岐阜県の東海道線あれこれ23
 岐阜県の東海道線についてあれこれ紹介します。
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 岐阜貨物ターミナル1 貨物輸送と岐阜貨物ターミナル 11/10/11記述 11/10/15改訂

 東海道線シリーズの今回のテーマは、岐阜貨物ターミナルです。鉄道マニアの方に言わせると、「貨物列車に興味を持ったら。本物」とか。
 生粋の鉄道マニアではなくマニアもどきの私は、例によって社会科教員の視点を踏まえて、
貨物駅と貨物列車の話を進めます。
 このページの目次です。
  ○基本的な状況の認識です まずは貨物輸送のこの50年の推移です 
   ・「グラフ01輸送機関別貨物輸送量の推移(トン・キロ) ・「グラフ02鉄道貨物輸送量の推移(トン・キロ)」
   ・「説明図12 車扱い輸送とコンテナ輸送」
  ○岐阜貨物ターミナル発着・通過する貨物列車


 私が貨物列車に興味を持ったそもそものきっかけは、このシリーズをずっとお読みの方はよくご存じの、「西濃鉄道石灰石運搬専用列車矢橋ホキ」 シリーズ(→こちら)を作製してからです。
 そこで出会った、「JR貨物時刻表」はなかなかの宝物となりました。全国を走る貨物列車に想いをはせるきっかけとなりました。
 
 今年からはそれに加えて、転勤によって勤務場所が変わり、自動車で通勤する時は毎日、岐阜貨物ターミナル駅のそばを通って行くことになりました。
 「ここらで貨物列車のことを調べてみるか」、 そういう成り行きになるのは至極当然です。(普通の人には、ちょっと無理があるかな。(^_^) )

 その上、岐阜県図書館でいろいろ検索すると、驚くことに、日本貨物鉄道株式会社編纂の『貨物鉄道百三十年史』(2007年刊)という本もあることがわかりました。願ったり叶ったりです。


 写真23−01 『JR貨物時刻表』・『貨物鉄道百三十年史』              (撮影日 11/10/08)

 いずれも岐阜県図書館から借りました。貨物列車の「語り鉄」にとっては、垂涎のお宝です。   

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 写真23−02 東海道線岐阜貨物ターミナル駅を過ぎて長良川鉄橋へ向かう「矢橋ホキ」 (撮影日 11/09/19)


 上の写真23−02の矢橋ホキの背景に広がっているのが、岐阜貨物ターミナル駅です。この写真一枚を見ているだけで、いろいろな事実が確認でき、また「疑問点」も湧いてきます。

 背景中央の高いビルは、岐阜駅の北西に隣接する岐阜シティー・タワー43です。(詳しくは→こちらです)位置関係からして岐阜貨物ターミナルは、岐阜駅の西方にあることがわかります。この貨物ターミナル駅はいつ頃できたのでしょうか? 

 

 矢橋ホキの後方に複数の線路がクロスしている部分があるのがわかります。画面中央には、そのポイントの方向を示す3つの信号があります。赤がともっている信号機の文字は、左「中場」・右「着発12場」となっています。また、一番左側、「上本場」の信号は青です。この時点でのポイントは、列車の本線通過となっていることが分かります。「中場」「着発12場」の意味はのちに解説します。 

 

 背景の岐阜貨物ターミナル駅の構内には、コンテナが積まれて置かれているのがわかります。矢橋ホキは同じ貨物列車でもコンテナ車ではありません。石灰石運搬専用貨車です。現在のJR貨物では、コンテナとそれ以外の貨物の運搬の状況はどうなっているのでしょうか? 

 

 そもそもJRの貨物輸送全体は、どうなっているのでしょうか?国鉄時代と比べて増えているのでしょうか?減っているのでしょうか? 

 いろいろなことを考えながら、岐阜貨物ターミナル駅とJR貨物の話を進めていきます。

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 基本的な状況の認識です まずは貨物輸送のこの50年の推移です

 まずは基本的な問題の確認です。
 列車による貨物輸送に関して言えば、国鉄時代からJR貨物時代にかけて、大きなスパンでとらえると、日本国内における役割は次第に低下してきています。
 下のグラフをご覧ください。


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  私が生まれた1955年には、輸送機関別の貨物輸送量は、鉄道の割合が一番多く、国内輸送量の40%以上を占めていました。しかし、自動車の発達と道路網の整備によって、まず自動車に追い越され、そして、港湾の整備と海上コンテナ輸送の普及によって、現在では、内航海運が国内貨物輸送の最大手となっています。(自動車ではなく内国海運が主役というのは、ちょっと目から鱗かもしれません。)
 鉄道の輸送量そのものを見てみましょう。
 最盛期の1970年前後と比べると半分以下になってしまいましたが、最近の10年・20年ほどという中期のスパンでみた場合は、どう分析したらいいでしょうか? 


 ※例によって、黒板をクリックしてください。答が現れます。
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 グラフ01では、右端のこの20年ほどは、概ね横ばいのように見えます。
 もっと正確なグラフで見てみましょう。次の
グラフ02は、鉄道貨物のみの輸送実績の推移のグラフです。


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 正解は、「2ほぼ横ばい」としましたが、「微減」とするかは微妙なところです。
 貨物輸送の実績は経済状況、景気の変動の影響をまともに受けます。2008年のリーマンショック後の景気停滞からようやく立ち直りつつあるところへの、今回の2011年の東日本大震災による輸送網の障害や生産の縮小は、大きな影響を与えていると思われます。その分を含めると、これから数年は、輸送量増加への期待はあまりできないかもしれません。

 しかし、1970年代からバブル経済の開始までの激減期と比較すれば、この20年ほどは、
横ばい=「相対的安定期」と呼んでいいと思います。
 安定をもたらしている一つ要因に、
低炭素・脱炭素社会の実現への社会的な動きがあります。列車輸送は、自動車に比べると格段に化石エネルギーの節約に貢献します。二酸化炭素排出量の比較では、トンキロあたり二酸化炭素排出量自動車は0.35kgであるのに対し、鉄道は0.02kg船舶は0.04kgとなっています。
  
 また、基本的に長距離輸送である場あるほど、コスト的に鉄道が自動車より有利になり、その分岐点は500kmとなっています。表01の割合では、全体では鉄道が占める割合は僅か4%ですが、輸送距離に視点を当てると、少し違ってきます。
 
1000km以上の輸送では、鉄道は30%を占めています。
  ※参考文献4 『鉄道ジャーナル』(2005年5月号)P33


 しかし、その貨物輸送の中味は大きく変化しています。
 日本の鉄道輸送の基本は、長い間、「何時でも、何でも、何処へでも」を実現する
集結輸送方式でした。できるだけ身近な駅で荷物を引き受け、拠点駅で方面ごとに貨物列車を編成し、拠点に着いたらまた格目的地別の貨車に乗せて、できるだけ近い駅まで送り届けるというのが、この方式の基本です。(この廃止については、次ページ24「岐阜貨物ターミナル2」で説明します。→
 その中核をなしたのが、
グラフ02の緑色の部分は、「車扱輸送」(しゃあつかいゆそう)です。これは、特定企業の荷物や個人の荷物などを貨車1両ごとを単位に運搬するもので、国鉄時代はこれが主力でした。
 これはひとつは、港・工場・鉱山などの原料供給地から加工工場まで、工場引き込み線など専用線路と一般線路を利用して直接原料等を運ぶもので、高度経済成長時代は、「4セ」と呼ばれた「石炭・石油・セメント・石灰石」や鉄鋼など、重量物がたくさんの貨物列車で運ばれていました。
 また、
一般車扱輸送と呼ばれた、小口の貨物の列車輸送も多く行われ、主要な駅には小口貨物を預けたり受け取ったりする窓口がありました。

 しかし、現在では、トラック輸送・海運が主力となり、
車扱輸送は激減しました。

 その一方で、鉄道輸送の主力となったのが、「
コンテナ輸送」です。
 これは、1959(昭和34)年11月に登場してから次第にその量を増やし、現在では、鉄道輸送の9割を占めています。

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 岐阜貨物ターミナル発着・通過する貨物列車

 それでは、東海道線の岐阜貨物ターミナル駅を発着、もしくは通過する貨物列車はどれぐらいで、どのような列車があるのでしょうか。貨物駅の詳細をレポートするためには、まず、そこを行き来する列車のことに詳しくなければなりません。
 こういう時に頼りになるのは。 『
JR貨物時刻表』です。これには、JRやその他の貨物専用鉄道の列車時刻がすべて掲載されています。しかし、残念ながらひとづだけ難点があります。駅別の時刻表は掲載されていません。
 これは当たり前と言えば当たり前です。普通の旅客時刻表にも、駅ごとの時刻表は掲載されていません。あくまで列車時刻表です。
 しかし、旅客時刻表は、駅が発行しているものでも、インターネットによるものでも、どちらも簡単に駅別発着時刻表が手に入ります。では、貨物の場合は・・・・?
 これがやはりそこまでは無理なんです。
 もっとも、JR貨物のHPには、ちゃんと駅別時刻表がありますが、発着時間別ではなく、行き先別です。そりゃそうですね、利用するお客さんから見れば、必要なのは、行き先です。
  ※JR貨物東海支社コンテナ列車時刻表 http://www.jrfreight.co.jp/common/pdf/time/time_tokai.pdf
 
 ということは、岐阜貨物ターミナル駅に来る貨物列車のことをとことん知ろうとすれば、自分でその
岐阜貨物ターミナル駅発着・通過時刻表をつくるしかありません。
 敢えて挑戦した作品が、以下のものです。(興味のある方は、プリントアウトしてお使い下さい。誰もいないか。)
  ※エクセルファイルも貼り付けておきます。
    利用したい方はどうぞ。(→エクセルデータ 右クリック「対象をファイルに保存」)

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 時刻表上は、上下107本が岐阜貨物ターミナル駅を発着・通過していると判明しました。ただし、臨時列車や試運転の列車も掲載してありますので、毎日これだけの列車が必ず登場すると言うことではありません。
 下り(大阪方面)の午前3時台、上り(東京方面)の0時(24時)代は、7本から9本と、ラッシュ・アワーとなっています。これは、東京と大阪の間をそれぞれ夜に出発して朝には到着するというダイヤを組んだ場合、中間の岐阜駅はそういう通過時間になると言うことです。
 これは、貨物列車を研究しようとする岐阜県民にとっては、とても残念なことです。108本のうち、明るい時間帯に見ることができる列車はおよそ3分の1で、残りの多くは写真を撮ることもなかなか難しいわけです。次のページで説明しますが、真夜中に時速130kmで疾走する貨物列車もあるのですが、上りは午前0時59分、下りは午前3時36分に岐阜貨物ターミナル駅を通過します。まず、普通の方は見ることはできません。写真撮影も困難です。(-_-;)

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 写真23−03 岐阜貨物ターミナルを出発する紙積載貨物列車(返空=空荷)    (撮影日 11/10/11)

 東海道線の中でも、岐阜県内の路線は、貨物列車がたくさんみられるかどうかという点では、残念ながら非常に退屈な地域となっています。
 つまり、表01・02をご覧いただければわかりますが、発着・通過の列車のほとんどが、上の説明図12で言う
コンテナ扱い列車です。実際、岐阜駅を通過する貨物列車の9割以上はコンテナ貨物列車です。コンテナ貨物列車を眺めていて楽しいという方はそれほど多くはいらっしゃらないでしょう。

 
コンテナ貨物列車ではない貨物列車はというと、一つは、写真23−02矢橋ホキです。これは、名古屋臨海鉄道−JR東海道線−JR美濃赤坂線−西濃鉄道と両端の専用線を通って、大垣市の北部にある金生山の石灰石を、東海市の新日本製鐵名古屋製鐵所に運んでいます。1日3往復です。
 写真23−03
青い貨車の貨物列車は、紙製品を愛知県稲沢駅から大阪梅田駅まで運んでいます。時刻表上では、1日1往復運行されてます。(ただし、実際は運行される日の方が少なく、よほど運がよくないとお目にかかれません。)
 写真の空荷の列車は、朝5時36分に梅田駅を出て、8時17分に岐阜貨物ターミナル駅に到着し、上下本線の間にある中線(待避線)に停留し、少し休憩します。この貨物列車の最高速度は時速75kmの設定のため、はっきりいって、ラッシュアワーの時は、通勤電車の足手まといとなります。何本かの電車をやりすごしてから、9時09分に出発します。この写真は出発の時の写真です。貨物車の後半分はまだ待避線上にあります。
 紙を積み込んだ梅田行き列車は、真夜中23時18分に岐阜貨物ターミナル駅を通過します。岐阜駅はその3分ほど前、23時15分頃の通過です。
 国鉄時代には、岐阜駅で列車を眺めていると、たくさんの種類の貨物車に出会うことができました。しかし、現在は、通常の運行がなされているに日は、このページの二種類の貨車、鉱石運搬
ホキ9500形茶色)と、有蓋車ワム80000形青色)の2種類しか見ることができません。(臨時列車による運行は除きます。)

【追記】2013年2月15日追記
朝、岐阜貨物ターミナル似姿を見せていた有蓋車ワム80000形の編成(紙返空:梅田→稲沢)は、2012年3月の貨物ダイヤ改正で廃止されました。


 さて、このホームページは、ただの鉄道ファンのページではなく、社会科の勉強のページです。
 このページは、ほんのさわりになってしまいましたが、次のページから、岐阜貨物ターミナルの建設の意味やら、鉄道輸送の課題などやら、ちょっとまじめに勉強をします。岐阜貨物ターミナル駅は、一地方の貨物駅で、通過本数はともかく、発着本数は、僅か20数本の小駅に過ぎません。しかし、実は、この駅は、『貨物鉄道百三十年史』に特筆される意義のある駅だったのです。
 さてさて、その意義とは・・・・? 乞うご期待。


 【岐阜県の東海道線あれこれ23 岐阜貨物ターミナル駅1 参考文献一覧】
  このページの記述には、主に次の書物・論文を参考にしました。

日本貨物鉄道株式会社貨物鉄道百三十年史編纂委員会編『貨物鉄道百三十年史 上・中・下巻』(日本貨物鉄道株式会社 2007年)

 

日本貨物鉄道株式会社写真で見る貨物鉄道百三十年編集委員会編『写真で見る貨物鉄道百三十年』(日本貨物鉄道株式会社 2007年)

社団法人鉄道貨物協会編『2011 JR貨物時刻表 平成23年3月ダイヤ改正 創立60周年記念号』(鉄道貨物協会 2011年)

鉄道ジャーナル取材班「鉄道貨物輸送のシステムと現状」『鉄道ジャーナル2005年5月号』


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