戦国自衛隊というと、我々の世代は、以前、半村良原作で1979年にブームとなった元祖「戦国自衛隊」をまず思い出します。
あれは非常に面白い映画でした。その理由を私なりに分析すると、次の点があげられます。
自衛隊が戦国時代にタイムスリップするという発想がすごい。
千葉真一, 夏八木勲, 渡瀬恒彦, 竜雷太ら、個性的な男優人が起用された。
何より、それまで、映画「ゴジラ」などで、ひたすらゴジラの熱線に焼き尽くされる(溶かされる)だけだった自衛隊の部隊や戦車が、戦国武士相手とはいえ、ちゃんと戦った。つまり、自衛隊が主役の映画だった。
思い出してみていかがでしょうか?
今度の「戦国自衛隊1549」は、私としては、旧作に増して期待する作品となりました。その理由は次の点です。
原作者が今をときめく、かの福井晴敏。『終戦のローレライ』、『亡国のイージス』のあの福井晴敏です。(映画「ローレライ」についはこちらをどうぞ。)
「消滅するのは、歴史か俺たちか?」、のコピーにあるように、歴史の偶然性・必然性といったとてつもなく大きなテーマに取り組んだ。
鈴木京香という女優が加わり、自衛隊の部隊内ドラマに厚みが増した。
予告編に出てくる、ヘリコプターへのミサイル命中撃墜シーンの様に、これまでにない迫力の映像が盛り込まれた。
ストーリーです。
3年前、実験中の自衛隊の1部隊(隊長は鹿賀丈が演じる)が1546年にタイムスリップしてしまい、その場で、歴史を変える活動(現代人の歴史への介入)をしはじめます。このため、現代の歴史が変わりはじめ、これに危機感を感じた実験の担当者鈴木京香やその上司が、タイムスリップした部隊を救出(実は抹殺)するために、江口洋介らの新しい部隊を3年後の1549年にタイムスリップさせるというものです。
はたして、無事に歴史を復元して戻ってこられるかどうか・・・・、という映画です。
さてわが家族4人の、映画お薦め度はというと・・。
お薦め人 |
お薦め度(3点満点) |
コメント |
私 |
★ |
いくつもの内容がありすぎて、どれにも感動は今ひとつ。 |
妻N |
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たくさん人が死んで怖い。((--;)この人に、戦闘映画は無理です) |
次男Y(19歳) |
★ |
戦闘シーンはいいけど・・。 |
3男D(15歳) |
★ |
富士山のそばになんで織田信長がいるの? |
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ちょっとまあ、今ひとつ、今ふたつの結果になりました。
もちろん、この映画はいい面もたくさんあり、決して駄作ではありません。
タイムスリップした自衛隊の隊長(鹿賀丈の演じる)が織田信長になりすまし、それがまた「歴史の復元作用(自己修正作用)のなかで浄化されていく」というストーリーは、とても哲学的で、テーマ性は十分にあるものでした。
やっぱり、鈴木京香は美しい。(^.^)
旧「戦国自衛隊」がガソリンがなくなって自滅したのに対して、今度の部隊は、なんと拠点の城の内部に、原油蒸留装置までつくってガソリンを精製し、永住を可能とした。(でも、ミサイルや弾丸はどうしたのだろう?)
こういう点がよかったのでしょうか、6月11日には、日本の興行ランキング1位となり、また、7月1日には、“ハリウッド・リプロダクト・バージョン”の製作が決定しました。
これは、日本版「戦国自衛隊1549」の撮影済みフィルムをハリウッドがオリジナル編集し、効果音・音楽も新たに制作し直して、いわば「戦国自衛隊1549」のハリウッドエディションとするものです。タイトルも変更され、その名も「SAMURAI COMMANDO MISSION 1549」となるとか。
では、なぜ、わが家の辛口評論家ども?が、お薦め度を低くしてしまったのでしょうか?
批評内容が問題外の妻Nを除いて、詳しくその主張を述べると次の点となります。
前作の上杉謙信と川中島の戦いというのは、素直に受け入れることができるものでしたが、今回の、富士の裾野に織田信長と斎藤道三がいるというのは、「映画のストーリー」というのを割り引いても、わが岐阜県人には、乱暴すぎる、違和感のある設定と映りました。
歴史を変えてしまおうという信長になりすました鹿賀丈の主張・行為(悪者)と、歴史を元に戻そうとする江口洋介・鈴木京香らの主張・行為(正義)とのからみが、最初から大前提となっていて、味の薄いものとなりました。江口・鈴木の守るべき現代がちょっと弱くて、アメリカ映画のように、家族愛とかもっとヒューマンなものを絡ませたら、感動的でした。
自衛隊が主役となったのはいいですが、ここでもまた、名前もわからないまま死んでいく自衛隊員ばかりとなってしまいました。おかげで、ミッション成功後、現代に戻ってきた自衛隊員らが祝福されるのですが、江口・鈴木以外の名もない隊員達に対しては、見ている側からは、敬礼やハイタッチの祝福に、共感が今ひとつです。救出部隊の自衛隊員らの個人像をもう少し描いて、ここにおいても、ヒューマンな要素を加えるべきでした。同じ意味で女優鈴木京香はなんだったのか、についても??です。(女性自衛官である必然性が今ひとつ)
結果的に、わくわくするようなシーン、ジーンと来るようなシーンはない映画となってしまいました。初めての戦国自衛隊は、タイムスリップ自体が面白い発想でしたからそれだけでよかったのですが、今回は、歴史の復元という新しい要素を盛り込んだ意図が、不消化だったというのが、わが家の評価でした。
ちょっと辛すぎますか? |