海上自衛隊のイージス護衛艦「きりしま」(7250トン)が16日朝、神奈川県の横須賀基地からインド洋北部のアラビア海に向け出航しました。
いろいろ反対のある中、ついに「出撃」です。
政府の発表では、テロ対策特別措置法に基づき、米英艦への洋上給油を担う海自補給艦を警護するのが直接の任務ということです。しかし政府は、さらに、米軍がイラク攻撃に踏み切った場合、米空母が集結するペルシャ湾で「きりしま」に、日本タンカーの護衛などに当たらせる海上警備行動を検討しているとのことです。
御存知と思いますが、海上自衛隊の護衛艦がインド洋に派遣される理由は、2001年9月11日のニューヨークWTCビルのテロ事件の報復として、アメリカ軍が進めているアフガニスタン攻撃に、日本が協力していることによります。上述のテロ対策特別措置法は、海上自衛隊の派遣を可能とするために昨秋制定されたものです。
現在、インド洋には呉の第4護衛隊群のDDH「ひえい」とDD「はるさめ」と補給艦「とわだ」が派遣されています。
※「きりしま」も含めて、海上自衛隊の護衛艦については、現物教材「海上自衛隊護衛艦セット」参照
「きりしま」はこのうち、「ひえい」と交替するのですが、DDH「ひえい」とイージスDDG「きりしま」とでは、本来護衛艦としての機能が全く違います。
「きりしま」が搭載するイージスシステムは、探知範囲約500キロの高性能レーダーで200以上の目標を捕捉し、10以上の目標をミサイル誘導で同時攻撃できる優れものです。米軍との高度のデータ交換や共同作戦も可能であることはいうまでもありません。
もし対イラク戦争になった場合、「きりしま」が十分にその能力を発揮して、
米軍に協力することは、普通に予想されることです。憲法上禁止されている「集団自衛権の行使」に、敢えて踏み込もうとしているという反対論が起こるのは当然です。
政府は、「艦艇のローテーションや居住性、イージス艦の情報収集能力が隊員の負担を軽減すること」などを強調して、今回派遣に踏みきりました。
しかし、憲法論議については、十分議論のないまま、強引な出港となりました。
防衛庁は「米軍とは、直接武力行使につながる情報は交換しない」と説明していますが、それは密室の中の話、核兵器の持ち込みと同じで、極めて黒に近い灰色と思われても致し方ありません。
日本は、55年体制の崩壊以降、いろいろなことをなし崩しで進めてきた観がありますが、ここでまた、一つ進めた気がします。
このニュースは、授業では政治・経済や現代社会、日本史、世界史の授業の大きな要素にしなければなりません。
話は変わります。
イージス艦と言ったら、福井晴敏著『亡国のイージス』(講談社1999年)を紹介しないわけにはいきません。
私が、この5年間に読んだ本の中で一番面白かった本です。
舞台は海上自衛隊と護衛艦、背景は日本・アメリカ・朝鮮半島の政治という、ハードボイルドな小説ですが、謎解きミステリーとしても最高傑作です。
そして何より、今の日本が一番欲しがっている、「頑張って生きようよ。きっと明日はいい日が来るさ。」というトーンが全編に溢れた作品なのです。
元同僚の国語のO先生(女性です)の評です。
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何というか、全編、生きること投げちゃだめだっていう励ましなんですね。
少々説教くさいかなと思うけど、でも説教するおじさんがやはり家庭問題に悩んでるってとこが、いかにも現代的で、共感してしまいます。
実は告白しますが、この小説のラストの場面のイメージは、私にこのサイトのタイトルを「未来航路」とさせるきっかけとなったというものです。
映画「K19」を見ました。
ケネディ、フルシチョウフ時代の米ソ冷戦まっただ中に起こった、ソ連原子力潜水艦K19の物語を、何と当時の敵国のハリウッドが映画化したものです。
原子炉部品の杜撰な管理の結果生じた原子力潜水艦の冷却水漏れ事故。
東西対立の舞台北大西洋で原子炉爆発が起これば、米ソ両国の核ミサイルの発射へと発展か・・・・・・。という緊張した場面での、潜水艦艦長(主役はハリソン・フォード)と乗組員の必死の努力を描いたものです。戦闘シーンはありません。ひたすら、潜水艦とソ連軍の内部を描いた物語です。
ロシア語ではなく、ロシア語なまりの英語のセリフ(これは実に面白いものです)という点がちょっと滑稽ですが、いい映画です。お薦めです。
イージス艦「きりしま」には、艦長以下250人の日本国の自衛官が乗って、任務に就いています。
どうぞご無事で。
どうぞあなたがたが、戦争になぞ巻き込まれませんように。
心から祈っています。 |