A |
「先生が目指しておられる地歴公民科の授業というのはどういうものでしょう。」 |
私 |
「簡単に説明するのは難しいですが、あえて、スローガン風に簡単にいいましょう。
『暗記科目といわせない地歴公民科の授業』、『生き字引ではなく生き字引き引きを育てる授業』です。」 |
A |
「最初の方ですが、なるほど歴史や地理というと『暗記科目』というイメージがあります。」 |
私 |
「学習というものはどの教科であっても、知識を覚える部分と、思考力などによって解決をしていく部分があると思います。国語だって文法はあるでしょうし、数学だって、現実には、二次方程式の根の解法は暗記しなければなりませんし、正弦定理や余弦定理も暗記していなければ問題は解けないはずです。」 |
A |
「そうであるにもかかわらず、地歴公民科だけが、暗記科目と言われてきたと。」 |
私 |
「その原因は、思考力や判断力や表現力を使わなければならない場面がいくつもあるのに、教師が全部説明して、一方的に暗記しなさいという授業を展開してきたことによります。これを打破することが目標の第1です。」 |
A |
「そのためにはどうするのですか。」 |
私 |
「誤解せずに慎重に言わなければなりませんが、まずは、基本的な知識の理解です。これは暗記です
旧国名に日向の国と豊前の国というのがあることを知っていなければ、JR九州『日豊本線』というネーミングを聞いても何の世界も広がりません。基礎となる知識のベースを作ることが第1です。
それができたら、いや正確にはそれを作る過程においてもそうですが、関連性のある知識の類似性・違い指摘、具体的な知識の確認、比喩的な話(たとえ話)、事項の普遍性や転移するパターンの認識など、生徒が考えて気が付いて、『うん、うん、分かる、分かる』と納得できるような授業の内容を工夫しなければなりません。
その結果として、生徒が知識のネットワークを作っていくことの重要性に気付き、それを作っていけることや、そのことを面白いと感じることが授業の目的の一つです。」
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A |
「クイズとか現物教材とかは、そのためのものですね。」 |
私 |
「そうです。
このHPではクイズといっていますが、あれは実は授業中の発問集です。しかも、ちゃんと考えるための発問集です。
テレビの番組で言うのなら、クイズタイムショック的な「脊髄反射」で答える問題ではなく、昔の大橋巨泉の「クイズダービー」のような、知恵をしぼって考えるタイプの質問集です。
それから、現物教材は、ただのマニア的な収集ではなく、『生徒が驚く、目を輝かす』ものが大事です。煩わしくて、細かなものは、あまり効果はないと思っています。」 |
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A |
「最初に言われたスローガンのもう一つ、『生き字引きではなく生き字引き引きを育てる授業』というのは、どういうことですか?」 |
私 |
「どんな質問にも耐えうるような豊富な知識量をつくるため、膨大な知識の完璧な暗記を求めるのが、『生き字引き』を育てる授業です。
『生き字引き引き』というのは、分からないことがあったら、辞書を引いて自分で調べて答えを見つけるという人間です。
現代では、『字引を引く』というのは死語ですが、今流なら、インターネットで上手に検索する力と言っても良いでしょう。
現実に生徒相手に試してみると分かりますが、同じヤッフーの前に座らせても、ある程度の知識と検索できる知恵がある生徒とそうでない生徒とでは、必要な情報を得られるかどうかで大きな違いが出ます。
先に述べた、『暗記ではない』ための学習ができていれば、生徒には自ずと知識のネットワークを作る力や意欲が備わっており、後はそのためのスキルを伸ばせば良いことになります。」 |
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A |
「視点を変えます。
地歴公民科を教える場合には、その先生の思想や世界観が出てしまいますが、いかがですか。」 |
私 |
「21世紀を生きる児童生徒には、一つのイデオロギーを「絶対」なものとして教えるより、複数の価値観、複数の評価尺度(スケール)を身に付けさせる方が重要だと思っています。
高校1年生に、『江戸幕府第8代将軍吉宗は、よい将軍ですか?』と質問すると、多くの生徒は『よい将軍』と答えます。
高校では、そこで止まらず、『では誰にとってよい将軍だったのか』と質問を重ねます。
そこで生徒諸君は、考えなければなりません。
『良い悪いはどれかスケールがあって判断されるもので、スケールが変われば良い悪いも変わるものである』ということをです。
太平洋戦争を教える場合も、同じことが言えると思います。」 |
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A |
「授業で身に付けさせるなければならないことは、いろいろあると思いますが、他にはどのようなものを意識して教えられますか?」 |
私 |
「知識の理解を中心とした学習をレベル1、思考力・判断力・表現力を中心とした学習をレベル2とすれば、さらに、広い意味で知的再生産活動のノウハウを学習=レベル3、さらに、自分の在り方生き方につながる学習=レベル4と、もっともっと学ばなければならないこと、教えるべきことはたくさんあります。
理屈も分からずに暗記しなさい、という学習から見れば、ずいぶん高度な学習が実現できるのです。」 |
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※詳しい説明は下表を参照ください。ただし、これはあくまで私案です。 |