駅の設置場所はすごいところですが、意外なことに少し標高の高いところに、河岸段丘が広がっていることがわかります。微視的にはすごい秘境駅ですが、鳥瞰的に見ると、それほどでもありません。
秘境駅訪問家の牛島隆信氏の記述です。
「秘境駅訪問家という自称は使わないものの、日本の鉄道ファンの中には「駅マニア」と呼べるような人はけつこういて、そういう人たちのあいだでも人気の高いのがこの田本駅である。というのも、ここは特徴のある駅が多い飯田線の中でも、非常に特異
な立地条件をもつことで有名だからだ。
その立地とは=…・。
まず駅自体が断崖絶壁の途中に位置しており、初めて見た人は誰もが「なんでこんなところに駅が……」と不思議に思う。さらに両側に延びる線路はすぐにトンネルに入ってしまうため、要するに崖の中に孤立した閉鎖空間でもあるわけだ。
したがって田本「駅」に降りても人の住む集落までたどり着くのは容易ではない。
急な斜面、登山道のような険しい道を20分は登らなければならないのだ。これでは地元の利用者から敬遠されてもしかたない。」
※牛山隆信著『秘境駅へ行こう!』(小学館文庫 2001年) P120-121
そもそも駅を設置する時に、おそらくは、段丘面の高さが違っていたためか、この駅は、段丘の上ではなく、崖につくられてしまいました。昔の方なら不便でも徒歩でこの駅を利用していたでしょう。しかし、現代では、わざわざ利用する人はいなくなっているのです。
「近くに集落が有りながら、ほとんどの人が自動車利用のため、アクセスの手段が限られてしまった駅」というのが本当の姿です。 |