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 飯田線秘境駅めぐりレポート2 これが秘境駅    | 先頭へ |

 「春の小旅行その1」として、JR飯田線の秘境駅に行ってきました。日帰り旅行のレポートその2です。 
 いよいよ秘境駅を訪問します。


 今回の旅行はツアー旅行、おとくな「JR50プラス」
 飯田線とはどういう路線 その魅力は
 豊橋から三河・遠江・信濃の国境へ
 まずは大嵐駅 そもそも秘境駅とは何だ
 秘境駅その1  千代駅 為栗駅 中井侍駅 金野駅  
   秘境駅その2  田本駅 小和田駅 
   飯田線秘境駅めぐりの総括 魅力と課題 付「ローカル線秘境駅訪問プラン」

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 4 まずは大嵐駅 そもそも秘境駅とは何だ     ページの先頭へ

 佐久間ダム建設に伴う路線変更によって水窪(みさくぼ)川の谷へ路線替えした飯田方面行き下り飯田線列車は、水窪駅を過ぎたあと、路線中最長の大原トンネルを通って再び天竜川水系に戻ります。そこからが飯田線秘境駅ゾーンに入ります。
 
飯田線秘境駅号がゾーンに入って最初に停車した駅は、大嵐(おおぞれ)駅です。駅の所在地は静岡県浜松市天竜区水窪町奥領家です。こんな山奥ですが、平成の大合併によって、浜松市内です。(^.^)


 写真02-01・02  飯田線大嵐駅 上下線方向ともトンネルに挟まれています。  (撮影日 13/04/21)
 左の写真の電車がくぐり抜けてきたトンネルが、上の本文に書いた大原トンネルです。


 写真02-03 大嵐駅発着時刻表  

 写真02-04 大嵐駅駅舎  (撮影日 13/04/21)

 駅舎は東京駅を模したというなかなかしゃれた作りです。
 しかし、停車する電車はといえば、平日・休日とも
上り豊橋方面は1日8本下り天竜峡方面は1日9本です。
 列車の間隔が最も開く昼間は、上りは、10:17、13:45、16:06の3本。下りは、11:15、13:14、16:06の3本です。
 


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 写真02-05 駅のすぐ下は佐久間ダムのダム湖

 写真02-06 天竜川を渡る橋(撮影日 13/04/21)

 駅は天竜川の左岸(東側)にあり、眼下には佐久間ダムのダム湖が広がっています。
 自動車が通れる立派な吊り橋、鷹巣橋を渡ると、その向こうは・・・・。
 


 写真02-07・08 対岸は愛知県豊根村です

  豊根村から臨む大嵐駅(撮影日 13/04/21)

 この駅は、静岡県にありながら実は対岸の愛知県の豊根村富山地区の住民が利用する駅です。豊根村富山は、2005(平成17)年11月の合併までは、日本一人口の少ない村、愛知県北設楽郡富山村でした。
 上の瀟洒な駅舎も富山村の予算で建築されたとのことです。
 

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 さて、この大嵐駅というのは、相当ローカルな駅です。

「この駅は、秘境駅なの?」

 

「いいところに気がついた。この駅は、相当に田舎の駅だが、実は、秘境駅ではない。このJRのパンフレットにも何も書いていない。」 

 

「どういうのが秘境駅なの?」 

 

「次の小和田駅を見ればわかるが、この駅のように、駅までちゃんとした道路があって自動車がやって来れるような駅は、秘境駅には入れてもらえない。」 

 

「へぇー」 

 私もこれについて事前予習するまで詳しく知りませんでしたが、秘境駅というのは、ちゃんと定義があるのです。


 そもそも秘境駅という言い方は、今では鉄道ファンならずともその言葉を知っている人が増えましたが、実はまだ新しい言葉です。
 この言葉を広めたのは、鉄道愛好家で現在は
秘境駅訪問家の肩書きを持つ牛山隆信氏(1967年生まれ、大手企業勤務)です。
 氏は、今回私も訪問した
飯田線小和田駅(秘境駅ランキング第2位)を訪れたのをきっかけに秘境駅訪問に興味を持ち、1999年10月にウエブサイト「秘境駅へ行こう!」を立ち上げました。
 これが全国のファンの注目を集め、2013年5月6日現在の訪問カウンター数
3,868,793 というビッグサイトになっています。同じ頃開設したこの「未来航路」が、累計訪問者数214,145ですから、その15倍です。すごいすごい。
  ※
秘境駅へ行こう! http://hp1.cyberstation.ne.jp/hikyoueki/index.html

 また、秘境駅への訪問記などいくつかの著書もあります。
  ※参考文献4 牛山隆信著『秘境駅へ行こう!』(小学館文庫 2001年)P214-218

 牛山氏はウエブサイトにおいて
、秘境駅の評価ポイントとして、次の5点を示しています。

秘境度

 周囲が断崖絶壁、深い山林、荒涼とした原野にあり、人家が無い(少ない)

雰囲気

 木造の駅舎や待合室、板張りホームなど、古い歴史を感じさせるもの

列車到達難易度

 列車本数が少なく、普通列車でも停車が少ない

車到達難易度

 駅までの道がない、あっても登山道・未舗装道路などアクセスが困難

鉄道遺産指数

 スイッチバック、ループ、引き込み線、廃線跡などの鉄道遺構(現役含む)


 これらの項目のそれぞれについて牛山氏が20点満点で評価し、合計点を総合評価としたものが、「秘境駅ランキング」となっています。2013年度版では、ランキング1位は、室蘭本線小幌駅です。(93点獲得)
 飯田線には、このランキング・ベスト50の中に、なんと
6駅が入っています。
 私たちが参加した「
飯田線秘境駅めぐり」は、その6駅をめぐるツアーなのです。

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 5 秘境駅その1 千代駅 為栗駅 中井侍駅 金野駅            ページの先頭へ
 大嵐駅から北へ向かう飯田線秘境駅号の行程に従えば、訪問する駅の順番は、次のとおりです。赤い数字は秘境駅ランキングです。もちろん小さい数字ほど秘境駅度が高い駅となります。
 
飯田線秘境駅号は、普通に路線どおり走りますから、訪問する駅の順番は、ランキング順ではなく、路線順です。


 しかし、このページで紹介する場合は、路線順では面白くありませんから、以下の紹介は、「秘境駅ランキング」の低い方から掲載します。


  千代(ちよ) 秘境駅ランキング42位

 秘境駅群の一番北に位置し、天竜峡駅の隣の駅です。

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 写真02-09・10 千代駅       (撮影日 13/04/21)

 その昔は、右の写真の草地の側には、引き込み線がありました。 


 千代駅には、駅のすぐそばに一軒だけ民家があります。しかし、それ以外の家は、近くにはまったくありません。駅の名前の「千代」という集落がありますが、なんと5kmも離れています。どうして、集落から5kmも離れたところに駅をつくったのか?
 実はわざわざ離れたところに駅をつくったのではありません。
 一つ北の大きな駅、天竜峡駅から普通に天竜川沿いに線路を引っ張ってくると、この場所を通るのです。人家もないところに駅をつくった理由は、乗客を乗せるためではありませんでした。
 この土地では、天竜川の河原で砂利が採取されており、その積み込み・運び出し駅として建設されたのです。その駅の名前として、5kmも離れた集落の名前が使われたと言うことです。この駅は、その成り立ちからして、秘境駅候補だったのです。
  ※参考文献5 牛山隆信著『もっと 秘境駅へ行こう!』(小学館文庫 2003年)P135-137


 写真02-11 千代駅のトンネル(撮影日 13/04/21)
 千代駅の北側のトンネル。
 JR東海のパンフレット
『飯田線 秘境6駅&みどころマップ』(JT東海飯田支店 2012年)P7によれば、砂利の採取は1966年まで行われたとのこと。
 左の写真のトンネルの左側のコンクリートの部分に小さなトンネルがあり、川から索道(ワイヤーで引っ張る小軌道)で砂利を運んでいました。
 昔はこのトンネルの脇に蒸気機関車に石炭を積み込むためのホッパーもあったそうですが、今は何もありません。写真の左下が天竜川です。 


 写真02-11 千代駅の北に隣接する民家 写真左の人が歩いている場所から上は私有地です。
                                                       (撮影日 13/04/21)


 今では千代駅はこの民家のためにあるようです。


  為栗(してぐり) 秘境駅ランキング26位

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 飯田線秘境駅号は、平岡駅で48分も停車します。ここは秘境駅ではなく、普通の町の駅です。秘境駅ばかりめぐっていると、普通のローカル駅が立派な駅に見えてしまいます。
 長時間停車は、ここで上下線をやり過ごすためです。そのために乗客を全員降ろして、着発番線の変更も行います。降りた乗客は、駅に隣接する土産物屋さんで、おみやげを買うという寸法です。


 写真02-12 下り列車519M (撮影日 同上)

 
平岡駅での48分間の停車時間中に豊橋発の下り電車、519Mが通過していきました。
 左が飯田線秘境絵記号、右が普通電車です。
 秘境駅を行く普通電車といっても、古い電車が走っているわけではありません。ごく普通のJR東海の電車です。
 この
519M電車は、豊橋発10時42分、平岡発13時38分、辰野着17時18分、そして中央線に入って、上諏訪着17時40分です。6時間58分走り続ける電車です。


 平岡駅の次が、為栗(してぐり)駅です。駅から両側に抜ける道はありません。すぐ南側に対岸へ渡る橋が架かっています。名前を天竜橋といいます。しかし、幅2m弱の吊り橋で、自動車は通れません。したがって、この駅へは自動車では来ることはできません。周りに人家はまったくありません。


 写真02-13・14 為栗駅と天竜橋    (撮影日 13/04/21)


 写真02-15・16 天竜橋から見た為栗駅  (撮影日 13/04/21)


  中井侍(なかいさむらい) 秘境駅ランキング25位

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 飯田線の長野県最南端の駅が、この中井侍駅です。
 この駅もトンネルとトンネルの間にあり、駅の両側方向へは道はありません。
 駅の東に丘の上へ上がる幅1mの小道があって、それを登ると民家があり、さらにつづら折りの道を登っていくと、自動車が通れる道、天竜川林道にたどり着きます。 


 写真02-17・18・19 中井侍駅
                   (撮影日 13/04/21)

 左上:駅の上の小道から。ホームを撮影。天竜川の対岸には中部電力の早木戸発電所が小さく見えます。
 駅南の小道は幅1mほど。坂を登ると民家の上に出ます。この駅もこの民家のためにあるように見えます。
 右上:民家の上の小道から見たホームと列車と天竜川です。
 左下:線路の下には、小さなだんだんの茶畑があります。
 


  金野(きんの) 秘境駅ランキング12位

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 金野駅は飯田線の秘境駅群の中では珍しく、自動車で駅のそばまで行くことができます。金野というのは泰阜(やすおか)村の地名ですが、駅の所在地は飯田市です。


 上の地図は、Google から正式にAPIキーを取得して挿入した、金野駅周辺の地図です。


 この駅を設置したのは、飯田線の前身の4私鉄のうち、三信鉄道です。
 最初は集落の近くに設置しようとしましたが、地形の関係上、集落を離れた米川(天竜川の支流)沿いに設置せざるを得ませんでした。
  ※参考文献4 牛山前掲書P128-131


 写真02-20・21 金野駅  (撮影日 13/04/21)

 写真左:「金野」という駅名から、金儲けの御利益があるとの「都市伝説」、いや「秘境伝説」があるため、飯田線秘境号の乗客が金野駅の看板をなでています。
 写真右:駅のホームのはるか上には、今にも落ちてきそうな岩が・・・・・。
 

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 ランキングの低い順に、秘境駅を4駅紹介しました。
 残っているのは、ランキング4位の
田本駅と同2位の小和田駅です。この2駅については、次のページで紹介します。その最後では、この「飯田線秘境駅めぐり」のツアーの総括を記載します。


 【飯田線秘境駅レポート2 参考文献一覧】
  このページの記述には、主に次の書物・論文を参考にしました。

西村京太郎著「愛と死の飯田線」『最果てのブルートレイン』(カッパノベルス 1986年)所収

東海旅客鉄道株式会社飯田支店監修『飯田線ろまん100年史』(新葉社 1997年)

岡田文士著『東海ロ-カル線の旅』(風媒社)

  牛山隆信著『秘境駅へ行こう!』(小学館文庫 2001年) 
  牛山隆信著『もっと 秘境駅へ行こう!』(小学館文庫 2003年) 
  JR東海のパンフレット『飯田線 秘境6駅&みどころマップ』(JT東海飯田支店 2012年) 

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