原始〜古墳時代2
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<解説編>
 

011 教科書の旧石器時代の記述の変更の理由は?                            問題へ

 問題文に引用した教科書の記載をもう一度確認します。
 
 石井進・笠原一男・児玉幸多・笹山晴生著『詳説日本史』(山川出版1997年版)では、本文に
かつて日本列島には旧石器時代の遺跡は存在しないと考えられていたが、1949(昭和24)年の群馬県岩宿遺跡の調査により更新世に堆積した関東ロ−ム層から打製石器が確認され、以後、各地で更新世の地層から石器の発見があいつぎ、旧石器時代の文化の存在が明かとなった。それらの地層からは土器が出土しないので、この文化は先土器文化・先縄文文化などともよばれたが、アジア大陸の旧石器文化に相当する文化であることはあきらかで、今日では旧石器時代とよばれている。」
とあり、最後の部分の脚注に、問題に引用した次の文があります。

  • 現在までに知られているもっともさかのぼる時期の旧石器時代の遺跡は、宮城県の上高森遺跡で、ほぼ60万年前とされ、原人段階のものである。

 また、石井進・五味文彦・笹山晴生・高埜敏彦著『詳説日本史』(山川出版2003年版)では、本文に上記の文章の赤字の部分が叙述され、同じく最後の部分の脚注に、問題に引用した次の文があります。

  • 日本列島で発見されている旧石器時代の遺跡の多くは約3.5万年前以降の後期旧石器時代のものであるが、各地で中期(約3.5〜13万年以前)旧石器時代にさかのぼる遺跡の追究が進められている。

 つまり、本来なら発見が進んで、遺跡の年代がだんだんさかのぼっていくべきところが、反対に、新しい教科書の方が、古い年代を否定した形となりました。
 これがなぜ起こったかが、この問題の質問の意味です。

 正解、2000年11月に、それまで旧石器時代の遺跡発掘に大きな業績を残してきた民間の研究者、藤村新一氏(当時東北旧石器文化研究所副理事長)による「遺跡の捏造」が発覚し、その後の調査によって、教科書に記述してあった上高森遺跡を初めとして年代の古い旧石器時代の多くの遺跡が実は偽物であることが分かったためです。

 この事実は、まだ現段階では、2000年の毎日新聞のスクープの印象が残っていて多くの方が覚えているでしょうから、そう難しい問題ではありません。やがて、記憶が薄れていくのちの自分のために、あとから生まれてくる未来の高校生のために、あえて問題にしました。
 
 この事件、いわゆる「旧石器捏造」事件については、場所を移して、「目から鱗」のコーナーで説明しています。
   ※目から鱗「旧石器捏造事件」