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 本編は、前回で終わりましたが、今回は番外編を追記することになりました。
 理由はといいますと、タイミングよくというか、悪い予感が当たったというか、後継空母の問題が明らかになったからです。

 新聞各紙によると、2005年10月28日午前、アメリカ海軍は次のように発表しました。

アメリカの発表の原文(英文)は、たとえば、Commander UA Naval Force、Japan の記者発表資料などで確かめられます。 こちらです。


「2008年に退役する
航空母艦(空母)キティホークにかわって、ニミッツ級の9隻の空母のうちの1隻を配置し、横須賀を母港とする。(中略)
 西太平洋地域の安全保障環境は、最も能力のすぐれた艦船を前方配備することを日増しに必要としている。この配備は、海軍や統合部隊の迅速な対応を可能とし、またこの艦船に不測の事態に対応する強力な攻撃力と作戦指揮能力を発揮させることになる。」
 
 横須賀には、1973年以来アメリカ第7艦隊の空母が「配備」されてきました。以下のとおりです。


 <横須賀を母港としたアメリカ第7艦隊の空母>

空母名

期間

ミッドウエイ

1973〜1991

インディペンデンス

1991〜1998

キティホーク

1998〜2008(予定)

 横須賀港最大の第6号ドックの南側が、第7艦隊の空母の停泊桟橋となっています。第6ドックのすぐ南側の第12バースは、現在拡張中で、将来は空母専用桟橋となると思われます。

 次の写真は、1983年のある日に、第12バースに停泊している
空母ミッドウエイです。
 
 空母の斜め上が、空母も楽々入渠できる、巨大な第6号ドックです。ここでは、太平洋戦争中、大和型の3番艦の
信濃が作られました。


上の写真の空母部分の拡大図です。
 ※この写真は国土交通省ウエブマッピングシステムの国土画像情報から入手しました。(説明はこちら。
  


 今回の発表では、次の空母が何になるかは分かっていませんが、何にしても、「ニミッツ級の9隻」のうちの1隻ということは、これまでの3隻と違って、4隻目は初めての原子力空母の母港化ということになります。
  
 アメリカ海軍の発表に対して、横須賀市の蒲谷亮一市長は、記者会見で「失望した」と発言し、つよい反対の態度を示しました。『神奈川新聞』によれば、

「蒲谷市長は、「納得できない」と反発。同日夕に、外務省で矢内正太郎事務次官と面会し、「配備の再考」を要請した。
 また両政府が地元への説得を始めようとしていることに対し、同市長は「配備を前提にした話し合いには応じない」と警戒感を示しており、今後の両政府と地元の交渉が難航するのは必至だ。」
  ※『神奈川新聞』2005年10月28日
ということになってしまいました。                            | 目次と地図へ |      



<アメリカ海軍の空母>2005年10月現在

艦名

就役年

退役予定年

1

 キティホーク □

1961

2008

2

 エンタープライズ ■

1961

2014

3

 ジョン・F・ケネディ □

1968

2006

4

 ニミッツ ■

1975

 
5

 ドワイト・D・アイゼンハワー ■

1977

 
6  カールビンソン ■ 1982  
7

 セオドア・ルーズベルト ■

1986

 
8

 エイブラハム・リンカーン ■

1989

 
9

 ジョージ・ワシントン ■

1992

 
10

 ジョン・C・ステニス ■

1995

 
11

 ハリー・S・トルーマン ■

1998

 
12

 ロナルド・レーガン ■

2003

 
 ジョージ・H・W・ブッシュ ■ 2008予定  

 CVN78■

2014予定

 

 CVN79■

2018予定

 

 □…通常型空母 ■…原子力空母 

※フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』のデータなどから作成

 現在、アメリカ海軍は12隻の空母を保有し、そのうち、通常の蒸気タービン推進の空母(通常型空母)は、横須賀を母港としているキティホークともう1隻ジョン・F・ケネディの、合計2隻があるだけです。
 他は、すべて
原子力推進の空母です。最も古い、エンタープライズを除いては、残りは、全部ニミッツ級です。
 原子力空母は建造費は高くつきますが、燃料費など維持費がかからないため、アメリカ海軍は通常型2隻を退役させて、すべて原子力空母とする予定です。

 空母キティホーク(Kitty Hawk)
 この艦の名前は、ライト兄弟が世界で初めて飛行機による有人飛行に成功した丘、「キティホーク」に由来している。
  ※この画像は、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』のパブリックドメイン画像からいただきました。


 アメリカ海軍は、発表の中で、

「1964年以来、原子力推進のアメリカ海軍艦船は、日本の港へ1200回以上も寄港している。初めからアメリカ政府はアメリカ艦船が日本の港を使用する際の安全を約束しており、アメリカ国内の港を利用する際に行っている安全装置や手続きを外国の港でも厳格に実行することを確認している。この約束は引き続き守る。」

と、安全性を強調していますが、帰港と母港化では、利用の頻度や危険の確率が異なり、同じ論理では納得できないところです。

 
 ニミッツ級空母は、原子炉としては熱出力60万キロワットとされる軽水炉が2基装備されています。
 この原子炉は、電気出力にすると20万キロワット(熱出力の3分の1)に相当します。つまり、日本の首都から50キロ弱のところに、20万×2=
40万キロワットの原子力発電所があると同じことです。
  ※梅林宏道著『在日米軍』(岩波新書 2002年)P151

 以前に、原子力発電所の安全性が問題となった時、地方の反対派住民から、「そんなに安全なら、電気の消費者が集まっている東京に建設すればいい」と言われて、電力会社が答えに窮したことがありましたが、「危険」という点では、おなじことが現実となります。


 これについて、日本政府の反応はどうだったでしょうか。(『朝日新聞』2005年10月27日夕刊)

○町村外相発言(10月28日午前の記者会見)
「アメリカ海軍のプレゼンスが我が国周辺に維持されるのは、日本の平和と安全に寄与すると考えている。日本政府として評価している。」

○細田官房長官発言(10月28日午前の記者会見)
「日本で原子炉の修理を行ったり、燃料交換するようなことはない。空母の停泊中は通常原子炉が停止するということになっている。」 


 日本政府は、アメリカ軍の決定を受け入れる予定です。
 10月28日、蒲谷横須賀市長が外務省を訪れ、谷内正太郎外務政務次官に配備の受け入れを撤回するように申し入れましたが、外務政務次官は、「政府としては評価し、(原子力空母の配備)を歓迎したい」と述べ、撤回に応じる考え方はないとの意向を示しました。
 ※『朝日新聞』2005年10月29日朝刊
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 空母ロナルド・レーガン(Ronald Reagan )
 2005年10月時点での、最新鋭空母。横須賀に配備される空母がどれなのかは、今の時点では分かりません。

この画像は、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』に掲載されているもので、アメリカ海軍からパブリックドメインとして提供されています。


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