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 前回に引き続いて、番外編2です。
 なぜこんなにも番外編が続くことになったかは、タイトルをご覧いただければおわかりと思います。

 前回の復習です。
 2005年10月28日午前、アメリカ海軍は次のように発表しました。
「2008年に退役する
航空母艦(空母)キティホークにかわって、ニミッツ級の9隻の空母のうちの1隻を配置し、横須賀を母港とする。(以下略)」
 
 それに続いて、2005年12月2日(現地時間)、アメリカ海軍省は、
「アメリカ海軍原子力空母
ジョージ・ワシントンを西太平洋の前方展開の航空母艦として、これまでのキティホークに代えて、2008年に横須賀に配備する。」
 と発表しました。

 交代の理由としては、
「前方展開している老朽艦船をより新しく能力の高い艦船に交代させていく長期的な努力の一つ」であり、「これには西太平洋における予測不可能な安全保障環境が考慮されている」としました。
 つまり、北朝鮮の動きや、最近特に海軍力を増強している中国の動きを視野に入れた配備ということになるでしょう。
 原子力空母の横須賀配備については、「番外編1」でも触れましたが、地元横須賀市や神奈川県から強い反対が表明されています。
 しかし、日本政府が了解している以上、最早取り消しはありません。これで、具体的な艦名も決まり、2008年のその日に向けて、着々と進められていくばかりとなりました。

アメリカの発表の原文(英文)は、アメリカ海軍の公式サイト「NAVY.mil 」などで確かめられます。 
こちらです。

 この結果、横須賀の空母配備の「履歴」は、以下の表のようになりました。

 <横須賀を母港とするアメリカ第7艦隊の空母>

空 母 名

期  間

ミッドウエイ(通常型)

1973〜1991

インディペンデンス(通常型)

1991〜1998

キティホーク(通常型)

1998〜2008(予定)

ジョージ・ワシントン(原子力推進)

2008(予定)〜



 アメリカ海軍の原子力推進空母ジョージ・ワシントン(CVN73)

この画像は、アメリカ海軍の「U.S. Navy Photo Gallery」(こちらです)からダウンロードしました。同画像は、「These images are in the public domain and therefore are not copyrighted. 」です。
以下、このページの写真は、すべてここから引用しています。


 アメリカ海軍が保有しているニミッツ級の空母9隻(一覧表は、「
番外編1」にあります)ののうちの1隻で、1992年に就役し、アメリカ東海岸のヴァージニア州ノーフォーク(Norfolk)を母港としています。
 
 2004年前半まで「テロとの戦い」のため、地中海とペルシア湾に派遣されていました。2004年7月にノーフォークに帰港してからは、西太平洋での前方展開に備えて、ノーフォークの近くにあるノースロップ・グラマン社ニューポートニューズ艦船工場で必要な整備と新しい装備等の据え付けなどのアップグレードをしていると伝えられています。 


 甲板前半部のスティームカタパルト(飛行機を射出する装置)。            | このページの先頭へ |

 艦橋右前のエレベーター部分。写真の解説では「武器のマガジン」を積み込み中。


 スエズ運河航行中の空母ジョージ・ワシントン。


 空母ジョージ・ワシントン甲板上のE2早期警戒機とA6イントルーダー攻撃機。    | このページの先頭へ |


 日本では、「安全保障」と「原子力の安全」の両面で反対が懸念される原子力空母ですが、アメリカのメディアの関心は、当然ながら日本のそれとは異なっています。

 原子力空母ジョージ・ワシントンの現在の母港、ヴァージニア州ノーフォークのメディアは、次のように報じています。

地元の「HamptonRpads.tv」のサイトから取材しました。こちらです。 記事そのものはこちら。

  1. 2008年には、通常型空母キティホークと同ジョン・F・ケネディが退役し、その時に完成する原子力空母ジョージ・H・W・ブッシュの就役とあわせても、アメリカの保有する空母は、12隻から11隻に減少する。今回の空母ジョージ・ワシントンの太平洋配備は、現在の太平洋:大西洋=6:6の配備から、同6:5の配備へと変更となる。この太平洋重視の配備は、中国の海軍における攻勢的な努力に対抗するものと考えられる。

  2. 大西洋は、5隻の配備となるが、5番目の空母の母港はフロリダ州ジャクソンビルの近くのメイポートに予定されているため、ノーフォークは、これまでの5隻の配備から4隻へと削減される。これによって、毎年約3000人分の働き口と、2億ドル以上の経済効果が失われるだろう。 

 そして、大変興味深いことに、上記に紹介したサイトには、「投票」のコーナーがあって、以下のようになっています。

ヴァージニア州ノーフォーク海軍基地の空母桟橋。入港しようとしているのは、通常型空母ジョン・F・ケネディ(CV67)、停泊中は、原子力空母ハリー・トルーマン(CVN75)
ノーフォークはアメリカ空母群の最大の基地です。


Do you agree with the Navy's decision to send the carrier George Washington to Japan? 
 Yes No Not sure 

 
 つまり、空母ジョージ・ワシントンは、去るノーフォークでも行く横須賀でも反対を受けていることになります。皮肉なものです。

 また、日本が唯一の被爆国であり、横須賀や神奈川での反対に配慮して、横須賀を母港とする原子力空母を選定するに当たっては、アメリカ海軍内部で次のことが検討されたと報じています。 

  1. ノーフォークを母港としている空母ハリー・トルーマンは、原爆投下を決定した大統領の名前をもつ空母であるため除外された。

  2. 太平洋岸のサンジェゴを母港とする空母ニミッツは、その名が太平洋戦争中のアメリカ海軍の指導者チェスター・ニミッツ提督に因んでいるため、除外された。

  3. 2008年に就役する予定の空母ジョージ・H・W・ブッシュは、先のブッシュ大統領に因んだものであるが、この大統領は、第二次世界大戦中の雷撃機のパイロットとして活躍した人物であるために、この艦も資格を失った。

 う〜ん、暖かい配慮をありがとうといいたいところですが、そう言う問題ではないと思いますが・・・。  


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