1999年、私は、前任校の進路指導主事(部長)でした。その時の「工夫」を話そうと思います。
まずは、高校の進路指導を基本的にどうとらえるかです。
従来から長く、高校での進路指導は、「出口指導」一本槍でした。その象徴が、例えば進学校と言える学校に現在でも多く見られる次のような進路希望調査の質問の方法(順序)です。
○○高校1年生進路希望調査
1 あなたの希望する進路は 理系ですか 文系ですか
2 あなたの希望する大学等は何ですか 国公立大学 私立大学 短期大学 専門学校その他 |
実は長男の通っている高校の昨年の進路希望調査も、基本的にはこの順序の質問でした。
就職者希望者がいる学校の場合は、さらに、この前に、「進学ですか就職ですか」という質問が加わるのが通例です。
この状況は今刻々と改善されつつあると思いますので、古い発想を非難することより、新しい提案の説明をします。
下の図は、私が、1999年4月の入学生と保護者に対して行った説明の資料プリントの一部です。
文部科学省の「指導」もそうなのですが、進路指導とは、単なる「出口指導」ではなく、その生徒の「将来の人生全体を考えるさせる指導」であるべきです。
私は、新入学生と保護者に対して進路指導の責任者が印象づけなければならない言葉は、「アイデンティティの確立」と「ライフプランの作成」の二つであると思います。
もう少しわかりやすく言えば、「自分とは何かを考え自分なりの価値観を見いだし、そして、職業を何をしようかを中心として、自分の将来を設計すること」です。
鼻持ちならないインテリのようにあまりカタカナを使うのはどうかと思いますが、「アイデンティティ」・「ライフプラン」の二つについては、新しい概念を新しい登録商標の様に記憶に残してもらうには、むしろ、日常的ではない英語を使う方が効果的という意味で必要です。
私が生徒に、「アイデンティティ」を説明する時は、いつも決まって、日清の焼きそば「UFO」が登場します。
U.F.O.は「unidetified flying object」(未確認飛行物体)の略ですから、そこから、identify→identity という具合に、「自分の確認」に結びつけます。
また、保護者(といっても通常は母親ばかり)に対しては、
「ライフプランの作成といっても、そう杓子定規に考えてはいません。人生はそう簡単に設計が立てることができるほどあまいもんではありません。それが証拠に、もしここにいるお母さん方が、高校生の時に立てたライフプラン通り実行できていたとしたら、今のご主人とは結婚しなかったはずの方が多いと思います。」ここで普通は爆笑です。そして、畳みかけて、結論につなげます。
「大事なことは、できるかできないかではありません。自分について人生について、考えるみることなのです。」
進路指導のみならず、その他の指導も含めて、単に進学とか就職ではなく、単に大学進学とか専門学校進学とかではなく、将来何を目指すべきかを問い続け、その答えが出せるような進路情報と指導のメニューを提供することが、本当の意味での進路指導であると思います。
それを実現する第1歩は、まず簡単なところから始めましょう。
もちろん、私が作った「進路希望調査」の先頭の質問は、「文系・理系」ではなく、「あなたが将来なりたいと考えている職業は何ですか」となります。
そうなると、組織の在り方も変わってきます。
これまで、進路指導部進学担当・就職担当とか、進路指導部進学担当・調査統計担当とかに区分されていた進路指導組織を改めて、1年生の時から、上述の問いかけや情報を生徒にどのように提供していくかをトータルに企画・管理する担当を組織の中心に据えなければなりません。
私は、主役となってそれを実践する進路指導主事の下に、企画課担当という係りを試みに置いてみました。これについは、まだこれから試行錯誤が続きます。
もうひとつ、進路指導の価値観・尺度を変える簡単かつ重要な変更を提案します。
自分の学校から進学した生徒の進学先の公表をする際、国公立大学・私立大学という区分で分けて発表するのではなく、ひとまとめに、大学のたとえばアイウエオ順に記載するというのはどうですか。そうすると、東京大学なんぞに何人入ろうが、真ん中あたりに埋没です。
この提案は過激ですか?
※上述のことについての実践は、これからもこのサイトのあちこちで紹介していきます。
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