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<アメリカからの情報>

009 大統領選挙2004その1 アイオワ州党員集会 2004年01月17日記述

 アイオワの友人スティーブからメールが来ました。
「今、このアイオワは、全米の注目を集めているのを知っているか?この19日に、2004年大統領選挙に向けての、全米最初の党員集会が行われるからだ。」

 今年は閏年、オリンピック・イヤー、そしてアメリカ大統領選挙の年です。

 大統領選挙そのものは、11月の第一月曜日の次の火曜日(ややこしい)となっていますから、今回は、2004年11月2日が投票日です。

 しかし、選挙戦はもう、前年2003年の夏頃から始まっています。
 今回、共和党の現職大統領ブッシュ・ジュニア氏は、まだ大統領1期目ですから、再選を表明しました。したがって、共和党の大統領候補は、現職ブッシュ・ジュニア氏に決まりです。

 しかし、野党の民主党の方は、大統領候補者選びをしなければなりません。
 その民主党の候補者が、候補者となるべく立候補表明して準備を始めるのが前年の8月頃なのです。

 今回は、2004年1月のアイオワ州党員大会に入る時点で、次の9人の民主党候補がいます。
 2番目に書いてあるディーン元バーモント州知事が有力候補であることは、すでに、現代社会クイズで取り上げています。まだの方は、こちらをどうぞ。


氏  名

年齢

略   歴

ウェズレイ・クラーク

元欧州連合軍最高司令官(アーカンソー)

ハワード・ディーン

54

元バーモント州知事(バーモント)

ジョン・エドワーズ

49

上院議員(ノース・カロライナ)

リチャード・ゲッパート

62

下院議員(ミズーリ)

ジョン・ケリー

59

上院議員(マサチューセッツ)

デニス・クーセニッチ

56

下院議員(オハイオ)

ジョゼフ・リーバーマン

61

上院議員(コネチカット)

キャロル・モーズリー・ブローン

55

元イリノイ州知事、元上院議員(イリノイ)

アル・シャープトン

48

地域活動家、元市民団体代表(ニューヨーク)


 さて、アイオワ州党員集会ですが、メールの説明はこう続いています。

「知っていると思うが、候補者を指名していくやり方はアイオワのような党員集会(Caucus)と、もうひとつ予備選挙(Primary)がある。
 予備選挙は、党員が選挙をすることによって候補者をノミネートする。
 党員集会は、簡単に言えば、党員が集まって候補者の演説を聴いて判断し、1月19日には、各地域ごとに高校の体育館などに集まって、どの候補者を支持するかを決める。
 具体的には、それぞれの候補者の代表が各コーナーにいて、支持者はそこに集まって、支持を表明する。ファイナル・カウントダウンまでは、支持を換えてグループを移ってもいい。

 制限時間が来た時に、どの候補者の支持者が何人いるかが決定され、それが各地区から1カ所に集められて、アイオワ全体の集計がなされるというわけだ。」
 
 大統領候補の決定の手続きは、州の法律で規定してあります。
 予備選挙をするか、党員集会をするかは、その州の歴史と伝統によって異なり、それぞれの経緯を踏まえて州法で定めてあるのです。ちなみに、Caucusという耳慣れない単語の語源は、インディアンの「部族会議」ということです。

 アイオワ州は、面積は大きいですが、人口240万人の小さな州です。しかし、この時ばかりは、この選挙初の党員集会ですから、当然全米の注目を集めています。
 アイオワの党員集会では過去にはこんな結果が出ています。


1976年民主党党員集会

 アイオワ民主党は、党員集会の結果を支持率で示します。
 1のUncomittedというのは、「中立」、言い換えれば、「支持者なし」のことです。 この時は、アイオワ2位のジミー・カーターが民主党候補者になり、大統領に当選しました。

候補者

支持率

Uncomitted

37.2%

Jimmy Carter

27.6%

Birch Bayh

13.2%


1980年共和党党員集会

 共和党は、党員集会の結果を支持率でと支持者数の両方で示します。
 この時は、ブッシュ父が1位、そして、2位にロナルド・レーガンがいます。もちろん、このあと逆転が起こって、全米では、共和党候補にはレーガンがなり、そして、大統領にも初当選しました。

候補者

支持者数

支持率

George Bush

33,530

31.6%

Ronald Reagan

31,348

29.5%

Howard Baker

16,216

15.3%


1992年民主党党員集会

 共和党はブッシュ父が現職大統領として再選を目指しました選挙です。
 民主党の1位は、Tom Harkin。全然知らない人物です。地元であったため圧倒的な支持を集めました。 
 この時の民主党候補は、あの、
クリントンです。このアイオワ党員集会では、4位でなんと、2.8%でした。このあと、大逆転が起こるのです。

候補者

支持率

Tom Harkin

76.4%

Uncomitted

11.9%

Paul Tsongas

 4.1%

Bill Clinton

2.8%


2000年共和党党員集会

 民主党クリントン大統領が2期目で終了し、両方とも新人が争った2000年大統領選挙です。
 民主党のゴア候補と、熾烈な争いをすることになるのは、現大統領のブッシュ・ジュニアで、アイオワでは、大差で1位でした。
 

候補者

支持者数

支持率

George W.Bush

33,231

41%

Steve Forbes

26,198

30%

Alan Keyes

12,268

14%

 

この表は、いつも参考にしている、アイオワ州の州都デモインの新聞、デモイン・レジスターのサイトの、Caucus Watch2004を参考にしました。こちらです。


 さて、今回優勢なのは誰でしょう。1月12日のアイオワ州の世論調査では、1位はディーン候補で支持率25%、2位はゲッパート候補の23%となっています。その差は僅か2%という、接戦です。さてどうなるでしょうか?
 ちなみに、予備選挙の最初は、今月下旬のニューハンプシャー州の予備選挙です。これまた小さな州ですが、同じく注目を集めます。
 スティーブに教えてもらいながら、大統領選挙の話を続けてみたいと思います。 



010 大統領選挙2004その2 草の根民主主義 2004年02月01日記述 目次へ戻る

 アメリカとの郵便物の交換がちょっと送れたり、その他いろいろとまどったりして、全米最初のアイオワの党員集会(現地時間1月19日夜)からもう10日以上が過ぎ、さらには、先週の1月27日には、東部のニュー・ハンプシャー州で全米最初の予備選挙が行われ、民主党の候補者選びは、確実に動き出しました。

 その点では、ちょっと遅れたレポートになってしまいましたが、現地から貴重な現物も届きましたので、「大統領選挙」レポートその2をお送りします。

 ○4年に一度のお祭り
 ○党員集会と予備選挙
 ○アイオワとニューハンプシャーの結果


○4年に一度のお祭り

日本のメディアは、アメリカ大統領選挙のことを、「4年に一度のお祭り」などと表現する場合があります。
 アイオワの様子を見ているとまさにそんな感じです。
 アイオワでは、クリスマスと正月の休暇が明けた1月第2週から、19日の党員集会へ向けて具体的な動きが始まりました。

 地元のTVや新聞社主催の討論会が何度も行われる一方、各候補者は、党員集会前に演説会・集会を開催して、支持者を必死に集めようとします。

 友人スティーブのメールからの引用です。
(以下、「」の部分は、特に示さなければスティーブのメールからの引用です。)
「候補者の事務所や支援者から公式のパンフレットはもちろん、高い公職にあるものや、知人などからも、個人的なメールや手紙が来る。その量は膨大なものになる。その一部を郵便で送る。」


スティーブのもとに送られてきたパンフレット。  


私信も来ます。左の一番下の差出人は、SheriffのDennis ○○さんからです。つまり彼の属するPOLK郡のシェリフさんから Edwards候補の応援を依頼する手紙が来ています。
右は、Kerry候補から、党員集会の前日に「Kerry候補支持集会を開くから来ませんか」という招待状です。

 

○党員集会と予備選挙    この項目の先頭へ戻る   このページの先頭へ戻る

 アメリカ大統領選挙の候補者の確定は、通常は次のようになっています。
  ・1月〜6月の間に、各州毎に候補者を確定。
  ・7月末から8月にかけて、共和党・民主党のそれぞれの全国大会で、党としての候補者の最終決定。

 そして、アイオワとニューハンプシャーがそうであるように、州毎の候補者の決定には、党員集会と予備選挙と二つの方法が実施されています。
 ■予備選挙
  各州の有権者が候補者に投票する方式。結果は1日で決まる。
 ■党員集会
  地区・郡の集会での討議・投票を通じて候補者毎の支持を積み上げ、最終的に州の代議員大会で議員を選ぶ。  
 19世紀や20世紀前半までは、基本的には、党員集会形式により、候補者が選ばれていました。
 しかし、実際には、各州毎の候補者の決定は、各州の一部有力者の意思によってなされていました。つまり、地元のボスの発言や、いろいろなしがらみによって、候補者が不透明に決定されていたのです。(日本人はこういう原理はすぐわかります。(--;))

 20世紀前半には、一時予備選挙を行う動きが拡大しかけましたが、当時はまだメディアの発達が十分ではなかったため、予備選挙の投票率も少なく、結局は地元のボスによって、この動きは押さえ込まれました。

 しかし、1960年代になってTVが普及すると様相は一変します。1960年の民主党ケネディ候補と共和党ニクソン候補のTV討論会のように、TVを通して国民は容易に情報を得ることができるようになり、より多くの国民が参加し、より透明に候補者が選ばれるようにと、簡単に決着がつく予備選挙方式が増加してきました。

 現在では、両党の全国大会に集まる各州選出の代議員のうち、予備選挙をとおして決められたものは、民主党で70%台、共和党で80%台となっています。
 つまり、現代では予備選挙方式が主流といえます。
 3月上旬の火曜日(今回は3月2日)には、全米約20の州で一斉に予備選挙・党員集会が行われ、これは、スーパー・チューズデイと呼ばれています。
  ※この項目は、在日アメリカ大使館のサイトのスティーブン・J・ウェイン氏の論文を参考にしました。
    アメリカ大使館のサイトはこちらです。
 
 とはいっても、アイオワのシステムが遅れているわけではありません。
 後述のように、地方のコミュニティがまだ残っている農村主体の州では、党員集会の積み上げ方式の方がより確かな「草の根民主主義」です。

 党員集会でも、最初の地区別の集会と投票で各州の支持者が決まることは同じであり、現在では、有力者がどうこうするというわけではありません。


○アイオワとニューハンプシャーの結果 この項目の先頭へ戻る   このページの先頭へ戻る

 もう新聞やTVで報道し尽くされていますが、一応、アイオワの党員集会とニューハンプシャー州の予備選挙の結果を掲載します。
 昨年末から、1月の初めにかけて、9人の候補者の誰を支持するかの世論調査では、ずっと、前バーモント州知事のディーン候補が優勢でした。
 次は11月18日発表の世論調査結果です。

氏  名

年齢

略   歴

支持率

>ハワード・ディーン

54

元バーモント州知事(バーモント)

18%

ウェズレイ・クラーク

元欧州連合軍最高司令官(アーカンソー)

14%

ジョゼフ・リーバーマン

61

上院議員(コネチカット)

10%

リチャード・ゲッパート

62

下院議員(ミズーリ)

9%

ジョン・エドワーズ

49

上院議員(ノース・カロライナ)

3%

ジョン・ケリー

59

上院議員(マサチューセッツ)

3%

キャロル・モーズリー・ブローン

55

元イリノイ州知事、元上院議員(イリノイ)

3%

デニス・クーセニッチ

56

下院議員(オハイオ)

2%

アル・シャープトン

48

地域活動家、元市民団体代表(ニューヨーク)

2%

 ところが、TV討論会などが行われていた結果、1月16日には形成は逆転しました。
 1月16日発表のアイオワ州の世論調査です。(「共同通信」などから作成)

氏  名

年齢

略   歴

支持率

ジョン・ケリー

59

上院議員(マサチューセッツ)

21.6%

ハワード・ディーン

54

元バーモント州知事(バーモント)

20.9%

リチャード・ゲッパート

62

下院議員(ミズーリ)

20.9%

ジョン・エドワーズ

49

上院議員(ノース・カロライナ)

17.1%


 そして、1月19日の結果は、事前の世論調査の予想を上回り、ディーン候補は、3位に転落してしまいました。

氏  名

年齢

略   歴

支持率

ジョン・ケリー

59

上院議員(マサチューセッツ)

38%

ジョン・エドワーズ

49

上院議員(ノース・カロライナ)

32%

ハワード・ディーン

54

元バーモント州知事(バーモント)

18%

リチャード・ゲッパート

62

下院議員(ミズーリ)

11%

デニス・クーセニッチ

56

下院議員(オハイオ)

1%

アル・シャープトン

48

地域活動家、元市民団体代表(ニューヨーク)

0%

ジョゼフ・リーバーマン

61

上院議員(コネチカット)

0%

ウェズレイ・クラーク 元欧州連合軍最高司令官(アーカンソー) 0%

キャロル・モーズリー・ブローン

55

元イリノイ州知事、元上院議員(イリノイ)

辞退表明

  ※この結果、ミズーリ州選出下院議員のリチャード・ゲッパート氏は辞退表明。

 敗北を喫したディーン候補については、さらに、追い打ちをかけるような報道が行われました。
 敗北直後の集会において、TVカメラの前で、「ホワイトハウスを取り戻すぞ。イヤーッ」と絶叫した様子が、繰り返し全米のTVで流されたのです。
 「支持者を励ますつもりだった」(『朝日新聞』2004年1月25日朝刊4面)という絶叫が、一般国民の目には、「敗北で取り乱した」と映ってしまいました。

 1月27日のニューハンプシャー州の予備選挙では、次の結果となりました。 
    

氏  名

年齢

略   歴

支持率

ジョン・ケリー

59

上院議員(マサチューセッツ)

39%

ハワード・ディーン

54

元バーモント州知事(バーモント)

26%

ジョン・エドワーズ

49

上院議員(ノース・カロライナ)

12%

ウェズレイ・クラーク

元欧州連合軍最高司令官(アーカンソー)

12%

ジョゼフ・リーバーマン

61

上院議員(コネチカット)

9%

デニス・クーセニッチ

56

下院議員(オハイオ)

2%

アル・シャープトン

48

地域活動家、元市民団体代表(ニューヨーク)

0%


 このままケリー候補が勢いを付けて進むのでしょうか?
 
 次は、2月3日に、デラウェア、ノースダコダ、ニューメキシコで党員集会が、アリゾナ、オクラホマ、ミズーリ、サウスカロライナで予備選挙が行われます。   

左、党員集会(Caucus、複数形Caucuses)へのガイドを特集した新聞及び、結果を報じる新聞。右、地元ケーブルTV局もキャンペーンで投票を呼びかけ。


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