西濃鉄道石灰石専用列車と
大垣赤坂金生山13
 通称「矢橋ホキ」って知っていますか?貨物列車の1編成から産業と故郷を考えます。
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 名古屋臨海鉄道1 

 矢橋ホキは、笠寺駅から名古屋臨海鉄道に入ります。まず名古屋臨海鉄道と笠寺駅について説明します。


 名古屋臨海鉄道とは

 名古屋臨海鉄道は、JR笠寺駅で東海道線に接続する貨物専用の鉄道で、東港駅を中心に、南港線・名電築港線・昭和町線・汐見線と総営業キロ数20.5kmの小さな鉄道会社です。(金生山の麓の西濃鉄道よりは営業キロ数があります。)

 路線は以下の地図をご覧ください。が名古屋臨海鉄道の路線です。

笠寺 ― 東港 3.8km  

東港 ― 名古屋南貨物 6.6km

 

東港 ― 昭和町 1.1km

名古屋南貨物 ― 知多 4.4km

 

東港 ― 汐見町 3.0km

東港 ― 名電築港 1.3km

上の地図は、グーグル・アースGoogle Earth home →http://earth.google.com/)の写真から作製しました。

 
 もともと昭和30年代前半までのこの名古屋南部の埋め立て地(汐見埠頭・昭和埠頭)には名鉄の所属線が引かれており、そこの工場の荷物は築港線と名鉄線を経由して、熱田駅から国鉄東海道線へと運ばれていました。
 ところが、さらに東南部へと埋め立て地が新たに開発され工場群が建設されると、従来のルートでは輸送力の限界が見えてきました。
 その結果、1965(昭和40)年に
名古屋臨海鉄道が設立され、新たに東港駅から南港駅に至る路線と東港駅から笠寺駅に至る路線が新規建設され、1968年に開業しました。その後、南港駅からさらに南に延伸され、1969年には知多駅まで開業しました。

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 名古屋南貨物駅

 いくつかある駅のうち、まず、名古屋南貨物駅を紹介します。
 
名古屋臨海鉄道南港線は、名古屋南貨物駅を超えて知多駅までつながっていますが、南貨物駅-知多駅間は、現在は時刻表で見る限り、1日1本しか運航されていません。したがって、南貨物駅が事実上の南の拠点です。


 写真13-01    名古屋南貨物駅全景                       (撮影日 09/04/04)

 南から北を撮影したものです。
 右端の植込みの向こうを国道247号線、通称知多産業道路が走っています。この撮影場所は、産業道路の横須賀インターチェンジのすぐ西側の高架橋です。さらにこの西側には、太田川の河口部があり、マリーナがあります。


 写真13-02   駅社屋 (撮影日 09/04/04)

 写真13-03  コンテナ群 (撮影日 09/04/04)

 だだっ広い駅の中央部に青いコンテナがたくさん積まれています。これは何でしょうか?


 写真13-04 トヨタのコンテナ(撮影日 09/04/04)

 写真13-05 知多駅方面 (撮影日 09/04/04)

 青いコンテナの正体はトヨタのコンテナでした。これについてはこのページの後半でまた出てきますので覚えておいてください。
 右の写真は、写真13-01を撮影した場所と同じ高架橋から反対側の南方向、知多駅方面を臨んだ写真です。  

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 笠寺駅は面白いです

 次は矢橋ホキが名古屋臨海鉄道の路線に入る拠点駅の笠寺駅の紹介をします。
 この駅は旅客の駅としてはごく普通の駅ですが、この貨物線との接続駅であり、また10本ほどの貨物待避線があるため、普通の駅では見られない「面白いもの」、いろいろな車両や列車が見られます。


 写真13-06 笠寺駅全景                    (撮影日 09/04/04)

 北側の歩行者用跨線橋から撮影しました。たくさんの線路があるだけで、なんとなくわくわくする人は素朴な鉄道好きの方です。
 いちばん左が東海道線上り本線、3本目めが同下り本線です。その西側(右手)に貨物用の待避線がたくさん敷かれています。東海道線下りホームのすぐ西側の線路は、2008年の7月に来た時にはちゃんとあったのですが、半年後の2009年4月には撤去されつつありました。 


 写真13-07 踏切から                        (撮影日 09/04/04)  

 写真13-06と同じ北側からの駅の全景ですが、これは踏切からの撮影です。こんなところに踏切があるのも、撮影には最適です。

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 いろいろな車両が行きかいます

 名古屋臨海鉄道の路線に入る前に、笠寺駅の紹介をします。
 この貨物船との接続駅であるため、普通の駅では見られない面白いものが見られます。


 写真13-08    こんな大きなホッパー貨車もやってきました       (撮影日 08/07/19)

 太平洋セメント株式会社の35トン積みの「フライアッシュ及び炭酸カルシウム専用車」です。三岐鉄道東藤原駅衣浦臨海鉄道碧南市駅間で運用されています。形は違いますが、矢橋ホキとおなじ35トン積みです。
 この列車は、
中部電力碧南火力発電所からフライアッシュ(石炭灰)を積んで、11:08に衣浦臨海鉄道の碧南市駅を出発し、衣浦港をわたって11:30に武豊線東浦駅から武豊線に入り、さらに大府駅から16:05に東海道線へ入り、この笠寺駅通過は16:23です。
 このあと16:50に稲沢に入ります。そこで少しお休みし、19:07に稲沢を出発し、東海道線名古屋駅から関西線に入り、20:53に関西線富田につきます。そこから一晩休んで朝の05:44三岐鉄道に入り、石灰石の産地東藤原には、06:41に到着という運航です。


 写真13-09    これは何でしょか                     (撮影日 09/04/04)

 写真13-10    上の写真とこれは自動車積載専用コンテナです     (撮影日 09/04/04)

 これは1996年に貨車としてははじめて、鉄道友の会からローレル賞をもらった自動車運搬専用コンテナです。トヨタ自動車の完成車両を米子や新潟へ運んでいます。


 写真13-11    これは大同特殊鋼の専用コンテナです         (撮影日 09/04/04)

 新日本製鉄名古屋製鉄所の南隣りには大同特殊鋼の知多工場があり、名古屋臨海鉄道によって輸送されています。


 写真13-12    この黄色い車両は何でしょうか?             (撮影日 08/07/19)

 これは名古屋の南にある尾頭橋駅のホームに近づく非常に派手な黄色の車両です。これは何でしょうか?JR東海が2008年新造したピカピカの車両です。  


 写真13-13   笠寺駅に停車する黄色い車両               (撮影日 08/07/19)

 上の写真13-12の車両も、私が遅れて到着した笠寺駅に停まっていました。これは実は、新型のレール運搬車両でした。
 レールの運搬については、こちらに面白い話を掲載していますので、ご覧ください。
→目から鱗の話「レールは曲がる曲がらない」

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 ようやく矢橋ホキが登場ですが・・・・真打ちはこれですね

 矢橋ホキ1番列車は、10:48に笠寺に到着し、11:15には名古屋臨海鉄道線に入り、11:58に新日本製鉄名古屋製鉄所につきます。石灰石をおろしたあと、再び12:57に臨海鉄道に戻り、美濃赤坂・乙女坂へ向かう、空荷の3番列車となります。この列車は、13:45には笠寺にやってきます。
 2009(平成21)年に笠寺に行った時は、まずこの3番空荷列車の笠寺到着を撮影しようと考えました。
 ところが、撮影しようと東海道線下りホームで待っていると、まずいことが起こりました。
 13:33に、とても長大なコンテナ列車がEF210-134号電気機関車に牽かれて、ホームのすぐ隣の待避線に入ってきて停車してしまったのです。
 矢橋ホキの正確な停車線路は知りませんでしたが、このままでは、矢橋ホキの
13:45の到着時には、そのlコンテナ貨物列車の向こう側に隠れて、ホームからは見えない状況となってしまうことは確実でした。
 あわてて、ホームから出て、跨線橋の上に行きました。


 写真13-14   笠寺駅にやってきた3番列車空荷              (撮影日 09/04/04)

 雨の跨線橋から撮影した矢橋ホキ2番列車空荷と、少し前に到着し停車中の長編成のコンテナ列車です。左上・左下の斜めの黒い影は跨線橋の落下防止用の金網です。あわてて撮影したため、避ける工夫をミスりました。見苦しくてすみません。 


 ここで黒板クイズです。
 いえ、矢橋ホキに関するクイズではありません。この横にいる長大なコンテナ貨物列車についてです。


 ※例によって、黒板をクリックしてください。答が現れます。

 写真13-15  東京を疾走するトヨタ自動車専用コンテナ列車         (撮影日 08/08/09)

 東京の京浜東北線上中里駅東側の貨物線を疾走するトヨタ自動車専用コンテナ列車です。この写真は、上中里駅のホームから撮影したものです。
 
このコンテナはトヨタが独自に開発したもので、2006年秋から走り始めた貨物列車です。名古屋周辺で製造された自動車部品を集めて、名古屋臨海鉄道名古屋南貨物駅でコンテナに積み込み、岩手県盛岡市の盛岡貨物ターミナルへ鉄道輸送します。そこからトラックで、トヨタグループの関東自動車工業岩手工場(岩手県金ヶ崎町)まで運ばれます。
 自動車会社のトヨタが鉄道輸送を使うというのもおかしなものですが、従来のトラックやカーフェリーを使った方法に比べ、それぞれ年間CO
2排出量を1万トン及び2000トンも削減できるそうです。
 名古屋南貨物駅を22:50に出発し、盛岡は翌日14:02着です。上中里駅横通過時刻は、05:50頃です。

 この写真を撮影した経緯は、「目から鱗の話「各地の鉄道あれこれ03 東京駅と踏切5題 その3」にあります。   

 写真13-16  笠寺駅貨物待避線に停車中のトヨタ自動車専用コンテナ列車。   (撮影日 09/04/04)

 EF210-134に牽引されて笠寺駅に着いたということは、このコンテナは名古屋臨海鉄道ではなく東海道線を走ってきたということになります。したがって、このコンテナの発車駅は、岩手県盛岡駅ということになります。前日の21:30に盛岡ターミナルを出発し、笠寺駅着は14:33です。 


 写真13-17       (撮影日 09/04/04)

 写真13-18        (撮影日 09/04/04)

 トヨタコンテナのすぐ西側の線路に矢橋ホキ(空荷)は停車しました。
 やがてEF210-134はコンテナから離れます。


 写真13-19       (撮影日 09/04/04))

 写真13-20        (撮影日 09/04/04)

 矢橋ホキ(空荷)を新日鉄から牽引してきた2台のディーゼル機関車が南側へ移動していきます。本来、空荷の矢橋ホキを牽引するのに2台の機関車は必要ありません。
 2台やってきたということは、帰りに二つの列車を牽引していくということです。


 写真13-21       (撮影日 09/04/04)

 写真13-22        (撮影日 09/04/04)

左:

先にトヨタのコンテナが、ND機関車の1台に牽引されて笠寺を去りました。

右:

EF210-134は単機で名古屋方面(たぶん稲沢かな)へに向かいました。矢橋ホキをけん引するのは、EF210ではなく、EF65です。
実は、時間的な順序からいうと、EF210-134が笠寺を離れる前に、 上の写真13-11の大同特殊鋼の専用コンテナを牽引して、EF651138がやって来ました。これが次に矢橋ホキ3番列車空荷を乙女坂へ牽引していくはずです。
ND機関車の残るもう1台は、その大同特殊鋼の専用コンテナを牽引して南港線へ向かいました。

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 写真13-23 EF65機関車が矢橋ホキ空荷を牽引する準備に入ります     (撮影日 09/04/04)

 写真13-24       (撮影日 09/04/04))

 写真13-25        (撮影日 09/04/04)

 EF651138が矢橋ホキの牽引準備にはいります。


 写真13-26       (撮影日 09/04/04))

 写真13-27        (撮影日 09/04/04)

 機関車が矢橋ホキに接続し、機関士が乗り込んで準備完了です。


 写真13-28 出発                            (撮影日 09/04/04)
 14:22、矢橋ホキ3番列車空荷が、笠寺駅を出発します。

 名古屋臨海鉄道や笠寺駅のいろいろをお話しする間に、話がややこしくなってしまいました。
 ここで整理整頓します。
 このページにいたる初めの話題は、乙女坂駅を出発した石灰石を積んだ矢橋ホキが、大垣-穂積-西岐阜-岐阜-稲沢-名古屋と過ぎて、この笠寺駅から名古屋臨海鉄道に入るというものでした。
 次ページで、その話題の本体をお話しします。


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