民主党大統領候補の選定レースでは、ケリー候補の勢いが止まりません。
結果は、刻一刻と動いていきますので、ここで図に示すより、現地のサイトのものを見てみましょう。
※いつもの「DesMoines Register」の結果早見ページへのリンクはこちらです。
「Caucuses and Primaries by State」 (国全体の党員集会と予備選挙の結果)というページです。
色の付いた州は、もうすんだ州です。州の形をクリックすると、結果が出てきます。
アイオワの友人スティーブに送っていた、次の質問の答えが返ってきました。
○各候補の考えを、どうやって知るのか。
○各候補はどの様に活動するのか。
○活動資金はどうなっているか。
今日はこの話題です。
○各候補の考えを、どうやって知るのか。
「各候補の考えは、それぞれの争点別に明確に示されている。今回は、保険制度、減税、イラク問題、財政再建などだ。これらは、新聞やインターネットのサイトや、TVの討論会などで、明確に示される。
時には、相手の実績を否定するネガティブなキャンペーンも行われる。
政治にちゃんと関心があるものなら、各候補の意見やその違いは自ずと理解できる。もちろん、誰がやっても同じというわけではない。」
これまた、「DesMoines Regisiter」のページに、各候補の主張がちゃんと整理して示されていました。
そのうち、イラク派兵とイラク戦争復興への予算措置後の措置について、各候補についてまとめると、右の表のようになります。
アイオワの党員集会直前まで、世論調査で優勢を伝えられていたディーン前バーモント州知事は、戦争への反対を鮮明にした結果、特に男性の中年保守層の支持を失ったと言われています。
一方ケリー候補は、エール大学卒業後、その時代のインテリがたくさん兵役を拒否したのに対して、自ら志願してベトナムにおもむき、海軍で5年間にわたって従軍したことが、大きなアピールポイントになっています。
戦争と言うことでは専門家なのがクラーク元司令官ですが、ケリー候補に対して、「彼はしょせん中尉。私は大将だった」と思わず本音を発言して、顰蹙をかってしまいました。
候補の考えを見定める指標として、日本では考えられない、アメリカならではのものがあります。
「abortion」、つまり人工妊娠中絶です。
これについては、民主党候補は、全員が人工妊娠中絶を法律で一律に禁止することに反対です。
全員同じ意見ならなぜこの項目があるのかというと、これについては、ブッシュ大統領が反対の動きを見せているからです。
アメリカでは、1972年に通称「ロー対ウエイド事件」連邦最高裁判所判決が出され、「妊婦の生命を救う場合以外の中絶を禁止したテキサス州法は、憲法修正第14条で保護される「プライバシーの権利」の侵害であり違憲である」との判断が下されました。
しかし、レーガン大統領、父ブッシュ大統領は共和党の支持基盤であるキリスト教保守層の意見を受けて、妊娠中絶に反対です。
この結果、最高裁判所に保守的な判事を次々に任命しました。
クリントン大統領時代には、また中絶容認派の判事が増え、現在は、容認派判事6人、反対派判事3人です。
ブッシュ大統領は、再選後の2004年以降、保守派判事を任命すると言っています。
これが、争点となる理由です。
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人工妊娠中絶については、神戸大学国際文化学部の安岡正治先生が神戸親和女子大学で行った講義『英米の政治経済A』(平成15年度前期)の第8回講義レジュメを参考にさせていただきました。 |
○各候補はどの様に活動するのか。
スティーブのメールは続きます。
「最近はTVによる公開討論会という方法が大きな効果をもっている。それでも、全米で最初に党員集会があるアイオワには、候補がたくさんやってきて、各地で演説会や集会を開くという地道な活動をかなりの日数をかけてやっている。
いつかきみ(筆者のこと)は、『日本では、選挙カーというものがあって、候補者の名前を叫び続けるという伝統的な選挙運動がある』と書いていたが、我が家の地区では、そんなものは絶対にあり得ない。わかるだろう。家の密度がまばらすぎる。」
以下は、「DesMoines Register」に掲載されていた、「党員集会前に各候補がアイオワで過ごした日数」のリストです。
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氏 名 |
年齢 |
略 歴 |
日数 |
1 |
ハワード・ディーン |
54 |
元バーモント州知事(バーモント) |
76 |
2 |
ジョン・ケリー |
59 |
上院議員(マサチューセッツ) |
73 |
3 |
リチャード・ゲッパート |
62 |
下院議員(ミズーリ) |
67 |
4 |
ジョン・エドワーズ |
49 |
上院議員(ノース・カロライナ) |
64 |
5 |
デニス・クーセニッチ |
56 |
下院議員(オハイオ) |
54 |
6 |
ジョゼフ・リーバーマン |
61 |
上院議員(コネチカット) |
16 |
7 |
キャロル・モーズリー・ブローン |
55 |
元イリノイ州知事、元上院議員(イリノイ) |
13 |
8 |
アル・シャープトン |
48 |
地域活動家、元市民団体代表(ニューヨーク) |
7 |
9 |
ウェズレイ・クラーク |
? |
元欧州連合軍最高司令官(アーカンソー) |
3 |
ここでも、ディーン候補が一番手間をかけていたのに、敗北を喫してしまったわけです。
○活動資金はどうなっているか。
「資金は、アメリカの選挙の場合皆同じで、私の教育委員の選挙の時に説明したように、寄付金で賄われている。
※スティーブの教育委員選挙の話をまだご覧でない方は、こちらです。
大統領選挙だって同じだ。きみだって、1992年の選挙の時、ワシントンの民主党本部で、バッチかなんか購入して、幾分か寄付しただろう。
そういうグッズと引き替えではなく、純粋に寄付するのが、主流だ。寄付金の額が多いのは、その候補が圧倒的な支持を受けている証拠にもなる。」
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1992年、ワシントンの民主党本部で購入したグッズ |
クリントン夫妻、上はゴア副大統領と。ヒラリー・クリントンさんは、次回2008年に登場するのではないでしょうか。アメリカ初の女性大統領かな? |
これまた「DesMoines Register」のページに、各候補が集めた選挙資金の額が示されていました。
ちょっと古いデータですが。2003年の1月から9月まででは、次のようになっています。
|
氏 名 |
年齢 |
略 歴 |
金額 万ドル |
1 |
ハワード・ディーン |
54 |
元バーモント州知事(バーモント) |
2530 |
2 |
ジョン・ケリー |
59 |
上院議員(マサチューセッツ) |
1990 |
3 |
ジョン・エドワーズ |
49 |
上院議員(ノース・カロライナ) |
1440 |
4 |
リチャード・ゲッパート |
62 |
下院議員(ミズーリ) |
1360 |
5 |
ジョゼフ・リーバーマン |
61 |
上院議員(コネチカット) |
1170 |
6 |
ウェズレイ・クラーク |
? |
元欧州連合軍最高司令官(アーカンソー) |
350 |
7 |
デニス・クーセニッチ |
56 |
下院議員(オハイオ) |
337 |
8 |
キャロル・モーズリー・ブローン |
55 |
元イリノイ州知事、元上院議員(イリノイ) |
30 |
8 |
アル・シャープトン |
48 |
地域活動家、元市民団体代表(ニューヨーク) |
30 |
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※ |
ジョージ・W・ブッシュ |
? |
共和党現大統領 |
8460 |
ディーン候補は、資金面でも、最初は圧倒的でした。
一つ面白いデータを発見しました。「DesMoines Register」の選挙資金のページの各候補の部分をクリックすると、寄付をした人の個人名が、すべて出てきます。
これは、この新聞社が作っているのではなく、「Federal Election Commission」(連邦選挙委員会)のデータですが、これがなんと細かいのです。
日本だと、選挙資金の寄付というと、企業の献金というイメージですが、これは、違います。
企業からの寄付を受け入れる仕組みもありますが、あくまで、個人からの寄付というのが前提となっています。
※「DesMoines Register」の各候補の選挙資金のページ。名前クリックすると、寄付した個人のリストが登場します。
試しに、ディーン候補への寄付者リストを見ると驚きます。金額は$100が普通で、少ない人は、$20というのもあります。それが実名で掲載されています。
まさしく、市民の浄財と言った感じです。
最後です。
「資金で見たら、ブッシュが一番だ。」
よく見れば、ブッシュ現職大統領は、ディーン氏の3倍以上も集めています。
う〜ん、現職は強い。
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