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連合軍のドイツ本土爆撃とは 11/04/25記述 11/04/29追加 11/06/11・2/03/19再追加 |
ロンドンのイギリス空軍博物館(RAFmuseum)の紹介も、このページで3ページ目となりました。
これは、都市無差別爆撃をを行ったという事実をあまり宣伝したくない、教科書で次世代に伝えたくない、という心理も働いているのかも知れません。
では、これらについて、上記の大内建二氏の著書を参考に、イギリス空軍博物館の展示写真を紹介しながら、以下説明を進めていきます。、 |
最初にいきなり連合国軍のドイツ本土爆撃を扱った映画(DVD)を紹介します。 |
写真14−01 DVD「頭上の敵機」普通の書店で購入 |
写真14−02 DVD「メンフィス・ベル」レンタル品 |
連合国軍のドイツ本土爆撃をテーマにした映画と言えば、古くは、左の二十世紀フォックス製作の「頭上の敵機」です。これは原題名を「12 o’clock high」と言います。この原題の意味は、軍隊用語で「12時方向上空(に敵機)」という意味です。イギリスに進出してドイツ爆撃を行ったアメリカ陸軍爆撃航空団の物語です。製作は1949年で、主演はグレゴリー・ペックです。 |
爆撃の規模と概要 | 研修日程と訪問地へ || 先頭へ ||研修記目次へ| |
まずは爆撃の規模です。 |
ドイツ本土爆撃は、参加機数・爆撃期間・投下爆弾焼夷弾量のどれをとっても、日本本土爆撃よりも大規模なものであったことが分かります。
もちろん、それだけの「戦果」をあげるためには、英米爆撃隊の側にも、大きな犠牲が生じていました。 |
写真14−03 アブロ・ランカスター爆撃 (撮影日 10/11/16) |
イギリス空軍爆撃航空団の中心機種となったアヴロ・ランカスター爆撃機(全幅31.10m、全長21.18m。1640馬力のロールスロイス・マーリン24エンジン4基搭載)。 |
それでは、英米爆撃機による正味5年のドイツ本土爆撃の期間には、具体的にはどのような出来事があったのでしょうか。 |
ここで重要なのは、イギリス・アメリカ両国の戦略爆撃に対する指向とその実現のための爆撃機開発の歴史です。 |
写真14−04 ヴィッカース・ウエリントン双発爆撃機3型の模型 (撮影日 10/11/16) |
イギリス空軍爆撃航空団の大戦中前半期の主役爆撃機。後半はドイツ本土爆撃の主役を以下に示す4発爆撃機に譲りましたが、対Uボート戦などに活躍しました。 |
写真14−05 ショート・スターリング4発爆撃機1型 (撮影日 10/11/16) |
爆弾搭載量5,900kg。イギリスの4発爆撃機としては一番早く実戦配備されました。1941年2月のオランダのロッテルダム爆撃が初仕事となりました。ただし、航続距離・爆弾搭載量等の性能があとで登場した二つの4発爆撃機より劣り、1944年以降は、主役の座から降りました。 |
写真14−06 ハンドレページ・ハリファックス3型模型 (撮影日 10/11/16) |
初出撃は、1941年3月、フランスのル・アーブル港爆撃。次のアブロ・ランカスターとともにイギリス爆撃航空団の中心機となりました。 |
写真14−07 アブロ・ランカスター1型模型 (撮影日 10/11/16) |
アブロ社は戦略爆撃機として当初、大型エンジン2基を取り付けた戦略爆撃機、アブロ・マンチェスターを開発していました。しかし、大型エンジンの不具合から失敗に終わり、これに代わるものとして、通常エンジンを4発搭載する爆撃機に変更しました。 |
写真14−08・09 イギリス軍の爆弾 (撮影日 10/11/16) |
一方、アメリカの陸軍航空隊爆撃航空団は、イギリス空軍とは異なり、独立した軍とはなっておらず、戦略爆撃に対する明確な指向もありませんでした。 |
写真14−10 アメリカ陸軍爆撃航空団ボーイングB17爆撃機 (撮影日 10/11/16) |
最初の実戦型、B17C型の完成は、1940年7月でした。 |
写真14−11 B17機首下の機銃(撮影日 10/11/16) |
写真14−12 尾部の機銃 (撮影日 10/11/16) |
写真14−13 機体の後半分 (撮影日 10/11/16) |
星のマークの右には、四角い窓が開いています。ここは、左と右の側方の機銃手の持ち場です。B17は高々度飛行が可能でしたが、機体そのものは機密与圧室構造ではありませんでした。乗組員は、高度での寒さに耐えるため、電熱服を着て戦闘を行いました。 |
写真14−14 コンソリデーテッドB24リベレイター爆撃機模型 (撮影日 10/11/13) |
こちらは、リヴァプール・マージーサイド海洋博物館の展示模型です。戦略爆撃用ではなく、対Uボート作戦用の仕様です。 |
写真14−15 コンソリデーテッドB24リベレイター爆撃機首部 (撮影日 10/11/16) |
コンソリデーテッド社はもともと飛行艇の製造会社であり、この機も、翼が上部に付いていることや、機体下部の構造などに飛行艇の形状を受け継いでいることが分かります。航続距離はB17より上回っていました。この利点が認められ、ドイツ本土爆撃以外にも地中海、太平洋方面で幅広く活躍し、生産機数も18181機を数えました。この機数は、ソ連のシュトルモヴィック対地攻撃機の3万6000機についで、軍用機生産機数の世界第2位です。 |
【追加記述】 |
イギリス空軍とアメリカ陸軍航空団の違い | 先頭へ ||研修記目次へ| |
上表のように、イギリス空軍爆撃航空団は1940年から、アメリカ陸軍爆撃航空団は、遅れて1943年から、爆撃機をドイツ本土へ送りはじめました。当初は、イギリス軍の爆撃機は双発のウエリントンを中心とするものであり、両軍とも4発爆撃機を多数保有して本格的な爆撃を実施するのは、1943年の後半になってからです。 |
アメリカ陸軍爆撃航空団は、当初は護衛戦闘機がない中でも、重武装と高々度を利用した昼間精密爆撃に活路を見出し、戦争終了までこれを続けました。 |
写真14−16 アメリカ陸軍戦闘機P47サンダーボルト (撮影日 10/11/16) |
1943年6月に 登場した当時は、爆撃機を護衛できる行動半径は僅かに370kmでしたが、直ぐに増槽(翼に取り付ける落下型燃料タンク)を付けた型が登場し、行動半径は600kmに増加し、ルール工業地帯爆撃までは護衛できるようになりました。 |
写真14−17 アメリカ陸軍戦闘機P51ムスタング (撮影日 10/11/16) |
1943年12月にヨーロッパ戦線に登場。行動半径は一気に960kmにまで増加し、イギリス本土からベルリンまでの護衛が可能となりました。 |
イギリス空軍爆撃航空団は、アメリカ爆撃機より圧倒的に多い爆弾搭載量を利用して、特定の目標に限定しない、エリア全体を無差別に爆撃する方法をとりました。 |
写真14−18 ドイツ双発戦闘機、メッサーシュミットBf110。 (撮影日 10/11/16) |
この双発戦闘機は、開戦当初はポーランドやフランスの戦闘機相手に奮戦し、大きな期待を寄せられました。しかし、Battle of Britainでは、その鈍重な行動性のため、イギリス軍のスピットファイアーやホーカー・ハリケーンの敵ではありませんでした。「戦闘機なのに戦闘機の護衛が必要」と酷評されています。 |
写真14−19・20 レーダーを装備したドイツ軍夜間戦闘機。 (撮影日 10/11/16) |
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いずれも機首にイギリス爆撃機を探知するレーダーを取り付けたドイツ軍夜間戦闘機です。 |
写真14−21 モスキート双発爆撃機模型 (撮影日 10/11/16) |
当初は0.8トン、後には1.8トンの爆弾を搭載し、どのドイツ軍戦闘機よりも高速の時速635kmを誇った。爆撃隊の先導機、パス・ファインダーを務めたほか、高速のため、夜間戦闘機にも転用されました。 |
写真14−22 たくさんの出撃マークを付けたアブロ・ランカスター爆撃機 (撮影日 10/11/16) |
写真14−03の爆撃機の機種のアップ写真です。 |
写真14−23 DVD「暁の出撃 The dam Busters」 |
ドレスデン爆撃と無差別爆撃への疑問 | 先頭へ ||研修記目次へ| |
イギリス軍の都市無差別爆撃に対しては、日本本土への同様な爆撃や、原爆の投下についてと同じく、本当に必要な爆撃だったのかという疑問が呈されています。 |
ドレスデンは、ベルリンの南180km程のところにある、ザクセン地方の古都です。神聖ローマ帝国時代以来のザクセン選帝侯の宮都として栄えた町です。現在はザクセン州の州都です。日本で言うと、京都・奈良といった感じの古い町だそうです。 |
ドレスデン空襲から10日後の1945年2月23日、今度は、ドイツ中部の小さな町、プフォルツハイムが犠牲になりました。ここでも火災嵐が発生し、人口僅か6万5千の町で犠牲者は、2万277人に上りました。 |
写真14−24 DVD「ドレスデン 運命の日」 |
【追加記述】 11/06/11追加 面白い本を見つけました! |
イギリスで少年・少女向けに書かれたドイツ本土爆撃をテーマにした面白い本を見つけました。 |
【追加記述】 2012年3月19日記述追加 (↑B24の写真に戻る) |
コンソリデーテッドB24リベレイター爆撃機の活躍については、総生産機数が18181機とアメリカ軍中で一番多かった機体であるにもかかわらず、それほど有名ではありません。B17爆撃機はいくつかの映画にも描かれていますが、B24爆撃機が主役の映画はありません。 |
【連合国軍のドイツ本土爆撃 参考文献一覧】
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またまた長いページになりました。 |
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