン)、為栗駅までは行けますが、それより先は、訪問できません。
 ちなみに、539Mには、為栗・田本・金野・千代駅の部分に、↓がついています。これは、この539Mが普通電車であるにもかかわらず、この4駅には止まらないと言うことです。
秘境駅群は普通電車も停まらない駅なのです。すごい、すごい。


 そうなると、日帰りは断念して、どこかで1泊するというのが次の案となります。
 その最適地は平岡駅です。
 前の日の夕方、
豊橋発18:20の特急伊那路3号で20時15分に平岡に入って、そこで宿泊します。次の日の朝、平岡駅発06時22分の1501Mで為栗駅に向かい、あとは■■線のように順に秘境駅を訪問し、千代駅で折り返して、1504Mに乗って、中井侍駅でおり、544Mを待って13時35分発で6駅目の小和田に向かい、16時01分発の554Mで小和田をあとにすれば、豊橋には、18時24分には帰ってこられます。これならなんとかなります。
 
■■線のプランは、中部天竜に宿泊するプランです。秘境駅の訪問順はわかりやすいですが、豊橋に帰るのはずいぶん遅くなります。568Mで、21時54分です。名古屋や岐阜には帰れますが、東京へは帰れません。


 ■■線プランなら訪問可能とはいっても、1泊2日仕事です。ツアーなら余裕で1日ですみますから、ツアーの魅力もあるというものです。

地図01飯田線全体図へ説明図01旅程表へ地図02秘境駅地図へこの旅行記の目次へ参考文献一覧へ
 8 追加 「ローカル線秘境駅訪問プラン」日帰り編 【13/05/26追加】      ページの先頭へ

 上記のように、岐阜から秘境6駅を正統派訪問する場合は、日帰りではできないと結論しました。
 
 ところが、これに関して、
読者のNSさんから、5月23日にメールをいただきました。
 「
正統派秘境駅訪問の定義に従っても、岐阜から日帰りで全6駅を訪問できる」
という内容で、実際にその訪問プランが書いてありました。
 確かめたところ、ちゃんとできるのです。私の早とちりでした。
   ※これについては、5月26日に掲示板で、
読者のねこてつさんからもご指摘がありました。感謝。

 そこで、みなさん、下の時刻表を使って考えてください。
 西岐阜駅を6時48分発の普通電車に乗れば、名古屋着が7時12分となり、新幹線こだま632号名古屋発7時28分に乗り継げます。豊橋到着は、7時57分となり、
飯田線の511M(豊橋8時10分発)に乗ることができます。
 そのあと、6駅すべてを回って、その日のうちに岐阜駅に戻ってくるプランにするには、どの列車をどのように乗り継いで、6駅をめぐればいいでしょうか?
 もちろん、「
正統派秘境駅訪問」ですから、一駅ずつ、駅に着いたら電車を降りて、その電車を見送り、次の電車に乗って次の駅に向かうという方法をとらねばなりません。同じ電車で「通過」というのは、訪問にはなりません。

 訪問計画立案のためのヒントを出します。
 ヒント1、6駅をめぐる順番は、どんなふうでもかまいません。
 ヒント2、上り電車と下り電車をうまく利用してください。同じ方向にばかり進むと破綻します。
 ヒント3、豊橋発22時13分発のこだま685号に乗れば、名古屋乗り換えで、23時10分に西岐阜駅到着です。


 ※時刻表の上にマウスを置くと、正解が現れます。

 いかがでしたでしょうか?
 一駅ずつ上り下りを交互に乗車することがポイントです。
 また、このプランでは、計画の最後に
田本駅小和田駅と、秘境ランキングが高い駅が二つくるところがなかなかの技です。

 ただし、問題点はあります。
小和田駅到着は17時51分、小和田駅出発は19時34分ですから、3月~9月ぐらいは何とか写真撮影ができますが、冬場は、日没後となってしまい、写真撮影は不可能です。なにより、山間の無人駅に、寒い暗い日没後に電車を待つことになります。したがって、初夏にお薦めのプランです。

 それにしても、NSさん、お見事でした。


 時間はかかりますが、本当は正規の時刻表に従って、1泊2日ぐらいの予定で、温泉に入ってのんびりじっくり「正統派秘境駅訪問」をやってみたいものです。

「退職後はできるかな。」
 

「たぶん、ね。」 

 

「また、来たい。」

 いつのことになりますやら・・・・。
 
 これで「
飯田線秘境駅めぐり」のレポートを終了します。最後までおつきあいくださって、ありがとうございます。

地図01飯田線全体図へ説明図01旅程表へ地図02秘境駅地図へこの旅行記の目次へ参考文献一覧へ

 【飯田線秘境駅レポート2 参考文献一覧】
  このページの記述には、主に次の書物・論文を参考にしました。

西村京太郎著「愛と死の飯田線」『最果てのブルートレイン』(カッパノベルス 1986年)所収

東海旅客鉄道株式会社飯田支店監修『飯田線ろまん100年史』(新葉社 1997年)

岡田文士著『東海ロ-カル線の旅』(風媒社)

  牛山隆信著『秘境駅へ行こう!』(小学館文庫 2001年) 
  牛山隆信著『もっと 秘境駅へ行こう!』(小学館文庫 2003年) 
  JR東海のパンフレット『飯田線 秘境6駅&みどころマップ』(JT東海飯田支店 2012年) 


| 旅行記のメニューへ  | | 飯田線秘境駅めぐり目次へ  | | 前へ | | 次へ |