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人間が水に浮く話
 
 死海の水に浮く体験は自宅の風呂でもできるのか?03/07/26作成 
 なぜこんなことを考えたのか                         | このページの先頭へ |

 今2003年夏、世界水泳選手権がスペインのバルセロナで開かれています。北島選手が平泳ぎ100m・200mで二冠に輝くなど、日本人選手が大活躍です。

 そういううらやましい人とは対照的に、私は、水泳は全く駄目な人間です。
 この未来航路のどこかで書いたように、生まれてから今まで、一度も気持ちよく泳いだことはありません。25メートル泳ぐか20q走るかどっちかやれと言われたら、躊躇なく20q走ります。
 
 水が恐いとかいうより、水に浮きにくい体質です。潜水なら25m平気です。

 したがって、小さい頃から、死海の水にぷくぷく人が浮いている映像にあこがれていました。

 さてさて、数ヶ月前、土日の昼の2時間ものサスペンスドラマの再放送で、「死海の塩」が出てきました。
  ※塩の成分や味については、「現物教材 死海の塩」をどうぞ。

 旦那に殺されると思っていた妻が、夫の犯行を先読みして、まんまんと殺されずに済んで、復讐を果たすというものですが、その殺人の場所が、古井戸なのです。(リングのさだこではありません。)

 夫は妻を殺す場所として行きつけの旅館の古井戸を選び、ある日の夜、泳ぎが得意でない妻をうまくに井戸に突き落とします。
 ところが妻はそれを予想して、井戸の中に、市販の「死海の塩」を事前にたっぷり投じて溶かしておいたのです。妻は、井戸に落ちて一旦は沈んだ振りをして夫を安心させ、浮き上がったあとそのまま井戸の水に数時間浮いていて、朝になって旅館の女将に助けてもらうというものです。(すごい発想)

 また、あるバラエティー番組でも、スタジオのバスタブに「死海の塩」をたっぷり入れて、何とかという少し太った男性タレントがぷかぷか浮くというのをやっていました。

 疑問を二つ感じました。
1 「死海」で人間が浮く科学的な説明はどうなっているのか。
2 「死海の塩」でなければ駄目なのか。普通の食塩では浮かないのか。

 どうやって確かめるかですって?
 そんなもの、実験するしか確認の方法はありません。 


 自分の比重                                    | このページの先頭へ |  

 実験ですから、科学的に行わなければなりません。
 まずは、自分の比重の測定です。
 体重ではありません。比重ですよ。

 つまり、総体重を総体積でわり算して求める、あの比重です。これを出さないと、本当に浮くのかどうか分かりません。
 しかし、ここに重大な問題があります。普通、自分の体重は体重計で測れても、自分の総体積は簡単には分かりません。
 その昔、アルキメデスがひらめいたように、自分がどのくらいの水を押しのけるかを測定するぐらいしか、いい手段はありません。やらねばなりません。その実験を。 

 以下の写真は、その比重を求める実験の顛末です。

 
  1. まず、自分が湯船に入り、首まで浸かる。
  2. 湯船の上縁すれすれまでお湯を満たす。
  3. 自分が潜り(完全水没)お湯をあふれさす。
  4. 静かに湯船から出て水面の位置を計測。これが左の写真。側面に貼ったテープの1の位置が水面。
  5. 次にもう一度湯船の上縁すれすれまでお湯を満たす。これが左下の写真。
  6. 次に、一斗缶を器に徐々に水をくみ出す。写真右下。
  7. 写真左上のテープ位置1までくみ上げる。
  8. そこまでのくみ上げた水の量が、私の体の体積となる。

 ※右の写真の一斗缶は、私の現物教材の一つです。
 
 この計測の結果、私の体積は、一斗缶3杯とちょうど8リットル、つまり、
18×3+8=62リットル でした。

 この時の私の体重は、68.6キロでしたので、私の比重は、68.6÷62.01.11 でした。
  ※容積1立方センチメートルの物体が重さ1グラムであれば、比重は1です。2グラムなら比重は2です。
 
大実験でした。


 塩はどのくらい水に溶けるのか その時の比重は          | このページの先頭へ |  

 塩は、どのくらい水に溶けるのでしょうか。
 海水の塩分濃度は、4%から6%ほどですが、死海の塩分濃度は、なんと23%から25%と書かれています。

 死海の塩と成分は違いますが、もし特別に死海の塩を使わなくても、普通の食塩で、その濃度をつくれば、同じように人が浮くことができる「海水」になるはずです。

 そこで、試しに、150グラムの水に、50グラムの食塩を溶かすことにしました。


 これが150グラム(cc)の水と、50グラムの塩。並べるとすごい塩の量です。

 水に入れると、やはり入れた直後は、塩が底にたまってしまいました。


8分後、ちゃんと溶けました。

 底にたまったぐらいでへこたれては行けません。
 それから8分間、辛抱強くかき混ぜると、ちゃんと溶けてくれました。
 それが、右の写真です。
 ところで、ここでもう一つ確認しなければならないことがあります。
 水150グラムに、塩50グラムを溶かしたのですから、一応理論的には濃度は、

50÷(150+50)=25% です。

 しかし、濃度は、浮力とは直接関係がありません。
 右の写真をよくご覧ください。
 150グラム=150ccだった溶液の体積は、50グラムの塩が加わったおかげで、170ccを少し超えてしまいました。
 正確ではありませんが、おおむね、172ccとなりました。

 ということは、この溶液の比重は、
 200グラム÷172cc=1.16 となりました。

 したがって、もしこの理屈で、風呂の水全体を濃度25%の食塩水にすれば、その比重は、1.16となります。
 上で実験したように、
私の体の比重1.11でしたから、私はこの食塩水風呂に浮くことになります。
  
 つまり、別に死海の塩でなくても、飽和濃度に近い目一杯濃い食塩水をつくれば、その中では、やはり人間は浮けるのです。

 めでたし、めでたし。
 さて、これを自分の家で実際にやってみるかどうか?

「で、いったい。どのくらいの塩の量になるの。」

「我が家の風呂の浴槽はでかいから、240リットルぐらいの水を張るとして、溶かす塩の量は、80キログラム。」

「80キロの塩?そんな無駄遣いは許しません。それから、そんな塩分濃度の高い水を排水して、配水管とかがつまったりどうかなったりしたら、どうしますか。」

 実際に浮くことは・・・・、なかなか難しいようです。


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