色丹島との草の根交流記04

 これは、私が2002(平成14)年9月18日(水)〜9月22日(日)に参加した北方領土色丹島訪問以来、友人となった色丹島のロシア人英語教師一家との間に続いている草の根の交流について記録したものです。


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004 2003年6月25日(水) ロシア人語学研修

 6月16日(月)の昼休み、JICA国際センターの人から言われた、「許可」を得るべく、北方圏センターへ電話しました。
「岐阜県の高校の教員ですが、JICA国際センターに宿泊している、ロシア人のナタリヤさんと電話をしたいのですが、そちらで許可をもらはなくてはいけないと聞きました。どうすればいいのですか?」

 電話に出たのは、担当のA氏でした。
「はい、この事業に関しては、いわゆる『反対派』の政治団体もおられますので、一応身分を確認してから電話をおつなぎすると言うことになっています。」
「わたしは、昨年の北方領土ビザなし交流で教員交流団の一員として色丹島へ渡航した者です。その時知り合ったナタリヤとお話しをしたくてお電話しました。」
「はい了解しました。そういう方でしたら、何も差し支えはありませんので、許可をいたします。今日中にJICA国際センターの担当に伝えておきますから、どうぞ、そちらへお電話してください。」

 そういうことだったんですね。そういえば、私たちが、色丹島へ渡航する時、装甲車の様な街宣車が根室の埠頭にいて、「ビザなし渡航反対。もう帰ってくるなー。」とか、マイクでがなっていました。これに対する配慮だったわけです。

「すみません。ついでに、少し教えてもらえないでしょうか。私はロシア語は全くできません。幸い、ナタリやさんが英語の先生ですので、英語で話すことができますが、私は、社会科の教師ですので、英語はうまくありません。特に電話では、聞き取りずらいので、会話が円滑に運ぶために、ちょっと予備知識を教えていただけないでしょうか。」

「はい、よろしいですよ。そういう交流ならわたくしどもも、ぜひうまくいって欲しいと思っております。何なりとご質問してください。」
 北方圏センターA氏は、私の矢継ぎ早の質問に迷惑がることなく丁寧に答えてくださいました。その結果、次のことが分かりました。

  1. 彼女たちが参加している研修は、正式には北方4島交流日本語修得研修という。

  2. 北方4島交流北海道推進委員会が主催者であり、費用はそこが負担している。北方圏センターは、札幌滞在中の約5週間の語学研修のみを担当しており、その研修場所・宿泊場所がJICA国際センターである。

  3. この事業は、2001年から始まって今年が3回目であり、毎年10人のロシア人が研修に来ている。

  4. 滞在中の日本語研修時間は、150時間の計画である。

  5. 費用は、根室までの渡航費は本人負担であるが、根室と札幌の移動費用も含めて、研修中はすべて北方4島交流北海道推進委員会が負担している。

「滞在中の食費とかはどうなっているのですか?」
「それも、北方4島交流北海道推進委員会で負担しています。最も給食というわけではなく、1日いくらという計算で本人達に支給しているのです。もちろん、いわゆるお小遣いは支給していません。」
「そのお金は、食費以外に使ってもいいわけですか?つまり、彼女たちの給料はそう多くはないはずですから、滞在費用は結構負担でしょうから。たとえば、1日1000円もらって、それを節約して、お土産を買うとか・・・。」
「計算上はもっとたくさんの支給額です。でも、研修生はまじめな方ばかりですから、決して遊びに行くなどということはしません。食費を切りつめて、本を買ったりしているようです。」

 なかなか涙ぐましい研修ではありませんか。

「是非、ナタリヤさんに電話をおかけ下さい。きっと喜ぶと思います。」

 ついでに、主催者の北方4島交流北海道推進委員会にも電話しました。こちらは、担当のB氏が、これまた親切にいろいろ答えていただきました。
「ナタリヤさんは、本当に熱心な方です。昨年に続き2度目の来日です。」
「え、昨年もこの研修に参加したのですか?」
「そうです。昨年は研修団全体の団長として参加しました。今年は、団長ではありませんが、熱心にやっておられます。」
「続けて参加することはいいのですか。」
「私どもの趣旨としても、何回も続けていただいて、完全に日本語を修得いただき、北方交流の牽引役になっていただくのがねらいです。単なる教養という段階を超えていただきたく思っております。」

 このあと、北方4島交流北海道推進委員会のホームページ確認したら、昨年の記録が残っていました。彼女たちは、島から根室までの渡航費として、ロシアの行政府に1万ルーブルの支払をしていることが分かりました。
 1万ルーブルという金額は、すごい金額です。ロシア社会ではあまり給料が高くない教員にとっては、なんと、月給の3倍以上という金額なのです。
  
 これは物見遊山で来られる研修ではありません。
 
 ナタリヤ、何があなたをこの研修へ向かわせたのですか? 


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