アヘンは、ご存じのように、ケシの花から採取します。 ケシの花はケシ科に属する二年草で茎の高さは100cm~150cmぐらいになり、5月~6月頃、白・紫・赤などの花を咲かせます。
花は一日でしぼみますが、そのあとにできる果実の表面を傷つけると乳状の液が分泌し、それを採取して天日で乾かしたものを生アヘンといいます。これに水を加え加熱・溶解・濾過などの処理をした上で冷却して練膏状にしたものがアヘン煙膏(えんこう)で、これをパイプに詰めてランプにかざして燃焼させ、その煙を吸うのが古典的な「アヘンの吸引」です。
アヘンの麻薬作用は、生アヘンに5~15%含まれているアルカロイド、モルヒネ(C17H19NO3)によって生じます。この物質の抽出に初めて成功したのは、ドイツの薬剤師フリードリヒ・ゼルチュナーで、1804年のことです。ただし、すぐには普及せず、1850年代に皮下注射が開発されてから、鎮痛剤・麻酔剤として広がりました。日本ではモルヒネの国内製造は、第一次世界大戦中に星製薬によって初めて行われました。
ヘロインというのは、モルヒネをアセチル化したもの(ジアセチルモルヒネ)で、1870年代に初めて開発され、当初は1890年代にドイツの製薬会社バイエル社から発売された鎮咳薬の製品名でしたが、後にその名前が一般化しました。ヘロインもはじめは医薬品として用いられましたが、モルヒネ以上に多幸感・依存性が強く、容易に慢性中毒になる物質です。
※参考文献1 江口圭一著『日中アヘン戦争』P16-21
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