1980(昭和55)年のこの発見は、越前朝倉氏遺跡どころか、日本で最初に考古学的に確認された確実なトイレ遺構となったのです。名誉ある発見でした。この金隠しは国指定重要文化財となっています。解説を引用します。
「この石組桝形汲取式トイレは、主軸を北西に置き、長さ1.8m、幅1m、深さ1m、石組は6段程であった。中には有機質の泥が溜り、調査を担当した水野和雄氏(当時、福井県教育庁朝倉氏遺跡調査研究所)は悪臭がしたのを記憶しているという。長辺壁の両側に直径約15cmの杭が3~4本ずつ打ち込まれ、その一部は桝の上端より突き出していた。これを柱として桝(便槽)をおおう簡単な片屋根の小屋を設け、板材(発掘時に桝から出土している)で床を渡し、排泄物の落し穴に金隠しをはめ込んだと考えられている。この桝からは陶磁器の破片・明かり取りのための灯明皿などの他に、毛抜き・鋼銭「照寧元宝」「元祐通宝」・将棋駒「飛車」・櫛・下駄といった当時の人がうっかり落としてしまったと思われる生活に密着した遺物も出土している。
このトイレは町屋(商工業者の家)の裏庭に設置されていた。町屋は谷を南北に走る幹線道路等に面して、短冊状に並んでいる。」
※参考文献1 東京都大田区立郷土博物館編『トイレの考古学』(東京美術 1997年)P57-60
※参考文献2 黒崎直著『水洗トイレは古代にもあった トイレ考古学入門』(吉川弘文館 2009年)P10-14
※参考文献3 福井県立一乗谷朝倉氏遺跡資料館編『越前朝倉氏一乗谷』(2005年)P6-18
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