2006年8月20日、ナターシャからメールをもらいました。
「I am very sorry for the accident near Kunashir.」
もちろん、8月16日の未明に起こった根室の漁船第31吉進丸(きっしんまる 坂下登船長以下4名乗り組み 4.9トン)の拿捕事件のことです。
まず事件の概要です。
この漁船は、2006年8月16日の午前0時頃、根室の花咲港を出港し、納沙布岬と北方領土の最西端の間の水域(下に写真があります)でハナサキガニを漁獲中に、ロシア国境警備艇に拿捕されました。その時、警備艇の銃撃をうけ、乗組員の盛田光広さん(35歳)が亡くなられました。
日本とロシアが定めている中間点(ライン)を越えて、ロシアの主張する「領海内」に入ったため、銃撃をうけ拿捕されたのです。日本とロシアの取り決めで、タコやスケソウダラは中間点(ライン)を越えて「ロシア領海」に入って漁獲してもいいことになっていますが、カニ漁は許されておらず、警備艇に拿捕されてしまたわけです。
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日本政府は北方領土は日本の領土としていますが、現時点では、いうまでもなく4島はロシア政府が実効支配しています。したがって、この海域では、事実上の「領海」が存在しています。ただし、日本側は正式に「領海」とはいいません。領土、領海、国境というものは、二つの国の正式の境です。ここはあくまで日本領ですから、日本側は「中間点」という妙な言い方をします。
私は、2002年に色丹島に行きましたが、もちろん、パスポートなどはもっていきません。自国内ですから当然です。
そして、この地域の外務省の扱いはというと、「見なし外国」となっています。「本来は日本の領土だが今は外国と見なされている地域」という意味です。
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漁業をしていて外国警備艇の銃撃で尊い命が失われてしまうということは我慢のならないことです。しかし、いろいろな報道を検索して読んでみると、どうも、今回の事件において「ロシア側がやり方が一方的にひどい」というわけにはいかないようです。
9月6日付の毎日新聞モスクワ支局の杉尾直哉記者のレポート(「まいまいくらぶ 記者の目・読者の目」https://my-mai.mainichi.co.jp/mymai/modules/eye3/index.php?p=224)には、次の点が指摘されています。
- プーチン政権は近年、漁業資源の確保と国境警備を強化していた。この2年間では、停戦を求めて発砲した例は18件にもなる。発砲相手は日本漁船のみならず、自国船にもおよんでいる。
- 2005年3月には、北千島で警備艇がロシア船籍のトロール船に発砲、炎上させました。密輸の疑いにより停戦命令を出したものの無視したからとのことです。
- ロシア側は、最近の度重なる日本漁船の「領海侵犯」に警戒を強めていた。
つまり、ロシアの国境警備隊というのは、日本の海上保安庁の巡視船とは違って、平気で発砲する部隊なのです。無謀な発砲を非難するとともに、 「中間ラインの存在」という現実がある以上、「疑われる行動」をしないことが、生命尊重の根本策と思われます。
亡くなられた船員のご冥福を祈りつつ、事件の再発防止には、とりあえず、日本側の中間ライン遵守の厳格な姿勢が必要と感じました。
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