娘の麻衣も、父の無理解には批判的です。
おりしも会社では、滝島徹が夫婦の破局を迎えたとは全く知らない部下や先輩が徹の定年退職を祝う会を開いてくれ、定年後のことにいろいろアドバイスをくれます。さらに、徹は新人運転士小田友彦(中尾明慶)の研修中の指導係を任されます。この二つの出来事は、自ずと徹にこれまでの42年間の勤務、とりわけ35年間の運転士人生を振り返らせます。
妻 |
「いいセリフが一杯あったね。『先輩は運転がうまいから無事故無違反で』、なんて。そうじゃないものね。」 |
私 |
「仕事は才能よりもやはり努力だよ。『違う。うまかったから無事故無違反だったのではない。下手だったから、明日は今日の失敗は二度とするまいと思って頑張ってきた。それが無事故無違反につながった。』そうだ。それに決まっている。」 |
妻 |
「『今日遅刻した原因は何だ。正直に言ってみろ。』ってとこもかっこよかった。本当は彼女と別れ話があってもめていたんだっけ。」 |
私 |
「そうそう。『心が乱れると運転も乱れる。そういう時は、後ろを見てみろ。後には運転士を信頼している乗客が乗っている。』いつも、現場目線でいることが、確実な仕事につながる。」 |
妻は、終末期のがん患者で、病院での死よりも自宅での死を望む老女井上信子(吉行和子)の担当となり、苦労しながら医師と彼女の信頼を得ていきます。
人が自分が苦労していい仕事をしてきたことを誇りに思うのは当然です。それなら、50歳を過ぎたからこそ最後に自分の生き甲斐となるいい仕事を成し遂げて、晩年を迎えたいと思っているパートナーのことも、わかりそうなものです。しかし、そこが難しいところです。
余演じる妻佐和子の潤んだ思い詰めた瞳が印象的です。
そんな時、鉄道にはつきもののトラブルが起こります。さて、その結果・・・・・。 |