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エコ・スクール活動と外部award:KTD 11/01/10修正 11/02/06再修正 |
最初にイギリスにおけるエコ・スクールの活動を紹介します。 |
エコ・スクールの活動に登録している学校は、2010-11年度においては約14,900校を超え、この数はイングランドとウェールズの初等学校・中等学校全体の約60%弱にあたります。この2年間、各年度の登録校増加数は600校以上となっており、その活動は次第に活発となっていると言えます。本年度のグリーン・フラッグ獲得校数は、1,224校となっています。 |
グリーンフラッグの評価基準では、最初は生徒の小さな自主的な運動として始まったエコ活動が、学校の方針として活動されていることが求められています。 |
イギリスの学校のESD活動 |先頭へ ||研修記目次へ|| 研修日程と訪問地へ | |
それでは、各教育現場では具体的にどんな取り組みがなされているのでしょうか。5つの学校・一つの博物館の活動を紹介します。 |
【訪問学校・博物館一覧】 クリックするとその部分へジャンプします。 |
@ St. Edwards School in Rochdale(カトリック教教会立初等学校) |訪問学校・博物館一覧| |
マンチェスター市の北東約20kmにある衛星都市ロッチデールの住宅地にある学校です。主な特色は次のとおりです。
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写真04−01 グリーンフラッグ(撮影日 10/11/11) |
写真04−02 山羊です (撮影日 10/11/11) |
左:校門近くには、グリーンフラッグがへんぽんと翻っています。それだけ価値のある旗なのです。 |
写真04−03 waste watcher(撮影日 10/11/11) |
写真04−04 Litter police(撮影日 10/11/11) |
児童が活動する委員会です。3つの委員会のシンボル・カラーが、それぞれの帽子の色、黄色・青色・緑色です。 |
写真04−05 学校農園 (撮影日 10/11/11) |
写真04−06 里山 (撮影日 10/11/11) |
学校の敷地は比較的広く、運動場とは別の一画には、学校農園と里山があります。右の写真奥が「林」です。手前の道路様のものは、自転車の交通学習用の道路です。 |
A Todomorden High school(中等学校+シックスフォーム併設) |訪問学校・博物館一覧| |
マンチェスター市の北北東約50kmにある山間の過疎地の学校です。その特色は次のとおりです。 |
写真04−07委員会のリーダー(撮影日 10/11/10) |
写真04−08 食堂 (撮影日 10/11/10) |
各学校での説明は、すべて、児童・生徒が参加して行われました。みなさん堂々として上手な説明でした。 |
写真04−09 増設中の温室(撮影日 10/11/10) |
写真04−10 学校農園(撮影日 10/11/10) |
農園の土は、もちろん、食材の残渣等をコンポストしてつくった肥料が含まれています。 |
B St. Bede's Catholic High school(中等学校) |訪問学校・博物館一覧| |
マンチェスター市の北西約60kmにあるブレストン市郊外の住宅地の学校です。 |
写真04−11 CO2排出抑制 (撮影日 10/11/10) |
写真04−12 ソーラーパネル (撮影日 10/11/10) |
99個のソーラーパネルで発電された電力量は、校舎のパネルに表示されます。 |
写真04−13 温室建設用地(撮影日 10/11/10) |
写真04−14 学校農園 (撮影日 10/11/10) |
イギリスの学校では、学校理事会に予算の権限もありますから、外部資金の導入もできます。 |
写真04−15 ゴミ箱 (撮影日 10/11/10) |
写真04−16 水タンク (撮影日 10/11/10) |
左:左側はこの学校のゴミ箱。「紙・プラスティック・その他」の3分別のゴミ箱を導入しました。イギリスでは一般にゴミの分別収集は進んでいません。右側はマンチェスターにあったごく普通のみんな一緒に入れるゴミ箱です。 |
C Canon Burrows school(英国国教会立の小学校) |訪問学校・博物館一覧| |
マンチェスター市の東部(中心か約10km)の衛星都市オールドハム(Oldham)の住宅地の学校です。 |
写真04−17 合唱 (撮影日 10/11/11) |
写真04−18 鉛筆補助具 (撮影日 10/11/11) |
左:小学校では、合唱による意欲向上は大変効果があります。これは、日本でもイギリスでも同じです。 |
写真04−19 果物と外国 (撮影日 10/11/11) |
写真04−20 酸性雨 (撮影日 10/11/11) |
低学年の授業では、具体的なものが授業には効果的です。 |
写真04−21 分別収集 (撮影日 10/11/11) |
写真04−22 石油リサイクル(撮影日 10/11/11) |
左:実物を使ってどんな分別になるか学習します。 |
写真04−23 具体的な目標(撮影日 10/11/11) |
写真04−24 自分の目標 (撮影日 10/11/11) |
左:「学校の目標 蛇口を閉める・電気を消す・紙の再利用・ゴミを捨てない・木を植える・生ゴミをコンポストする・学校へ歩いてくる・ビン、プラスティック、その他を分別する。」 |
写真04−25・26 トントン川 (撮影日 10/11/11) |
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学校のすぐ南を流れるトントン川。ゴミは一つもなく、遊歩道が整備されて、憩いの空間となっています。この日は、気温も低く(8度ぐらい)雨も降り、散策という気分ではありませんでした。残念。 |
D New City Primary school(公立小学校) |訪問学校・博物館一覧| |
ロンドン東部のニューハム区にある小学校です。全体に所得階層では下層に属する家庭が多く、また移民の子どもなど家庭が英語を母国語としていない児童も多いのとことです。これまで報告したマンチェスター周辺の4校とは、少し事情が違います。600人の児童が話す言語は50か国語以上とのことです。教職員70人が話せる言語は15か国語とのことです。 |
写真04−27 学校のリサイクル活動のまとめ (撮影日 10/11/15) |
学校の活動の全体像がこの表にまとめられています。主な内容は次のとおりです。 |
写真04−28 委員会の発表(撮影日 10/11/15) |
写真04−29 校庭の隅 (撮影日 10/11/15) |
左:発表をする6人のうち、5人はアジア・アフリカ系民族の児童です。 |
写真04−30・31 自転車修理 (撮影日 10/11/15) |
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この二つの写真は、自転車修理用のコンテナです。かなり専門的な道具もそろえてあります。 |
写真04−32 ランチタイム(撮影日 10/11/15) |
写真04−33 おいしいメニュー(撮影日 10/11/15) |
給食の時間はどこの国でも変わりません。とても楽しそうで賑やかです。 |
写真04−34 別の小学校 (撮影日 10/11/15) |
写真04−35 劇 (撮影日 10/11/15) |
これは、近隣のカーペンター小学校の児童の発表です。「The Carbon Footprint Detective Agency」です。右端の黒い服の女性がこの学校の地域を管轄するニューハム区の教育庁の指導主事的な枠割りをしています。 |
E 自然史博物館(ロンドン市内の国立博物館) |訪問学校・博物館一覧| |
教育機関としての博物館がどのような貢献をしているかを確認するため、ロンドンにあるイギリス自然史博物館を訪問しまし。同館は、国のESDの一翼を担い、次のサービスを行っていました。 |
写真04−36 博物館正面 (撮影日 10/11/16) |
写真04−37 朝から行列 (撮影日 10/11/16) |
左:「この建物は寺院か宮殿を転用したものですが?」「いえ、初めから博物館として建築されました。」 |
写真04−38 メインホール (撮影日 10/11/16) |
写真04−39 □ (撮影日 10/11/16) |
左:メインホールの主役は恐竜の化石です。これは日本と同じですね。 |
ESDの今後の進め方 |先頭へ ||研修記目次へ|| 研修日程と訪問地へ | |
先に分析したような日本の現状を踏まえた上で、イギリスでの先進的な実践を参考に、今後日本のESDをどのように進めていくかについていくつかの提言を行うことにしましょう。 |
@ 「狭義の環境」から「持続可能」へ考え方の転換 |
ページ2(→)で示したように、日本においては、概念上は狭義の環境教育が主流となっており、真の意味での将来の人類のための「持続可能な社会」をつくるという発想は、まだ一般的ではありません。政府関係者・教育行政に携わる者・教職員が、「持続可能性」について絶対的な価値観を持つように、その発想を転換することが必要です。 |
A 教育課程全体に「持続可能」の概念を貫徹(各学校ごとに教育の目標に持続可能を) |
来年度から施行されようとしている小学校学習指導要領をはじめ、新学習指導要領における「持続可能」に関する記述は、残念ながら部分的であり、かつ、「生きる力」との整合性についても、概念上若干の疑問もあります。 |
|このページの参考文献一覧へ| |
B 各教科における「持続可能」を扱う部分の教材の充実 |
これまでの実績があるとはいいながら、各教科や特別活動・総合的な時間におけるESDについては、あらためて工夫されなければならないことは言うまでもありません。前述の奈良教育大学附属中学校では、「ESDカレンダー」によって、各教科の活動を「持続可能性」の各項目にリンクさせ、全体として充実した教育課程を実現しています。(参考文献4を参照)
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C 考え方、判断力、行動力、規範意識を育む学習の充実 |
各教科その他の教育活動の充実の際の最大のポイントは、生徒に育むべき力が、単なる知識・技能ではなく、「持続可能性社会」を実現するための価値観や行動力、そして規範意識にまで及ぶ点です。 |
D 各学校の施策を「持続性」のあるものに |
最後は、日本における学校経営の脆弱性に関することです。イギリスでは、学校理事会が学校経営の最終決定権を握っており、校長の人事も、日本のような教育委員会の人事異動による転勤というものではなく、理事会の意志で決定されます。これは、実績を上げない校長はすぐに更迭されることを意味しますが、逆に実績を上げている校長は、その学校に何年も勤務することを意味します。つまり、ESDで実績をあげていれば、かなりの長さにわたって、その方針が堅持されることになります。事実、私たちが訪問したある学校の校長は、10年以上その職にあるとのことでした。 |
全く幸せなことに、今回の研修では、多くのことを学ぶことができました。このような機会をいただいたことにこころから感謝します。「持続可能性のある社会」の実現に向けて、自ら邁進することを決意しています。 |
【環境教育 参考文献一覧】
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