二つの世界大戦その3
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<解説編>
 

1004 ドイツの無制限潜水艦作戦の真相は?                            | 問題編へ |

 教科書の記述は次のようになっています。


佐藤次高・木村靖二・岸本美緒・青木康・水島司・橋場弦著『詳説世界史』(山川出版 2006年教科書センター配布見本版) 


 これは、どう解釈すべきでしょうか?
 記述、BとCの関係は理解できます。ドイツが連合国の経済封鎖に対抗する手段として、無制限潜水艦作戦を実施し、それがアメリカの対独宣戦につながったという流れです

 それでは、Aの部分、ルシタニア号の撃沈の説明はどう理解するのでしょうか?
 一番してはいけない大間違いは、「
Cの無制限潜水艦作戦が宣言されたあと、ルシタニア号が撃沈された」という理解です。それが間違いであることは年号を確認すればわかります。ルシタニア号沈没は1915年、無制限潜水艦作戦の宣言は1917年です。
 では、AとB・Cの関係はどうなるのでしょうか?
 ルシタニア号は、
無制限潜水艦作戦で撃沈されたのか、あるいは、全く誤って撃沈されたのでしょうか?
 これだけの記述では、どうもその辺はわかりません。

 正解です。
 ドイツには、開戦当初から無制限潜水艦作戦を実施しようという海軍とそれをためらう政府・宰相ベートマン・ホルヴェークの意見の対立があり、ドイツの潜水艦作戦に対する方針が動揺したこと、また、アメリカ大統領ウィルソンの側にも、当初はイギリス陣営・ドイツ陣営の双方との貿易の維持することがアメリカの国益を守ることであったこととそれに関連してアメリカの参戦への躊躇があったことなど、双方の複雑な要因が絡んで、
1917年までドイツの無制限潜水艦作戦が徹底して行われなかったと言うのが真相です。
 詳しくは、→「マンチェスター・ロンドン研修記10 リヴァプール・マージーサイド、ドイツの無制限潜水艦作戦」を参照してください。


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