アメリカ海軍は、太平洋と大西洋の両洋に軍艦を展開しなければならず、それには、パナマ運河を利用することが不可欠です。
ところが、パナマ運河は、33.5m以上の幅の艦船が通過することは不可能なのです。
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同じ運河といってもスエズ運河とパナマ運河はずいぶん違います。
スエズ運河は、海面と同じ高さの水路を通っていくだけです。ところが、パナマ運河はスエズ運河とは違って、運河の水面自体に標高差があります。最も高いガトゥン湖の水面は海抜26mです。この標高差を閘門を通って水面調節をしてあがりさがりして通過しなければなりません。閘門の水路幅は、そう簡単には拡幅できません。 |
16インチ(40cm)砲を積載する日本の長門型、アメリカのコロラド型(コロラド、メリーランド、ウエスト・バージニア)は、いずれも、2連装砲塔を4基配備して、合計8門の主砲をもっています。
しかし、46cm(18インチ)砲を積載する場合は、敵の大砲に対する防御甲鈑を合理的な分量にするためには、2連装4基=8門ではなく、3連装3基=9門とすることが必要となってきます。
46cm3連装砲塔を積載するためには、船体の幅は33.5mでは狭すぎるのです。
無理に作れば作れないことはありませんが、防御力が弱くなり、重くなる船体のわりに艦幅せまいため喫水が深くなり速度が早くなりません。
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<用語解説> |
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防御甲鈑 |
戦艦は、通常、自艦と同じ主砲をもつ敵艦と対戦し、その弾丸が主砲に命中しても、致命的な事態にならないように設計されます。いくら大きな大砲を積んでいても、敵の弾丸が主砲塔を貫いて弾薬庫に入れば、大爆発が起きて一挙に沈没ですから。
大和の場合、46センチ主砲塔の砲塔前面の甲鈑は、なんと厚さ650mm特殊な鋼材でできていました。
下の写真は第2主砲塔の前面部分です。
この角度からの写真は、まるで本物と見まごうばかりの迫力です。
しかし、これは尾道の大和セットの写真ですから、実際には鉄骨と薄い鉄板と強化プラスチックと木材でできています。(^.^) |
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かくて、日本海軍は、あえて46cm主砲を9門装備する巨大戦艦の建造に踏み切ったのです。
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