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各地の鉄道あれこれ14
 全国各地の鉄道の話題あれこれについて紹介します。

 各地の路面電車 その4 富山県高岡市万葉線

  路面電車という点では、富山県は全国唯一の県です。なぜなら、路面電車を運営しているのは全国に僅かに19事業体しか存在しなませんが、そのうちの、なんと3事業体が富山県にあるからです。2事業体がある都道府県は二つあります。北海道と東京都です。しかし、一つの都道府県に3事業体というのは全国で富山県だけです。
 ※19の事業体については、こちらで紹介しています。→各地の鉄道あれこれ11「各地の路面電車そも1」
 
 その三つとは、
 
@万葉線(高岡市内ー射水市内)
 
A富山地方鉄道富山市内線
 
B富山ライトレール(富山駅ー富山市岩瀬浜)
 です。

 このページはその一つ、富山県第二の都市、高岡市の中心部と外港の富山新港(伏木富山港新湊地区)を結ぶ路線、万葉線を紹介します。 




 富山県で路面電車を経営する難しさ

 最初に社会の学習です。
 このページと次のページで、富山県の路面電車を紹介するわけですが、富山県で路面電車を経営するのは、、なかなか大変なことです。
 黒板クイズにしてみました。その理由を考えてみてください。 


 ※例によって、黒板をクリックしてください。答が現れます。


 富山県は、世帯別の自家用自動車の普及台数(1世帯当たりの台数)が、1.71台で全国2位です。 
 右下の表を見ると明らかですが、路面電車が存在している都道府県(
で示した)は、比較的ランクが低く、それだけ電車が利用できる環境にあるわけです。
 15位以内には、僅か2県が入っているだけです。これから説明する富山県と、まだ取材していない福井県です。この2県が断然悪い条件下にあることが分かります。

 本題からはそれますが、岐阜県もこの時点で第4位です。この10年間、この順位は、年度によって少々は変動していましたが、基本的にはそのポジションは同です。電鉄会社と自治体が、よほどの努力をしなければ、路面電車は経営しづらい環境でした。2005年3月末の名鉄岐阜市内線・周辺路線の廃止は、さもありなんというところです。
 
 さらにデータを示すと、各事業体の経営する路線の「人口密度」と「輸送密度」は、次のようになっています。 


 人口密度、輸送密度とも、富山県の路面電車は苦しい状況にあります。本当によく頑張っています。 


 万葉線は2002年に新しく運行されました

 万葉線の母体となっている路線は、戦後に建設された富山地方鉄道の高岡-伏木港線、米島口−新湊線、そして、すでに戦前から運行されていた新湊−富山市西町間路線の3つです。
 その後、1部路線が廃止となり、また、残った路線は、県西部のバス路線を運行する
加越能鉄道に経営が移管されました。

 しかし、1970年代に入ると、自動車の普及によって利用客は減り続け、どこでも見られたように経営が悪化していきます。
 1980年には、高岡市と新湊市(現在は合併して射水市)の両市と議会等も加わって、「万葉線対策協議会」が発足しました。この時より、この路線は、この地域が大伴家持や万葉集とゆかりの深いことから、
万葉線という愛称で呼ばれることになりました。
 その後、いろいろな経緯を経て、
万葉線を第三セクターとして存続させることが決定し、2001(平成13)年には新しい運営会社として万葉線株式会社が設立され、2002年4月から新しい会社での運行が始まりました。
  ※万葉線株式会社のHPはこちらです。→http://www1.coralnet.or.jp/manyosen/index.html
 
 この路線の経営の基本は、線路・駅・土地などの「下」の部分を富山県が全面的に負担する、いわゆる「上下分離」方式が採用されました。


 写真14−01 万葉線高岡駅前停留所           (撮影日 10/05/01)

 JR高岡駅の北口に万葉線の乗り場があります。


 写真14−02 万葉線高岡駅前停留所           (撮影日 10/05/01)

 低床車MLRV1000形が停車しています。


 写真14−03 広小路電停をのぞむ           (撮影日 10/05/01)

 高岡市内部分は全くの路面電車となっていますが、駅前から広小路までは、単線です。写真の広小路からは、複線となり、また米島口から専用軌道に入ると、単線となります。


 写真14−04 本丸会館前停留所に近づくMLRV1000形           (撮影日 10/05/01)

 道幅はそれほど広くはなく、複線化は簡単ではありませんが、今後の運行本数の確保からすれば、ぜひ複線化したいところです。


 写真14−05  米島口の車両基地          (撮影日 10/05/01)

 米島口にある車両基地で出番を待つMLRVや7000形の車両。 
 左から二つ目の7072は、1967年配備の古い車両ですが、「万葉線を愛する会」が一般公募したしたデザインの「アニマル電車」となっています。正面はネコの顔です。


 写真14−06  MLRV1002(撮影日 10/05/01)

 写真14−07 MLRV1001(撮影日 10/05/01)

 写真14−08  MLRV運転席(撮影日 10/05/01)   写真14−09  MLRV室内(撮影日 10/05/01)

 MLRV1000形は、2004(平成16)年に最初の2編成が導入された新潟トランシス(旧新潟鐵工所)製の新型低床車両です。現在では、6編成が運行されています。
 30座席80人乗りで、車内の雰囲気もとてもいい感じです。
 MLRVとは、下の写真14−10にあるように、
Manyousen Light RAIL Vehicle の略です。愛称は、「アイトラム AI−tram」です。
 正面下部のライトトライとの中央には、高岡の伝統工芸品である螺鈿細工によって作られたシンボルマークが取り付けられています。車両価格は、2億2000万円と高価ですが、国・県・高岡市・射水市から多額の補助金が投入されています。

 写真14−10 正面上部 (撮影日 10/05/01)

 写真14−11 正面下部(撮影日 10/05/01)


 写真14−12 終点 越の潟           (撮影日 10/05/01)

 万葉線の路線延長は、僅か12.8kmです。終点は、富山新港に面した越の潟です。
 写真は、越の潟駅に近づくMLRV1003です。
 後は、富山新港の東西をつなぐ新しい橋です。
 この越の潟の一つ手前が海王丸駅です。(→高岡・富山・宇奈月旅行01


 富山県は、人口密度、自家用自動車普及率のどちらから考えても、何もしないで放置していては、路面電車が生活の足とはなりづらい条件下にあります。
 しかし、県や自治体が連携し住民の協力も得て、地域住民、特に高齢者の足として路面電車を整備維持する動きを、県都富山市と第二の都市高岡市で進めてきました。

 次のページでは、富山市の状況を紹介します。 


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