この10分の1模型は、大和ミュージアムと呉市の南にある音戸の山本造船という造船会社、そして、博物館設計業者の3者によって、苦労の末作成されました。
本物の造船会社がかかわっている理由はおわかりですね。
実際の長さが263mもある大和ですから、10分の1と言うことは、模型とはいえ、26m以上もあります。名前は「模型」でも、実態は、もう立派な船舶です。厚さ6mmの鋼鉄の船です。
実際に、10分の1大和は、2003(平成15)年8月に起工され、2004(平成16)年2月に無事、「進水式」を行っています。
再現には、次の2点が問題となりました。
10分の1の模型であるため、実物で1cmのものでさえ、模型では1mmで表現できる。逆に言えば、大和の本当の姿を1cm単位で確定しなければならない。
大和の「実像」がわかったとしても、それを、模型でどれぐらい忠実に表現するか。
1は、プラモデルのような、700分の1、500分の1、せいぜい200分の1なんて言うスケールとは比べものにならないほど、大和の詳細な部分の復元が必要と言うことです。
このため、手にはいるだけの図面等が集められたほか、各種の写真、さらには、沈没した大和を海底探索によって「発見」した際に撮影された現実の大和の映像も利用されました。
2は、たとえば、甲板の板ですが、「合板をはって、板目を書く」という作り方でも、傍目には一応本物らしく見えます。しかし、実際に1枚1枚の木を貼っていかなければ、正確な再現にはなりません。
実際に、予算と手間の関係から、当初造船所側は、甲板の板は、合板の使用を主張しました。しかし、博物館側は、あくまで板張りを主張し、実現されました。
ただし、本当の戦艦大和には台湾製の檜が使われましたが、模型には使われていません。
これをそのまま使うと、木目だけが実際の大きさになってしまうからです。
このため、色合いが似て、木目もちょうどいいぐらいの、タモの木が使われたのです。
その他、10分の1模型の作製に関する「物語」は、初代大和ミュージアム艦長戸高一成氏がその著書に書かれています。とても面白い本です。新書版で価格も手ごろですから、呉へ向かう列車の中で予習に読んでください。
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戸高一成著『戦艦大和 復元プロジェクト』(角川書店 2005年) |
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