色丹島との草の根交流記10

 これは、私が2002(平成14)年9月18日(水)〜9月22日(日)に参加した北方領土色丹島訪問以来、友人となった色丹島のロシア人英語教師一家との間に続いている草の根の交流について記録したものです。


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010 札幌へ                                   

 ナターシャが札幌にいる5週間に、彼女に直接会いに行くかどうか、最後まで迷っていました。
 理由は簡単です。この時期は私が土日の両方またはどちらかに仕事をしなくてはならない予定がすでにびっしりと詰まっていて、とてもゆっくり札幌で時を過ごすなんて言う時間は作りようがなかったからです。

 この未来航路を毎週のように見ていただいている方は、カウンターの増え方から類推して少なくとも100名はいらっしゃると思っています。いただく激励のメールなどから、そのうちの多くは、自分の昔からの知り合いや教え子のみなさんです。でも、少数派ですが、私と会ったことがなくても未来航路を初めて見て、この内容に共感して、「ファン」になってくださった方もいます。

 そのうちのひとりで、これまでもしばしばメールをいただいているYさん(現在はある商社の名古屋支店勤務、お宅は神奈川県)から、次の趣旨のメールが届きました。
「これから、会えるかどうかを考えたら、たった1時間の時間しかなくても会いに行くべきではないですか。ナターシャさんもきっとそう思っていると思いますよ。彼女は、渡航するだけに給料の何ヶ月分も払ってきているのですよ。たとえ、1時間の札幌行きに何万円かかろうと、そんなもの・・・・。」
 Y氏の叱咤激励が、私の迷いを蹴飛ばしました。

 ナターシャの札幌滞在期間は、7月11日(金)までです。12日(土)には、一行は根室へと旅発ち、15日(火)には根室港から、コーラルホワイト号でそれぞれの島へ帰っていってしまいます。
 私の日程には、11日の午前中に東京で会議に出席する予定が組まれていました。12日は午後からまた事務所で会議です。この間の24時間が、彼女に会う最後のチャンスです。
 東京→千歳千歳→名古屋の飛行機を予約し、空き室がどこにもなくて焦った11日の夜の札幌は、カプセルホテルを何とか見つけて、準備を整えました。

 札幌へ出かけることを家族に説明するのは、ちょっと難しい技術でしたが、ごたごた言わずに単刀直入に言いました。
「東京へ出張に行くついでに、ちょっと1日泊まりがけで行ってきてもいいかい。」
「週末だし、まあ、どうぞ。」
「ありがとう。」
「で、ちょっとって、どこへ行くの。」
「札幌、北海道の。」
「え〜、札幌が、どうしてちょっと寄ってくる所なの??」(*_*)
 
 事前に連絡したナターシャは、「 I'm so glad we can meet! 」と言ってくれました。但し、午後6時からお別れパーティーがあって、9時頃まで続くと言うことだったので、「8時すぐにホテルに着くことができるから、フロント横のロビーで待っている。パーティーが終わったら降りてきておくれ。」と言う約束にしました。

 11日午後8時15分、彼女の最後の晩の宿泊先である、札幌駅前の札幌第一ワシントンホテルのロビーに着きました。5分ほどして、ナターシャが現れました。
「Hello」と私、「こんばんわ」とナターシャ。
昨年の9月21日、色丹島の波止場で見送ってもらって以来の再会です。

「今日はとても忙しい1日ね。」
「朝5時に起きて、東京へ向かった。でも、きみの忠告どおり飛行機と電車の中で昼寝したから、今は元気だ。きみのほうこそ、今日は最後の日ということで朝から大変だったろう。」
「いろいろな人と会い、パーティの練習もして、6時からパーティーをやって、日本語のスピーチもあって、とても緊張して疲れた一日だったわ。」
「パーティーはもう終わったの?」
「おおむね終わったけど、まだみんなワイワイやってるわ。私だけ抜け出して来たの。」
「どこかへ行こうか?」
「夜の町を歩きながらお話しをしましょう。札幌は何度か来たことはあるの?」
「1983年3月の新婚旅行以来、20年ぶりだ。そういえば、この年はきみが色丹島へ来た年だね。不思議な縁だが、その時、僕たちは、納沙布岬から望遠鏡で流氷で閉ざされた北方領土を見た。」

 札幌駅のJRタワーの38階展望室から、札幌市内の夜景を見たあと、時計台を経て大通公園まで歩いて、札幌TV塔の真ん前のベンチで、ゆっくり話をしました。昼間、晴天の東京で上着を着ながら汗だくになって移動したのと比べると、札幌の夜は、冷房など必要ない心地よい気候です。


 札幌駅のJRタワーは、札幌駅の再開発によって生まれた高層ビル。高さ173m。38階に展望室からは市内が380度眺望できる。写真は、駅の南、テレビ塔、大通公園、すすきの方面の夜景。面白いことに、北東の角には、眺望トイレというのがあって、男性の場合は用が足しながら下界が見える。右は展望室でのナターシャと私。


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