死海といういのは、御存知、中東のヨルダンとイスラエルの境にある湖です。
死海の塩に関しては、二つのことが話題になると思います。
一つ目は古典的なもので、塩分濃度が高い死海では、人間の体が楽々と浮かんで、水中(水上?)で新聞も読めるという話です。これについては、「目から鱗の話」で説明します。
二つ目は、最近の健康ブームで、死海の塩が体にいいといって売れていると言う話です。
ここでは、2の話を中心に書きます。
最近の健康食ブームというか、グルメブームというか、「充実した食生活」志向の中では、塩もその対象として脚光を集めています。
大きな食品店や都会のデパートでは、各地域の産の特色ある塩が売られています。
そのひとつとして、かの有名な六本木ヒルズのエリアにある「フードマガジン」というお店が新聞に紹介されていましたので、東京に行ったついでに行ってきました。
この会社の全体の規模は知りませんが、この六本木ヒルズ店はいかにも都会の食料品専門店といった感じで、大変きれいな売り場に、それぞれこだわりの食品材料などが一杯売られています。
塩のコーナーは、陳列棚一角があてられていて、数えたら70種以上の商品が売られていました。
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塩のコーナー |
一つ一つの塩に細かな成分表示がされている |
その中のひとつに死海の塩があります。
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死海産の塩 |
こちらは、Ca、Mg、Kがやたら多い、石垣島産。 |
成分表示は、以上のようになっています。但し、この成分は、死海の水をそのまま蒸発させてつくった自然塩ではなく、少し成分比が加工してあるようです。
ナトリウム以外のいわゆるミネラルと総称されるもの、Ca、Mg、Kなどが多いのは、右側の石垣島産の塩です。
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普通の海水の成分 |
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成 分 |
組 成 |
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水分 |
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96.6% |
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塩分など |
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3.4% |
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そのうちわけ |
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塩化ナトリウム NaCl |
77.9% |
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塩化マグネシウム MgCl2 |
9.6% |
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硫酸マグネシウム MgSO4 |
6.1% |
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硫酸カルシウム CaSO4 |
4.0% |
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塩化カリウム KCl |
2.1% |
ところで、食塩の原料は、大きく分ければ、
1 塩湖・塩性湿地
2 地下岩塩
3 海水
の三種類です。
日本でつくられているものは、3 の海水が原料ですから、製品の組成の違いは、大別すると天日製塩かイオン交換膜法などの、製法の違いとなります。
ちなみに、普通の海水の成分は、右の表のようになっています。
塩化ナトリウム以外では、いわゆる「にがり」である塩化マグネシウムが一番多く含まれています。普通には、この成分の多さが「味の違い」を決めると言われています。
さてさて、そこで基本的な疑問です。
上記のような塩の成分の微妙な違いは、食品の味の違いになったり、また、健康維持の決め手になったりするものでしょうか。味に関しては、あまり鋭敏ではない私は、塩の違いなどほとんど分かりません。これは、私だけなのでしょうか。一般的なのでしょうか。
これについては、『朝日新聞』6月28日夕刊に記載されていたことや、「たばこと塩の博物館」の学芸員のTさんに直接電話で取材したことから、次のことが分かりました。
※「たばこと塩の博物館」はこちら
1 にがり等の含有量による味の違い
2 ミネラル分を多く含むものは、健康によいか
塩化ナトリウム以外のミネラルや金属などの海水成分がどう健康に作用するかは分かっていない部分も多い。
平均的日本人が使用する塩の量は1日1グラム前後。(初めから味噌に含まれているとか、漬け物に含まれているとかいう塩分は除いて、家庭で自分で左右できる塩の摂取量。)また、そのうちミネラルが含まれる量は、そのまたほんの数%。
したがって、塩から健康を左右するほどのミネラルを摂取するという食生活は非現実的である。
1・2とも私には、さもあり何という感じです。
こういう状況であるにもかかわらず製造業者の宣伝文句には、「天然塩」・「高ミネラル」など品質や健康に関する曖昧な表示が多く、日本海水学会では、2003年9月に「塩と食の研究会」を設け、適正表示のあり方などを議論していく予定だそうです。
最後に、『朝日新聞』に載っていた、東京西麻布の有名な日本料理店「分とく山」の料理長野崎洋光さんの言葉を紹介します。
「塩選びはロマン。ご家庭では、アルプスの塩だとか、その塩にまつわる『物語』を一緒に味わっておいしく楽しめれば、それでいいのではないでしょうか」
※前掲『朝日新聞』より
納得至極です。
ところで、この教材はどこで使うんだ??(*_*) |