2011-04
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127 2011年12月04日(日) 久しぶりの映画鑑賞記、「RAILWAYS」(レイルウェイズ)、感動的でした。    

 久しぶりの映画鑑賞記です。
 今年は、前半は「旅行記:マンチェスター・ロンドン研修記」、夏は、「旅行記:大井川 鉄道の旅」と、大作の旅行記が二本続き、また、秋には、「岐阜・美濃・飛騨:東海道線 岐阜貨物ターミナル」に取り組んでしまい、結果的に、日記のページがみすぼらしくなってしまいました。
 これでやっと4ページ目、しかも映画鑑賞記は初めてです。
 もっとも映画を見なかったわけではありませんが、紹介するまでもない作品が多かったというわけです。

 12月03日(土)に見てきたのは、この日封切りの「
RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」(松竹映画 蔵方正俊監督作品)です。結果はこうなりました。
RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ
お薦め人 お薦め度
(3点満点)
コ  メ  ン  ト

★★★  前作を越えるいい作品となりました。是非ご覧ください。

妻(55歳)

★★★  最後の15分、涙が止まりません。絆を確かめ、元気が湧いてくる作品です。
 ※RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへの公式サイトはこちら→http://www.railways2.jp/ 

 前作で話題を集めた映画は、とかく「2匹目のドジョウ」と言う具合にはならず、期待が大きい分、逆に失望させてしまうことがままあります。
 しかし、この作品は、前作とは違って、鉄道の運転士という要素を少々抑え、代わりに、人が仕事をすると言うことはどういうことか、夫婦がお互いを認め合うと言うことはどういうことかということに力点を置き、大変感動的な作品に仕上げました。
 まさしく、「
A RAILWAY」がいくつか重なって、「RAILWAYS」になると言う感じです。
 そして、それを支えたのが背景となった富山の自然です。
 舞台となった、富山地方鉄道とその電車が走る早春から春にかけての富山の景色は、立山連峰の美しさを背景にそれだけでも十分に感動的で見応えのあるシーンをつくりました。特に、ラストの俯瞰シーンは、通常では撮影できないものでしょうが、映画ならではの美しい写真となりました。
以下の写真は、2010年に富山に旅行した時のものです。
  2010年公開の初代「RAILWAYS]については、日記・雑感2010年6月20日「映画「RAILWAYS 49歳で電車の運転士・・・」泣かせる作品でした。 」で紹介しています。 
  初代「RAILWAYS」の舞台となった島根県の一畑電鉄については、旅行記:、出雲・石見旅行記3 一畑電鉄で紹介しています。 
  また、一畑電鉄での電車運転体験については、目から鱗:「各地の鉄道あれこれ 177 デハニ53運転体験 -出雲一畑電車-」で紹介しています。 


 写真127-01 富山地方鉄道軌道線(市内線)のセントラム9001と立山連峰     (撮影日 10/05/01)

 富山市内西町交差点を左折して、新設ループ線から従来線へ合流するセントラム9001。背景は北アルプス立山連峰。
 もっと天気がよければ、見事な撮影場所です。
 映画では、立山連峰を背景に電車が走るシーンがふんだんに登場します。人の心の葛藤が続く劇中に現れる自然の雄大さと美しさが、なんとも言えないほっとさせる癒し効果をもたらします。

富山地方鉄道軌道線の話は、目から鱗:「各地の鉄道あれこれ16 各地の路面電車6 富山地方鉄道軌道線(市内線)」で詳しく特集しています。


 ちょっとだけストーリーを紹介します。
 富山方鉄道に勤務する
滝島徹三浦友和)は、あと1ヶ月あまりで60歳の定年を迎える勤続42年の運転士です。運転士となってから35年間、無事故・無違反で過ごしてきた運転士の模範とすべき男です。
 しかし、妻
佐和子余貴美子)とは妻の就職を巡って、意見が食い違っていました。
 若い頃看護師をしていた佐和子でしたが、子育てと実母の介護のために長らく中断を余儀なくされました。
 一人娘
麻衣小池栄子)も結婚し、長年の夢を叶えたいと思った佐和子は、夫徹の反対があったにもかかわらず、ある病院の緩和ケアセンター(がんの末期患者のケアを担当する係)に就職することを決めます。
 事後承諾を求められた夫徹は激怒し、妻の気持ちを理解しようとはしません。
 「なにをいまさら。50を過ぎて、何が不足なのか。」

 夫の無理解に失望した妻佐和子は、自分の分だけ記入した離婚届と、指から抜いた結婚指輪を置いて家を出てしまい、夫には知らせずに一人アパートを借りて、看護師の仕事を始めます。
 夫の無理解なのか、妻のわがままなのか。
 二人に歩み寄りの機会は訪れるのでしょうか?。 


 写真127-02 富山地方鉄道の南富山駅                      (撮影日 10/05/01)

 映画では運転士滝島はこの駅へ自転車で出勤することになっています。黒いタクシーの後の自販機コーナーのところに自転車置き場が設定されていました。  


 写真127-03・04 南富山駅                      (撮影日 10/05/01) 

 左:駅構内に停留中の軌道線(市内線)の電車。
 右:南富山駅に到着する電鉄富山駅(JR富山駅の東に隣接)発岩峅寺(いわくらじ)駅行き普通電車。地方の私鉄の場合は往々にしてそうなっていますが、この10046電車も自社製のものではなく、京阪電鉄の3000系特急電車が再就職したものです。


 ※上の地図は、Google から正式にAPIキーを取得して挿入した、富山市内の地図です。


 娘の麻衣も、父の無理解には批判的です。
 おりしも会社では、滝島徹が夫婦の破局を迎えたとは全く知らない部下や先輩が徹の定年退職を祝う会を開いてくれ、定年後のことにいろいろアドバイスをくれます。さらに、徹は新人運転士小田友彦(中尾明慶)の研修中の指導係を任されます。この二つの出来事は、自ずと徹にこれまでの42年間の勤務、とりわけ35年間の運転士人生を振り返らせます。

「いいセリフが一杯あったね。『先輩は運転がうまいから無事故無違反で』、なんて。そうじゃないものね。」

「仕事は才能よりもやはり努力だよ。『違う。うまかったから無事故無違反だったのではない。下手だったから、明日は今日の失敗は二度とするまいと思って頑張ってきた。それが無事故無違反につながった。』そうだ。それに決まっている。」 

「『今日遅刻した原因は何だ。正直に言ってみろ。』ってとこもかっこよかった。本当は彼女と別れ話があってもめていたんだっけ。」 

「そうそう。『心が乱れると運転も乱れる。そういう時は、後ろを見てみろ。後には運転士を信頼している乗客が乗っている。』いつも、現場目線でいることが、確実な仕事につながる。」 

 妻は、終末期のがん患者で、病院での死よりも自宅での死を望む老女井上信子(吉行和子)の担当となり、苦労しながら医師と彼女の信頼を得ていきます。
 人が自分が苦労していい仕事をしてきたことを誇りに思うのは当然です。それなら、50歳を過ぎたからこそ最後に自分の生き甲斐となるいい仕事を成し遂げて、晩年を迎えたいと思っているパートナーのことも、わかりそうなものです。しかし、そこが難しいところです。
 余演じる妻佐和子の潤んだ思い詰めた瞳が印象的です。

 そんな時、鉄道にはつきもののトラブルが起こります。さて、その結果・・・・・。 


 写真127-05 宇奈月温泉駅に到着しようとする早朝の普通電車         (撮影日 10/05/02)

 宇奈月温泉は、黒部渓谷の入り口に位置します。ここで黒部峡谷鉄道のトロッコ列車に乗り換えて、上流を目指します。手前の噴水は温泉です。 

黒部峡谷のトロッコ列車については、旅行記:「高岡・富山・宇奈月旅行2 黒部峡谷」で説明しています。


 トラブルは人の考えを変えます。
 しかし、そのあとに彼の取った行動は、大方の映画を見ている観客の思いとは異なることでした。
 私や妻も含めて多くの方の、
 「えっ」
 という驚きが聞こえそうな展開となりました。

 やがて、徹の定年退職の日がやってきます。
 急行電車が、宇奈月温泉駅から電鉄富山までの立山線を走ります。急行電車とはいえ、都会のそれとは違うゆっくりしたスピードで、山あいを海辺を田園を通り抜けます。
 観客の思いは一つです。
 最後にどんでん返しを見せて、観客を驚かして評価を得る映画もありますが、この映画はそうではありません。
 映画を見ているみんなが、最後はこうなってほしいという方向へ、ゆっくりゆっくりと進んで行きます。このラスト15分が涙、涙、また涙です。 


 写真127-06 宇奈月温泉駅で出発を待つ電鉄富山行き普通電車      (撮影日 10/05/01)

 映画の旧レッド・アロー号は写真左側のホームから出発しました。  


「久しぶりにいい映画だった。元気になった。」

「妻を理解しないと、あなたも危ないわよ。」 

「私は大丈夫だ。」 

「どうして?」

「映画の中の、『妻から突然離婚を切り出されたらどうする』と同僚に聞いたシーンを覚えているか。」 

「覚えている。同僚は、『自分に原因があるのならすぐに謝る。相手に原因があるのなら、向こうが謝るのを待つ』というようなことを言っていた。」

「そのとおりだ。しかし、私ならそうはしない。」 

「どうするの。」

「どっちに原因があっても、すぐに謝る。恐い相手だから。」 

「ぶー、ほんとかしら。」

 退職の日、みんなからありがとうと言ってもらえる幸せ。一緒に再出発ができるようなパートナーがいる幸せ。そんな普通の幸せが本当にありがたいものだとあらためて感じる映画でした。
 その日まで、自分の場合は、あと3年と4ヶ月です。
 「
RAILWAYS」、懸命に生きているそれぞれの人生に祝福を。


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