現物教材 世界史2

近代004  フランスの処刑台ギロチン (模型)           | 目次へ

 ギロチンは、1792年にフランスで実用化されました。ギロチンという、日本語としていかにも処刑台としてふさわしい?名前は、フランスの医学博士ジョセフ・イグナス・ギヨタン(Gillotin)のギヨタンの部分を英語読みして生まれました。
 最もこの処刑台をギヨタンそのものが発明したのではありません。
 彼は、革命が勃発した直後の1789年の国民会議で、
人道的な立場から苦痛を伴わない処刑の必要性を提案しました。というのは、それまでのやりかたでは、時にして処刑時に「苦痛」が伴ったからです。
 それまで長くヨーロッパでは処刑は、なたかまさかりのようなもので首を刎ねるやり方でした。イギリスのピューリタン革命の時のチャールズ1世の処刑はまさしくこのやり方でした。ところが、処刑人の技術的未熟さから、うまく一度で首が落ちずに、首に刺さったまさかりをもう一度引き抜いてうち下ろすとか、それはそれは処刑される方もする方も凄惨な処刑が時々見られたのです。
 余談ですが、日本の江戸時代の処刑人は、首の皮一枚残して切り落としたという噂ですから、伝統芸の日本刀は、処刑という点からも世界に冠たるもの?でした。

 そこでギヨタン博士は、もっと人道的に苦痛を伴わないやり方を提案し、その研究に入りました。
 彼は、死刑執行人のプロシャルル・アンリ・サンソンに相談し、サンソンは知り合いのピアノづくりのドイツ人技術者トピアス・シュミットに話を持ちかけました。このシュミットが基本設計したものが、このギロチンです。
  できあがった処刑台、その時点ではまだ
国王だったルイ16世に提案されました。国王はこの処刑具を評価し、落下する刃を斜めにした方が効果的であると言う提案をしたと伝えられています。国王はこの処刑台の製作に予算を与え、かくて、1792年4月25日に、ギロチンはデビューしました。
 できた当時は、ルイ16世の名を取って、「ラ・ルイゼット」または「ラ・ルイゾン」と呼ばれていましたが、のちに、現在のようなギロチンという名前が定着しました。
  下の写真は、
東京の明治大学刑事博物館の中にある、原寸大のギロチンの模型です。
  ※明治大学刑事博物館 


 この2枚の写真は、いずれも東京の明治大学の別館にある、明治大学刑事博物館の所蔵品ギロチンです。

左の写真は、処刑される人を載せる台の側から見た全景です。

右の写真は、処刑される人の首を入れる穴と、刃の部分の拡大写真です。


 下は、私が見よう見まねで自作した、手製のギロチンです。本物どおりにまねをするというのは難しいので、基本的な原理は同じですが、細部はオリジナルです。日本広しといえども、授業中に手製ギロチンを登場させる教師は自分ぐらいだろうと思います。(こんなことで自慢してどうする)
 刃の部分を除いては、普通の「日曜大工」技術があればできますので、挑戦してみてください。

 




正面から見たギロチン模型 

横から見たギロチン模型 

ギロチンの刃の部分の拡大  


  ギロチンの刃の部分と刃を滑りおろす滑車の部分。木工技術上の一番難しい点は、刃を滑らすための支柱の内側の溝づくりです。専門的な道具ですが、溝を掘るカンナを使えばうまくいきます。刃をつるすヒモ(または鎖)は、上部横木中央の第一滑車と右端の第二滑車で支柱の横へ回され、支柱の根本に留められ仕組みです。中央写真の丸い輪で支柱に留めてありますから、はずせば、刃は落下します。
 刃は最も難しい部分で、金属加工技術が必要です。切断した金属をグラインダーで削って刃先の部分が作ってあります。 


 授業では、もちろんフランス革命のクライマックス、国王・王妃の処刑、ジャコバン派の恐怖政治のあとのテルミドールのクーデーターの所で登場します。  見せるだけでは面白くありませんから、キュウリかニンジンを「処刑」します。ちょっと太いニンジンだと、切り落とせずに残ってしまい、とても残酷な処刑になります。(+_+)


 このギロチン模型のテレビデビューについては、こちらどうぞ。

 ところで、ギロチンは、本当に「人道的」な処刑器具なのでしょうか。
 「人道的」とは、処刑される方がいかに「苦痛」を感じることなく絶命するか、見ている方が、「残酷さ」を感じることなく処刑が終わるかということだと思います。

 前者の点では、ギロチンは瞬時に間違いなく絶命にいたりますから合格でしょうが、後者の点では、激しい血しぶきが上がるでしょうから、何ともいいがたいものがあります。
 もっとも、映画「グリーンマイル」に登場したようなアメリカの「電気椅子」も、あまり人道的とは言えませんから、どちらにしても処刑装置というのは、人道的という観点からは、「少しはまし」程度の評価しかできないものでしょう。

 ところで、ギロチンは本当に瞬時に絶命するかを、のちの時代に実験した人物がいます。
 ある死刑執行人は、これから首を落とされる囚人に提案をしました。
 「
お前の首が落ちたあともまだ意識があるのなら、3度瞬きをしてくれ。
 その囚人は、何と2度瞬きをしたというのです。本当かどうか確認はできませんが、エピソードとしては一級品です。

 フランスは、1981年に死刑を廃止しました。この時、正式にギロチンも廃止されています。