岐阜県の東海道線あれこれ29
 岐阜県の東海道線についてあれこれ紹介します。
| 未来航路Topへ | | メニューへ | | 前へ | | 次へ |
 岐阜貨物ターミナル7 ターミナル駅・貨物列車点描3 11/11/28記述 12/01/10追加

 このページでは、前の27・28ページに引き続いて、岐阜貨物ターミナル駅とその周辺の東海道線の貨物列車について、点描的に説明します。以下の内容です。
 ○珍しい貨物列車U 試2750 8865? 
 ○コンテナ車への積載
 ○フォークリフトと荷役システム
 ○輸送力増強
 ○JR貨物の明日
 ○追加記述 2011年12月27日深夜のコンテナ車脱線事故

先頭へ||参考文献一覧へ
 珍しい貨物列車U

 前ページに続いて珍しい貨物列車を紹介します。
 まずは、前ページ・28でも紹介した、朝の
試2750列車です。


 写真29−01 朝の試2750列車がこの日はコンテナ5両と矢橋ホキを牽引して出発です。(撮影日 11/11/23)

 検査終了後の車両の走行試験用の列車ですから、何が登場してもよいわけですが、コンテナ+ホキ車というのも子どものプラレール的で、可愛い編成です。 
 ※この列車の説明は、岐阜県の東海道線あれこれ28:「岐阜貨物ターミナル7 点描2 珍しい貨物列車T」参照 

先頭へ||参考文献一覧へ

 写真29−02○珍しい組み合わせ。朝の岐阜貨物ターミナル駅。         (撮影日 11/11/17)

 左は、上で紹介した試2750列車です、右は、6170列車(紙返空)です。試2750の方も時々休みますし、6170列車の方は、1週間に2回程度(火曜日と木曜日)のペースでしか登場しませんので、この2列車が並んでいるのは珍しい光景です。
 
6170列車の説明はこちらです。→東海道線あれこれ23:「岐阜貨物ターミナル1 貨物輸送とターミナル 紙返空」   


 写真29−03・04 犀川鉄橋付近のEF66−118  (撮影日 11/09/18)

 前から見るとEF66機関車が単独で走っているかと間違えますが、実は違います。うしろにコンテナを2両引っ張っています。
 大変珍しい列車です。運転士さんも左右に2名乗務しています。


 写真29−05 この茶色い塗装の機関車に牽引された列車も同じ?        (撮影日 08/05/4)

 3年半前の、まだ貨物列車の知識がない時代に撮影した写真です。何となく面白い組み合わせなので撮影したもので、午前9時半から10時の間と言うだけで撮影時間も不正確です。時間的に、写真29−03・04と同じ列車と思われます。
 中線のEF66が牽引する列車も、どういう列車かは不明です。   

先頭へ||参考文献一覧へ

 写真29−06 EF66−115がコンテナ車4両を牽引して岐阜貨物ターミナル駅を通過します。(撮影日 11/11/23)

 時刻は9時28分です。貨物時刻表では、この時間ぴったりに岐阜貨物ターミナル駅を通過する貨物列車はありません。しかし、貨物列車の運行は、旅客列車の運行に比べてからりアバウトですから、それであきらめてはいけません。時刻表で一番近いのは、9時30分に通過する下り列車、8865臨専用、稲沢発京都貨物ターミナル行き)です。これでしょうか?
 貨物列車初心者の私には、断定できません。
 駅の着発1番線に停車して荷役を行っているのは、
7090列車です。   


 写真29−07 車掌車 (撮影日 11/10/24)
 これは、稲沢駅の停留中の
ヨ8450です。
 これは昔、コンテナ車にくっついていた、車掌車です。まだ残っているとは思いませんでした。現在も各地に28両も在籍しているそうです。(参考文献4 P61)
 現在は、本来の利用ではなく、工事用の特大貨物列車や甲種鉄道車両輸送の控え車として利用されているそうです。
 この車両も、試2750列車に牽引されて岐阜貨物ターミナル駅に来たのを見ていますから、検査を受けているわけです。ちゃんと働いていることは間違いありません。 

先頭へ||参考文献一覧へ
 コンテナ車への積載

 たくさんのコンテナを短時間に積み降ろしするために、人の動き・作業方法・装置にいろいろな工夫・努力がなされています。 


 写真29−08 サイレン (撮影日 11/10/11)

 写真29−09 出陣 (撮影日 11/11/14)

 左:着発2番線の中央やや西寄り、県道173号線のアンダーパスの真上にある警報機です。着発線に列車が入ってくる2分ほど前に、「ブー」と低い警報音が鳴り響きます。
 右:持ち場に出陣する係員さん。広大なコンテナホームをスクーターに乗って迅速に移動します。


 写真29−10 ランプ (撮影日 11/10/22)

 写真29−11 作業 (撮影日 11/11/07)

 左:荷役中はこのランプが点灯しています。
 右:列車が到着すると、すぐにコンテナの積み降ろしがはじまります。この時は、その前に作業員の方が、なにやら下準備をしています。さて、何をしているのでしょうか。


 コンテナ列車が到着すると、すぐに荷役がはじまるのが普通ですが、時には作業員が車両に駆け寄って、荷台の一部で何か作業する時があります。上の写真29−11がそれです。
 何をやっているのかわかりますでしょうか。次の4枚の写真が、ヒントです。 

先頭へ||参考文献一覧へ

 写真29−12 コキ107−134                       (撮影日 11/11/07)

 上も下も同じコキ107形コンテナ車ですが、微妙に違います。何が違っているでしょうか。  

 写真29−13 コキ107−342                       (撮影日 11/11/07)


 写真29−14 12ftコンテナ (撮影日 11/11/07)

 写真29−15 20ftコンテナ (撮影日 11/10/08)

 左は12ftコンテナが、右は20ftコンテナが、コンテナ車に降ろされる(積載の)直前です。さて違いは?

先頭へ||参考文献一覧へ

 正解です。
 実は、
12ft5トン積みコンテナ20ft10トン積みコンテナとでは、車両とのアタッチメント部分が違うのです。12ftはコンテナ側に突起部があり、20ftではコンテナ側が穴になっています。
 そのため、時々積載するコンテナによって、そのアタッチメントを変更しなければならないのです。写真29−11は係員がその作業をしているところです。 


 写真29−16・17・18 トラックの荷台のコンテナアタッチメント (撮影日 11/10/08)

 トラックの荷台も、2種類のコンテナが積載できるように、2種類の取り付け装置が付いています。 

先頭へ||参考文献一覧へ
 フォークリフトと荷役システム

 荷役の主役はフォークリフトとその運転手です。フォークリフトと荷役システムにも、最近は大きな変化が起こっていました。


 写真29−19 コンテナホーム西のエリアに停車中のフォークリフト群。        (撮影日 11/09/19)

 一番右にある大型の車両は、20トン以上のコンテナを荷役するトップ・リフター。しかし、この3ヶ月の観察では、動いているところは一度も見たことがありません。  


 写真29−20・21 トップ・リフター 

 左は、撮影日11/10/08。右は、撮影日11/10/22。見たことはありませんが、姿勢と置かれているコンテナの位置が変わっているということは、動いていることは確かです。


 写真29−22 コンテナ前面 (撮影日 11/11/07)

 写真29−23 フォークリフト (撮影日 11/09/19)

先頭へ||参考文献一覧へ

 コンテナの前面のアップを見てください。
 常識的には、どこかに「
荷札」(積載物と送り先・荷主を書いた札)が貼ってあってもいいはずですが、全く見あたりません。
 昔々はちゃんと貼ってあったのに、今はその必要はありません。
 では、どうやって、荷物を識別し、間違えずに行き先別に積み込むのでしょうか?

 実は、コンテナの輸送もすっかり電子化されています。
 荷主が申し込むシステムを「
IT−FRENS」といいます。
 荷主はインターネットを使って申し込みを行い、運搬に使われるコンテナが登録されます。
 コンテナの管理システムは、「
TRACE」と言います。
 コンテナには
IDタグが付けられており、フォークリフト側のIDタグ読み取り装置と、駅構内のGPSアンテナによって、どこにどういうコンテナが置かれており、そのコンテナはどの列車のどのコンテナ車に積み込むのかが指示されます。
 見事なシステムです。
 これによって、以前は荷役担当の感と記憶に頼っていた荷役が、現在はコンピュータによって完全にシステム化されています。 


 写真29−24・25 活躍するフォークリフト (撮影日 11/10/11)

 フォークリフトの屋根には、無線とGPSのアンテナが取り付けられています。無線アンテナはサーバーとフォークリフト内の端末とを結ぶ無線LAN通信に使われ、GPSは自車の位置を把握するのに使われます。
 正面の左側のフォークの根本にある灰色の2つの四角の部分は、コンテナに取り付けたIDタグを読み取る装置です。
 右側のフォークの根本には、貨車用アンテナがあり、貨車に取り付けたIDタグを読み取ります。
 運転席の右外側には、リーダーユニットがあり、読み取り情報をコントロールします。
 フォークが上下に動く部分の一番上には、上下センサーがあり、コンテナの留置位置、同じ場所の下段にあるか上段にあるかを把握します。
 コンテナホームのフォークリフトは単なる力作業の道具ではなく、今やハイテク機器です。
  ※参考文献4 「鉄道貨物輸送のシステムと現状」『鉄道ジャーナル2005年5月号』P38−40


 写真29−26 構内アンテナ (撮影日 11/10/11)

 写真29−27 屋根にアンテナ (撮影日 11/11/07)

先頭へ||参考文献一覧へ

 写真29−28 コンピューター化された作業       (撮影日 11/11/07)

 運転手さんの右横にデータを表示するモニターがあります。  


 写真29−29 トラックへ (撮影日 11/10/11)

 写真29−30 コンテナ車へ (撮影日 11/11/07)

 トラックへコンテナ車へ。小さな突起(20ftの場合)や窪み(12ftの場合)にあわせて、素早く正確に荷役が進みます。

先頭へ||参考文献一覧へ
 輸送力増強

 今後、コンテナ列車の輸送力を現在よりも強化することができるとのことです。
 コンテナ列車の長さは、現在は26編成が最長です。これでもコンテナ貨車1両が20.4mありますから、26両と機関車の分20mを加えると、1編成は長さ550mにもなります。1両に5トンコンテナを5個積載したとして、機関車は荷物だけで1,300トンを牽引します。
 しかし、機関車の出力を上げれば、長さ1200mのダブルトレインも可能とのことです。ただし、着発線の長さが十分にあり途中退避がほとんどないという条件付きです。実は、岐阜貨物ターミナル駅では、26両編成の列車が入ると、発着2番線ではその端は、ホームから少しはみ出てしまいます。
 また、本数の増加については、次のような見通しもあります。
「 列車回数 旅客輸送に朝夕の通勤通学のラッシュアワー、夏休みや盆暮の季節波動があるように、貨物輸送にもラッシュアワーすなわち需要の集中する時間帯、曜日波動、季節波動などがある。荷主顧客にとって都合のよい貨物列車ダイヤとは、夜遅く出発し、朝早く目的地に到着していることである。例えば、東京−大阪問は七−八時間を要するので、東京を二一−二四時に出発し、大阪に翌朝四−七時に到着する時間帯に需要が集中する。これより早い時間帯は顧客のニーズに合わず、これより
遅くなれば大阪の通勤時間帯の電車と競合して貨物列車は走れなくなる。週間波動では火・水・木曜が高く、土・日曜は低い。季節的には秋冬繁忙期と呼ばれる11・12月と2、3月に輸送需要がピークを迎える。
 一日のうちの限られた時間帯に多数の列車を走らせるには、列車の運転間隔を短縮することである。運転間隔を左右する要素には、信号の間隔、列車の出発・停車の際の加・減速度、分岐器の速度制限、停車時分、停車駅における着発線の本数、入換えに伴う関係線路の支障時分、列車の長さ、列車別の速度差などがある。東海道線の場合、夜間の貨物列車の運転間隔は約6分、1時問に最大8本、旅客列車と合わせると1時間に約10本の列車が運転されている。運転間隔短縮の一番の早道は、各列車の速度を同一(平行ダイヤ)にしてノンストップで走らせることである。通勤電車のように2分間隔で貨物列車を走らせることも技術的には可能と思われるが、当面3分30秒〜4分間隔が実用的な限界であろう。4分間隔ならば1時間に旅客列車を含め15本の列車を運転することができ、」夜間1時間当たりの貨物列車の本数を現行より50%増加させることができる。ただし、途中の着発線、信号機、変電所の増設など、かなりの投資を要することになろう。」
 ※参考文献5 『現代の貨物輸送』P77−78 

 しかし、それが実現するには、設備の問題や技術上の問題の克服の前に、それだけの需要があるかどうかという大前提が必要です。


 写真29−31 岐阜駅に近づく24両編成の列車。岐阜シティータワー43からの撮影です。 (撮影日 11/09/18)

先頭へ||参考文献一覧へ

 写真29−32 南荒尾信号所に近づく26両編成の上り列車       (撮影日 07/12/26)

 背景は伊吹山、右手の杜は大垣市御首神社の社叢です。

先頭へ||参考文献一覧へ
 JR貨物の明日 

 今後、JR貨物はどうなっていくのでしょうか?
 「どうなっていくかって、このまま事業が継続するに違いないだろう」とおっしゃるかもしれませんが、そうとは限りません。
 さかのぼって思い起こせば、貨車操車場が全盛期だった1970年頃に、それから僅か14年で操車場が全廃され、貨車が大量に廃棄に追い込まれるとは誰も想像しなかったと思います。
 コンテナ輸送に活路を見出したJR,いや、日本の鉄道輸送の将来はどうなっていくのでしょうか。

 JR貨物自身は、次のように分析しています。
「2004(平成16)年3月、1日当たりの列車本数は984本、計画列車キロは22.6万kmであり、コンテナ列車は433本、19.3万kmで全列車キロの85%を占める状況にある。
 2003(平成15)年度の輸送量は車扱貨物の減少のため3,787万tになり、会社発足時の5,627万tの約60%になった。しかし、輸送トンキロは輸送距離の長いコンテナ貨物の伸びが寄与して、112%増の226億トンキロに増加した。輸送トンキロのうちコンテナ輸送が87%を占め、世界で例を見ないコンテナ輸送を主力とする貨物鉄道に変容した。
 近年、地球温暖化防止の観点から鉄道利用の見直しの動きが高まっている。こうした情勢を踏まえ、JR貨物は鉄道輸送の価値を向上するよう輸送力の増強と輸送品質の改善につとめるとともに、ITを活用した新しい情報システムの開発・導入に積極的に取組み、21世紀に相応しい貨物鉄道づくりに努めている。」
 ※参考文献2 『写真で見る貨物鉄道百三十年』P220

 鉄道ファン、環境維持派としては、そう望みたいところです。 


 写真29−33 出発1 (撮影日 11/09/19)

 写真29−34 出発2 (撮影日 11/10/248)

 左:10時50分過ぎ、荷役を終えた下り5085列車(始発駅は仙台ターミナル)が岐阜貨物ターミナル駅を出発します。目的地は広島ターミナル、到着は夜の20時37分です。
 右:13時56分過ぎ、荷役を終えた上り1072列車(始発駅は宇部)が岐阜貨物ターミナル駅を出発します。目的地は仙台ターミナル、到着は明け方の4時54分です。


 写真29−35 出発3                              (撮影日 11/11/23)

 9時26分過ぎ、上り5060列車(始発駅は広島ターミナル)が岐阜貨物ターミナル駅を出発します。目的地は札幌ターミナル、到着は25時間半後の10時59分です。  

先頭へ||参考文献一覧へ

 写真29−36 出発4               (撮影日 11/11/21)

 準備が整ってまもなく出発の4056列車。未明の3時台から9時台までの6時間の間に、岐阜貨物ターミナル駅で荷役する下り列車は、この4056(宇都宮発福岡ターミナル行き)のみです。日の出直後の様子です。


 写真29−37 売却された旧国鉄貨車の横を通過するEF210−102に牽引された5060列車(撮影日 11/11/21)

 旧国鉄時代の1984年に、不用となった貨車が大量に売却されました。(→詳しくは、岐阜県の東海道線あれこれ26「岐阜貨物ターミナル4 コンテナ輸送とJRの貨物輸送」国鉄貨車売却を参照)
 その数は1万数千両に上りましたが、そのうちの一つが、皮肉にも岐阜貨物ターミナル駅の南の隣接地の畑に残され、倉庫として余生を送っています。赤茶色のさび止め防止用のペンキもしっかり塗られて、保存状態は良好です。
 新しいコンテナ輸送を眺める(監視する)存在としては、適役です。2度と貨車の大量処分などという事態が来ないよう、祈っていてほしいところです。 

先頭へ||参考文献一覧へ

 写真29−38 岐阜貨物ターミナル駅を染める夕陽             (撮影日 11/10/24)

 岐阜貨物ターミナル駅を茜色に染めて、養老山系の北端に秋の夕日が沈みます。西岐阜駅の高架道路からの撮影です。  

先頭へ||参考文献一覧へ

 これで、岐阜県の東海道線あれこれ23から29まで7ページにわたって連載しました、「岐阜貨物ターミナル」は終了します。
 最後までお読みいただきありがとうございました。

先頭へ||参考文献一覧へ
 追加記述 2011年12月27日深夜のコンテナ列車脱線事故 12/01/10

 2011年12月27日21時55分頃、岐阜貨物ターミナル駅で貨物列車が脱線する事故がありました。
 事件からすでに2週間がたちましたが、岐阜貨物ターミナル駅のレポートをした行きがかり上、事件の概要をまとめます。

 事故を起こした列車は、名古屋貨物ターミナル駅20時37分発の福岡貨物ターミナル駅行き(着09時38分)の
1065列車です。この列車は岐阜貨物ターミナル駅に21時18分に到着し、下り本線から着発1番線に入って荷役し、21時51分に発車する列車です。
 12月27日は機関車+コンテナ車26両=合計27両で入線し、着発1番線のほぼ中央部分の前から10両目から14両目の車両に荷役が行われました。(
説明図23 Aの位置
 荷役が終了し、定時の21時51分に発車したのですが、機関車とコンテナ車9両ほどが下り本線に入った段階で、非常ブレーキが掛かり列車は緊急停止しました。緊急ブレーキがかかった原因は、
12両目と13両目のコンテナ車両の脱線でした。この2両は、着発1番線と下1番線が合流するポイントの西側部分で、南側(コンテナホーム側)に脱線して10度ほど傾いて停車してしまいました。(説明図23 Bの位置
 このため、本線上の電気機関車とコンテナ車両合計10両ほどが東海道本線の下り本線をふさぐ形となり(
説明図23 Cの位置)、本線は不通となりました。



 実際の写真で見ると、事故現場は次の説明図24のようになっています。説明図24の写真は、岐阜貨物ターミナル駅を西側から撮影したものです。(東海道線上り電車の先頭車両からの撮影です。)



 この事故によって、上下線で27本の列車に最高4時間から7分の遅れが出たのをはじめ、岐阜−大垣駅間でバス代行輸送が行われるなど、ダイヤは終日混乱し、13800人に影響が出ました。
 夜中中に下り本線の電気機関車とコンテナ車両は移動し、28日早朝からダイヤは平常に戻りました。また、脱線現場では28日朝からジャッキを使って脱線コンテナ車両を線路上へ戻す作業が進められ、この日のうちには、撤去が完了しました。

 28日午前10時には、国土交通省運輸安全委員会の鉄道事故調査官3人が現場に入って、事故原因の調査が始まりました。
 『岐阜新聞』(2011年12月28日夕刊)によれば、当該コンテナ車両における
コンテナ積み降ろし作業中に、フォークリフトが貨車に引っかかり、車輪が持ち上がった状態で発車したため脱輪した可能性があるとのことです。『朝日新聞』(同日夕刊)によれば、積み降ろし作業を行った作業員は積み降ろし経験が1年程度で、まだ慣れていなかったということです。  


 写真29−39 コンテナの積み降ろし 向こう側のフォークリフトがコンテナを持ち上げます(撮影日 11/11/07)

 通常の積み降ろしをすればフォークリフトの「フォークがコンテナ車に引っかかる」という現象は起きません。どういう手違いが起こったのでしょうか。  


 さらに、出発前には、係員によって、コンテナの積載が正しく行われているか、車両に異常はないかなどの点検が行われるはずです。
 これは私の予想ですが、比較的危険性の高いコンテナの固定は目視で確認したのでしょうが、よもや車輪が外れているという「大事」には気がつかなかったのではないでしょうか。

 人が傷つくというような大事件にはならなかったのは不幸中の幸いです。
 しかし、旅客輸送への遅れはもちろん、当該列車の荷物の遅れが生じました。この損害や補償等も大きなものでしょう。
 さらには、
着発線荷役駅における迅速な荷役によるコンテナ貨物のスピード輸送というJR貨物の今時のセールスポイント、金看板に不安が生じたという点では、大きな事件だと思います。

 原因の究明と再発防止策の確立によって、より安全で確かな貨物輸送が行われることを願ってやみません。  


 【岐阜県の東海道線あれこれ29 岐阜貨物ターミナル駅7 参考文献一覧】
  このページの記述には、主に次の書物・論文を参考にしました。

日本貨物鉄道株式会社貨物鉄道百三十年史編纂委員会編『貨物鉄道百三十年史 上・中・下巻』(日本貨物鉄道株式会社 2007年)

 

日本貨物鉄道株式会社写真で見る貨物鉄道百三十年編集委員会編『写真で見る貨物鉄道百三十年』(日本貨物鉄道株式会社 2007年)

社団法人鉄道貨物協会編『2011 JR貨物時刻表 平成23年3月ダイヤ改正 創立60周年記念号』(鉄道貨物協会 2011年)

鉄道ジャーナル取材班「鉄道貨物輸送のシステムと現状」『鉄道ジャーナル2005年5月号』

  中島啓雄著『現代の貨物輸送』(成山堂書店 1997年)


| メニューへ | | 前へ | | 次へ |