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 さてさて、2005年8月に2度行った横須賀軍港めぐり見聞記の最後を飾るのは、8月28日におこった、「基地ゲートで憲兵に尋問された」事件です。

 8月28日の午前11時ごろ、私と長男Kは、横須賀駅に降り立ちました。
 8月6日の旅行では撮影できなかった、横須賀駅のすぐ北側の撮影ポイント(地図の
V地点)や、地図のJ地点のショッパーズプラザ(ダイエー)の屋上からのドックの撮影(以上はこちらのページにあります。)に成功し、ショッパーズプラザ店内で早めの昼食をすませました。

 12時すぎにダイエーを出て、軍港めぐりの出発地
@地点に向かいました。軍港めぐりの集合時間は、12時30分です。

 その途中にもうひとつ、撮影したかった場所がありました。
アメリカ海軍の横須賀基地の正門ゲートです。地図地点です。

 特に珍しい映像を期待したわけではありません。

 きっと正門ですから、映画で見るように、出入者をチェックする番兵のいる監視所と車の侵入を妨げる遮断機の様なものがある、ごく普通の光景を撮影したいと思ったからです。                   | 目次と地図へ |


 12時10分、大通り沿いに東に向かって少し歩いて、基地の正門前に到着しました。
 大通り(東西の道路)から正門(北側)に通じる取り付け道路には立派な歩道橋がかかっており、その中央部分は、まるで正門を写すために設けられたといわんばかりの、格好の撮影ポイントです。

 歩道橋を西から東の方向に渡りながら、正門の方を見ると、英語で基地の名称が書かれていました。
 
「FLEET ACTIVITIES YOKOSUKA UNITED NAVY」 です。 

「FLEETは艦隊だろ、ACTIVITIESって、なんて訳すんだろ。」

長男K

「普通の”活動”じゃ、日本語らしくないね。」

「そうだな。」


 などと話しながら、立ち止まって、写真を2枚撮りました。  
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横須賀市内中心部の航空写真。ただし1988年のものです。
(国土交通省ウェブマッピングシステムより。こちらです。)

基地正門ゲート

現ショッパーズプラザ(ダイエー)

現ヴェルニー公園

横須賀駅


 これが事件の元となりました。

 そのまま、歩道橋を東側へ渡りきろうとすると、進行方向、正門前道路の東側の歩道の上にあった日本の警察官詰め所から、警官がやってきました。

 「あなた、いま、基地の正門に向かって写真を撮ったでしょう。基地の方から、聞きたいことがあるとのことです。今すぐ向こうから兵隊が来ますから、ちょっと話を聞かせてください。」
「えっ、ええー」

 あれあれ、ここにくるまで、駅近くのヴェルニー公園から、ショッパーズプラザ(ダイエー)の屋上から、基地や軍艦を撮影しまくったのに、つまり、この基地は、市民にその姿をさらけ出すポジションにあり、それを自由に撮影してきたのに、正門を撮影したら、話をきかせてくれだと・・・・。
 こりゃ、どういうこっちゃ。
 

「K(長男に)、走って逃げようか?」

長男K

「やめときゃあ、追っかけられたらどうするの。いうこと聞いて、説明すれば。」

「なんか、しゃくにさわる。」

 
 そうこう言っているうちに、ゲート西横、手前の建物から迷彩服を着た白人の兵隊が近づいてきて、歩道橋を戻って、こっちへ来いと促します。
 しょうがないから後を付いていきました。

 ゲート西横の建物(図の基地管理棟の入り口です。)の前まで付いていくと、迷彩服を着た大きな黒人の兵隊が、睨み付けるようにして、話しかけてきました。口調はやさしいですが、なにしろ、身長190cm以上、アメリカンフットボールのラインマン並みの巨漢です。迫力は十分過ぎるほど十分です。(--;)

黒人兵

「Can you speak Englisjh?」

「a little.」

黒人兵

「Why、What is the prupose of your visit to Yokosuka?

「Sight seeing」

 第7艦隊を撮影に来たとは、あまり言いたくありませんでした。
 

 続いて、同じような迷彩服を着てそばにやって来た日本人が代わって質問しはじめました。

日本人

「あなたの住所、氏名は?何か、身分を証明するものはありますか?」

 彼が手にしたメモのようなものをのぞくと、これから私に尋ねたい項目のリストが示されていました。
 name、address、sex、birth、age、hair、eyes、tall・・

 つまり、私がどういうものか、、根掘り葉掘り聞かれるというわけです。 

「運転免許証がありますが、これは何のための質問ですか?」

日本人

「あなたがどんな人か確認したいのです。」

「そんでどうなるの?」

日本人

「最悪の場合、撮影した写真の没収です。」

 
 なにー、おまえら、わしらが何悪いことしたというんじゃ、とでも啖呵をきりたいところです。どこに、撮影禁止と書いたったんじゃい。第一、どういう権限で、没収するんじゃい。
 いつもの「挑戦」癖がわき起こってきました。


 しかし、父のそういういつもの癖を察知した冷静な長男Kが、こっそりと言いました。

長男K

「父さん、もまさんと(もめるようなことをしないで)、さっさと片づけよ。時間がないよ。」

 よくみると、時間は、12時20分を回り、軍港めぐりの集合時間が近づいてきます。ただその為だけに、朝早く起きて、やって来たんです。経費節減のために、青春18切符を使って長時間かけて横須賀くんだりまで来たのです。
 ここで、軍港クルーズに乗れなければ、来た甲斐がありません。
 
 しょうがないので、素直に運転免許証を示し、答えました。

「住所・氏名・生年月日はここに書いてあるとおり。年齢50歳。黒髪、瞳は黒、身長168cm。」

 そして、デジカメの写真を見せながら、黒人兵に向かって言いました。

「Do I have to delete these photos in my digital camera? I don’t want to do so.」

黒人兵

「No,you needn’t.」

 どうやら、写真を消すのは免れたようです。スパイ容疑じゃあるまいし、いくらアメリカ軍にだって、日本国の一市民に対して、そんなこと要求できるはずは、断じてありません。
 
 そうこうしているうちに、日本人の方が住所氏名等のメモを終えました。見ると、すべて、ローマ字・英語表記です。

「May I leave here?OK?」

黒人兵

「OK」


 やれやれと思ったのもつかの間、黒人兵は、どこかから、富士フイルムの「写るんです」を手に持ち、写真とってもいいかという仕草をしたあと、私の明確な同意を確認するまもなく、カシャッとフラッシュをたいて、写真を撮りました。

 何のことはない、
基地のゲートの写真を撮影しただけの私ですが、個人データを提供させられ、写真も撮られてしまうという、情けないことになってしまいました。                  | 目次と地図へ | 


 これが、その問題の基地のゲートの写真です。
 
 写真には写っていませんが、左手に、私たちが「尋問」された、基地管理棟があります。
 
 この写真、公開すると、やばいですかね。



 横須賀では、こういうことは、よくあるのでしょうか。

 8月28日は、仕方なく引き下がりましたが、こういう取り調べがどういうものか、確かめなければなりません。
 翌、8月29日(月)は、夏の休暇の日でしたので、早速電話しました。
 まずは、横須賀市役所です。   (046−822−4000)


「すみません、岐阜市から横須賀に観光で行ったものですが、昨日、基地の正門でトラブルがあり、ちょっとそのことで、うかがいたいことがあって電話しました。そういうことを担当している部局につないでください。」

交換手

「はい、わかりました。では、基地対策課へ電話します。」

 

さすが、横須賀です。市役所に基地対策課があるのです。

 応対した基地対策課の人に、昨日の事件の概要を説明しました。

「こういうことって、横須賀ではよくあるのですか。」

課員

「何件とかの件数は把握していませんが、あることはあります。例の、9・11のテロ事件以来、アメリカ軍は基地の警備に大変神経質になっています。
 先日は、アルカイダの一味が正門前に事務所を設けたという噂が流れました。」

「アルカイダですか、そりゃ大変だ。」

課員

「それからは特に敏感で、先日も、基地の正門前周辺で撮影していたTV局のクルーとトラブルがあったそうです。
 基地の警備の方から、市役所の許可を取ってあるかと言われたそうですが、私どもとしては、許可する立場ではありません。」

「なるほど、一つだけ確認したいのですが、基地正門前の撮影禁止というのは、張り紙も何もありませんでしたが、国の法律とか横須賀市の条例かなんかで、定められているのですか。

課員

「いえ、そんなことはありません。そんな法律も条例もありません。」

「では、写真を没収されたり、捕まったりは、少なくとも、横須賀市の権限では、何もできないと言うことですね。では、ちょっと基地へ電話してみますから、電話番号を教えてください。」

 
 かくて、アメリカ海軍横須賀基地(046−816−1110)へ電話しました。
 交換で説明すると、「そういうことは、
基地のセキュリティ部門(046−816−5381)へ電話してください」と言われました。

担当

「Hello、・・・・(聞き取れませんでした)」

「あの、日本語でいいですか。」

担当

「はい、結構です。こちら、横須賀基地憲兵隊です。」(担当の方は、どうやら日本人のようです。)

「えっ、憲兵隊って、あの・・、ゲートで尋問されたことについてなんですけど・・・。」

担当

「はい、ゲートの警備は憲兵隊が担当してます。」


 私は、日本史の教師です。
 憲兵隊と言われると、戦前の
帝国陸軍憲兵隊を思い出して、思わずびびってしまいます。落ち着き直して、昨日の事件を説明しました。
 

「私、素直にしたがって尋問を受けましたが、これって、何か法律的にそうしなければいけないもんではないですね。アメリカ軍の基地ゲートを撮影することを禁止するという法律も条例もないですよね。」

担当

「はい。ありません。」

「ということは、あくまで、任意ですよね。」

担当

「はい、任意です。」

「では、もしあのまま歩道橋の上から逃げたら、憲兵は追いかけてきますか。」

担当

追いかけます。

「でも、任意でしょ。」

担当

「いや、何も怪しいところがなければ逃げないはずです。」

 あぶない、あぶない。
 もし、逃げていたら、あぶないところでした。私も、長男Kも足は早いほうですが、そういう問題ではありません。横須賀基地正門前で、○○県教員アメリカ兵に捕まる、なんて新聞見出しになったら、おお恥でした。

「ところで、私が答えて、兵隊さんが書き取った私のデータと写真は、どう処理されますか。」

担当

「正門ゲートでの不審者のチェックは、海軍の犯罪捜査局の命令で実施しています。情報収集が目的です。データは、必要に応じて、データベース化され、テロリストの識別等に使われます。」

「ということは、私のデータは、どうなるのでしょう。私は、これから以後もテロをする危険性はありません。」

担当

「いやその判断は、こちらでします。でも、ちょっと調べてみます。昨日の12時20分頃でしたね。お待ちください。」

 担当は、電話口の向こうで誰かに指示しています。

担当

「お待たせしました。
昨日の、12時20分頃に間違いないでしょうか。調べましたが、記録そのものが残っていません。」

「えっ、記録がない。そうですか。」(^.^)

担当

「いろいろうかがったり、写真をお撮りしたり、不快なことをして申し訳ありませんでした。これも、ご承知のような事態の故のことと、ご理解ください。」


 ここまで言われれば、最早これまでです。一件落着と言うところでしょうか。

 いやいや、実は実は、軍隊というのはそんな甘いもんではないかもしれません。
 
 次にアメリカに観光旅行かなんかに行ったとき、
到着地の○○州の空港での入国審査に引っかかって入国できない。その理由を聞くと、「横須賀基地のゲートを撮影したと記録にある。」
 これでは、しゃれになりません。

 そんなことがないことを祈ります。


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