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各地の鉄道あれこれ20
 全国各地の鉄道の話題あれこれについて紹介します。

 各地の路面電車その8福井鉄道 元名鉄岐阜の電車たち

 今回は、福井市内を走る福井鉄道です。
 ただの路面電車の紹介と言うより、→「名鉄揖斐線廃線物語17で説明した、廃線となった
元名鉄の岐阜市内および周辺600V路線で活躍していた車両群が活躍している路線ですので、その紹介が中心となります。
 また、路面電車シリーズその8となっていますが、福井鉄道の路面電車部分はほんの少しで、「シリーズ」とするにはちょっとおこがましいかもしれません。
 さらに、路面電車シリーズというと、これまで、「
お城と電車」が、隠れたテーマになっていますが、最初から言っておきますと、福井は江戸時代越前松平氏(当初は75万石)の城下町でしたが、現在は、堀、石垣、天守台などの遺構が残るだけで、本丸跡には福井県庁県会議事堂県警察本部などが建っています。したがって、お城の天守と電車等ツーショットの撮影はできません。
 ということになると、表題にもあるように、このページのメインは元名鉄電車車両群の活躍の様子ということになります。 


 福井鉄道の概要と課題

 福井鉄道は、福井市と越前市(2005年の合併前は武生市)とを結ぶ地方鉄道です。
 路線延長は21.4kmで、そのうち軌道線(いわゆる路面電車)部分は、3.3kmです。
 

このページの鉄道関係の情報は、以下の参考文献・HPを参考にしました。 

服部重敬編著『路面電車新時代 LRTへの軌跡』(山海堂 2006年)P168-179

 

柳沢道生著『路面電車 全線探訪記』(現代旅行研究所 2008年)P120-128 

 

福井鉄道公式HP →http://www.fukutetsu.jp/ 

 以下のその全線の路線図と地図を示します。


 右上の地図は、Google から正式にAPIキーを取得して挿入した、福井県の越前中央部の地図です。
 南北に
JR北陸本線がとおり、南の越前市の越前武生駅と福井市内を、福井鉄道が結んでいます。
 福井市内からは、東と北東方向へ、
えちぜん鉄道が延びています。東の路線が曹洞宗の総本山永平寺へ向かう永平寺線です。東北へ延びる路線が、福井県北の温泉地帯へ通じる三国芦原線です。


 福井鉄道の話をする前に、ちょっと脇道にそれて、えちぜん鉄道の話をします。JR福井駅の東口に同鉄道の福井駅があります。
 この鉄道は、2002年に設立された新しい鉄道です。
 以前は、
京福電鉄が経営する越前本線と三国芦原線でしたが、同線で、2000年12月と2001年6月に立て続けに列車衝突事故が起こり、同鉄道は列車運行停止命令を受けてしまいました。収支悪化により事業継続ができなくなった京福電鉄は、国土交通省に廃線届けを提出し、そのまま行けば廃線という事態に陥りました。
 しかし、2002年に福井県等が出資する
第三セクターのえちぜん鉄道が開設され、両線の経営は受け継がれました。

 写真20-01えちぜん鉄道福井駅(撮影日 09/10/24)

 写真20-02 同左 (撮影日 09/10/24)

 左:えちぜん鉄道JR北陸本線の間には、建設中の北陸新幹線の高架ができあがっています。
 右:三国温泉行きです。

 えちぜん鉄道田原町駅と、福井鉄道の軌道線の終点、田原町はすぐとなりどうしであり、将来は相互乗り入れすることが可能です。


 福井鉄道も、地方鉄道に共通する悩み、 つまり、モータリゼーションの進行や少子化による通学生の減少による利用客の減少に直面しています。
 悪いことに、福井県の場合、以下の様になっています。



 つまり、福井県は、世帯当たりの自動車普及台数は、1.749台とここ数年ずっと全国1位を維持している県なのです。順位が下位の地域とは公共交通機関に対する依存度が違います。何もしないままでは、ジリ貧は間違いありません。
 しかも、福井鉄道の場合、鉄道線と軌道線を比べると軌道線が全体の15%程度の3.3kmしかなく、現実的に、福井市内へは、鉄道線の大型車両が入っている状況でした。


 写真20-03 福井鉄道の通常の鉄道車両          (撮影日 11/06/05)

 福井鉄道の旧来からの電車。
 前は、クハ200形、うしろは、610形。現在も、このような車両が10輌(2両編成×5)あります。これから説明する名鉄車両の導入以前は、このような電車形の車両がごく普通に福井市内にまで入っていましたが、現在は、平常時の主役は旧名鉄車両に譲り、平日のラッシュ時にのみ活躍しています。
 扉の下側に、下へ降りるための折りたたみ式ステップが見られます。


 写真20-04 境界線(撮影日 11/06/05)

 写真20-05 普通の軌道線(撮影日 11/06/05)

 越前武生駅側から乗車して福井へ向かうと、新木田の交差点の南東側から福井鉄道線が道路上に侵入する形となり、以後は、田原町へ向かう本線、および市役所前から分岐する「ヒゲ線」の駅前線0.3kmは、すべて通常の路面電車の軌道敷となります。この通りは、フェニックス通と呼ばれています。 


 市内の軌道線へ写真20-03のような通常の電車形車両が入っていって、乗客はどうやって乗り降りするのか? 

 左の写真は、フェニックス通にある市役所前電停です。直線方向が越前武生方面、反対側が田原町方面です。交差点で左にカーブしている線路は、この本線と福井駅方面へ向かう0.3kmの「ヒゲ線」です。この交差点が分岐点です。
 この電停は昔から、たかさ25cm程度のいわゆる「安全地帯」形式のホームがありましたが、ここへ普通の電車がやってきたらどうなるのか?

 乗降客は、クハ200形などの乗降口から
下へ延びるステップを3段ほど乗り降りして乗降していました。
 これでは、乗降客に優しい都市交通とは言えません。 

 写真20-06 市役所前電停(撮影日 11/06/05)


 福井市中心市街地活性化

 おりしも、JR北陸本線の福井駅の高架化工事が進み(2005年には高架化が完了)し、駅前市街地の再編や東西市街地の総合的発展が求められると、福井市は、1999年に「福井中心市街地活性化基本計画」を策定し、駅前電車通りの活性化も含めて、福井電鉄も協力して市街地の再活性化に取り組むことになりました。 


 写真20-07 JR福井駅 2005(平成17)年に高架へ切り替え完了    (撮影日 11/06/05)

 写真20-08 駅前電停(撮影日 11/06/05)

 写真20-09 モ800形低床車(撮影日 11/06/05)

 左:駅前電停に近づく電車の先頭部分からの撮影。右:名鉄美濃町線から移籍されたモ800形803、田原町行き。


 公共交通機関と自動車の併存をどう進めていくかを考えるため、2001年10月から11月にかけては、社会実験も行われました。
 この実験では、駅前電車通りでは自動車を遮断したトランジットモールと自動車の通行を認めた上で歩道幅員を拡幅したミニモールの2パターンが検証されました。また路面電車のイメージを刷新するため、当時はまだ名古屋鉄道の現役車両であったモ800形を借りての運行も行われました。
 この実験から、歩行者のトランジットモールへの期待と、その反対の自動車を全く閉め出すことへのマイナスも考慮され、むしろ軌道を単線化した上で、歩道を整備するという解決策がとられました。0.3kmのヒゲ線という特殊性を考慮した決断でした。


 名鉄車両群の移籍

 こうして、町を挙げての工夫改善が進む中、福井電鉄の革新的な改良につながる機会が訪れます。
 2005年3月末までで名古屋鉄道の岐阜市内と周辺の600V線区の廃線が決定されたのです。同線区には、1980年導入のモ880形以来、多くの新型車両があり、それらは、軌道線用の車両とは言え、郊外の専用線を比較的高速で走行できる性能のよいものでした。
 この結果、つぎの20輌が、2005(平成17)年10月のモ802のの入線以来、翌2006年にかけて、次々と導入されました。

車両名

製造年 

 
モ880形  1980年  5編成×2=10両  880形の全車両の移籍  

モ770形

1987、88年  

4編成×2=8両 

770形の全車両の移籍  

モ802、803

2000年  

2両

モ801は豊橋鉄道へ 

 これによって、福井鉄道は低床車を基本とした運行(LRT化)へと大きく変化しました。 


 写真20-10 名鉄市ノ坪工場に停留中の廃線後のモ770形の2編成     (撮影日 05/05/08)

 写真20-11 上の写真と同じ日の市ノ坪車庫 赤色はモ880形 右はモ770形 (撮影日 05/05/08)

 写真20-12 右は名鉄塗装のモ880形、左は福井電車塗装に変更されたモ880形 (撮影日 05/12/05)

 写真20-13 塗装も切り替わって、福井へ運ばれる直前のモ880形の5編成     (撮影日 06/03/18)

 活躍する旧名鉄車両群と福井鉄道の工夫
 かくて、福井鉄道における旧名鉄岐阜市内線および周辺600V線区車両群の福井鉄道における活躍がはじまりました。
 以下にその様子を紹介します。私は、6月5日(日)に
越前武生駅から福井駅前まで乗りましたので、以下の写真は概ね時系列順にその順番で登場します。

 写真20-14 福井電車越前武生駅  (撮影日 11/06/05)

 写真20-15 一日乗車券

 1924年の開業以来ずっと武生新駅と呼ばれてきましたが、2010年に越前武生駅に改称されました。すぐ東側をJR北陸本線が通っていて、福井鉄道の南東の隣にJR武生駅があります。


 写真20-15 越前武生駅のモ770形3編成、ひとつは宣伝用のラッピングにくるまれています。(撮影日 11/06/05)

 青いラッピングは、コンビニのローソンの宣伝用です。
 中央の奥には、880形が1編成います。
 770形は、線用軌道上をより高速で走るために、若干の改造を行い、パンタグラフもシングルアーム式を2編成に1基という配置にしました。


 写真20-16 左:武生駅で出発を待つ803。これに乗って福井駅前まで行きました。(撮影日 11/06/05)
 写真20-17 右:越前武生駅手前の踏切に近づくモ774-775


 写真20-18 家久駅(撮影日 11/06/05)

 写真20-19 西山公園駅(撮影日 11/06/05)


 ※例によって、黒板をクリックしてください。答が現れます。


 写真20-20 ハーモニーホール駅(撮影日 11/06/05)

 写真20-21 赤十字前駅(撮影日 11/06/05)


 モ803は、快調に走ります。乗客の利便性を考えて、越前武生と木田四ツ辻の間に、この数年間に3つの駅が新設されました。 


 写真20-22・23 モ803の車内です。(撮影日 11/06/05)


  もうひとつ、福井鉄道に関するクイズです。
 これは、車両の低床化とは関係のない、福井鉄道ならではの工夫です。


 写真20-24・25 水落駅(撮影日 11/06/05)


 ※例によって、黒板をクリックしてください。答が現れます。


 左:写真20-26 西鯖江駅に入るモ880形(撮影日 11/06/05)
 右:写真20-27 江端駅に入るモ770形(撮影日 11/06/05) 


 さすが冬季に積雪の多い福井です。確かめるために福井鉄道に電話してみました。

「先日、そちらの電車に乗った岐阜市の社会科の教員ですが、ちょっと質問します。単線部分のすれ違い駅の両端にある鉄製の構造物は何のためのものですか?」

  「積雪を排除し、散水して、ポイント部分に雪が積もり凍結してしまうことを防ぐための覆いです。」 
  「JR北陸線や、えちぜん鉄道にはそういう施設はありませんが、福井鉄道独自のものですか?」 
  「この地域では、我が社の独自のものです。」

 そうえいば、廃線となった名鉄揖斐線も、一冬に数回は雪が降りましたが、こんなシェルターはありませんでした。 


 写真20-28・29 名鉄揖斐線在りし日の雪の美濃北方駅です。ポイントの凍結を防ぐために、可動部分に石油ランプが取り付けられています。雪が降ったらポイント一つ一つにランプを置くよりは、シェルターの方が合理的です。設置費用は別ですが。(撮影日 05/02/01)


 雪と言えば、こんな車両もありました。 


 写真20-30 花堂駅を過ぎると複線になります。対向してきた赤いラッピングの880形です。もちろんコカ・コーラカラーのラッピングです。

 写真20-31 見えてきたのは赤十字前駅です。

 写真20-32 赤十字前駅の待避線に、左の写真の電気機関車が止まっていました。
 この番号「11」の電気機関車は、デキ11です。前後に、黄色の除雪用の排雪装置を付けています。
                (撮影日 11/06/05)
 


 写真20-33・34 市役所前停留所、駅前に行くにはここでスイッチバックが必要です。(撮影日 11/06/05)

 左:越前武生方面停止したところです。この時は後部窓からの撮影です。まっすぐ延びている線路を今通ってきたところです。向こうに見える交差点は、大名町の交差点です。今通ってきたフェニックス通と駅前に通じる中央通の交差点です。
 右:まもなく運転手さんがこちら側に移動してきて、こちら側が前部となり、ポイントを渡って、駅前へ左折するために信号を待ちます。


 写真20-35 信号のスイッチです。「駅前」方面(左折)と「武生」方面(直進)です。 (撮影日 11/06/05)

 転手さんがこのスイッチを運押します。


 写真20-36 左折の←矢印(撮影日 11/06/05)

 写真20-37 モ880形とすれ違い(撮影日 11/06/05)


 福井鉄道のLRT化の試みが成功することと、慣れ親しんだ旧名鉄600V線区車両群の活躍を心から祈ります。


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