2005-09
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084 2005年03月05日(土) 久しぶりの映画は「ローレライ」         

 2004年の日記欄には、3年までは比較的たくさんあった「映画鑑賞記」の記載回数がぐっと減り、「ブラザー・フッド」一つになってしまいました。
 原因は、明瞭です。
 私の映画鑑賞のパートナー、無口な映画評論家次男Yが大学受験の年であったため、母から、「映画は合格するまで御法度」という命令を受けてしまったからです。

 おかげさまで、次男Yは志望校の一つから合格通知をもらい、晴れて映画鑑賞が解禁となりました。

 そこで、早速合格通知が届いたその日に、復帰第一作を見に行きました。それが、
「ローレライ」です。
 この映画は、この未来航路をご覧いただいている方にはご記憶があるかと思いますが、2003年1月15日にこの「日記」
で取り上げた、福井晴敏作の小説『終戦のローレライ』を原作に作られた映画です。
 ※その日記の解説は、こちらです。 

 まずは、結論の映画の評価です。
お薦め人 お薦め度(3点満点) コメント
★★★ 「誇り」「命」「希望」、今の日本で大切にしたいテーマがうまく表現されている。
次男Y(18歳) ★★ 原作を詳しく知っていないとわからない部分がある。CGが」多い。

 
 ちょっとだけ、ストーリーを紹介しましょう。
(小説と映画はいろいろな部分でストーリーや設定が異なっていますが、ここでは小説の内容を予備知識(背景)にしながら、予習になる程度に映画のストーリーをお話しします。何しろ原作の小説は1000ページを超える大作ですから、2時間20分の映画にするには、いろいろカットしなければならなかったのです。)

 舞台は太平洋戦争の終戦間際の1945年8月。
 日本海軍は、すでに降伏していたドイツ海軍から秘密兵器を手に入れていました。日本名、イ507号と呼ばれた潜水艦です。この潜水艦は、海の中で正確に敵や魚雷の位置を認識してディスプレイする「探査装置」(特別な
潜航艇、N式による)を搭載し、それによって、自由自在に敵を攻撃できるという画期的な性能を有していました。

 ストーリー大事な要素@は、この潜水艦が正規の日本海軍の命令ではなく、海軍内で陰謀を企んだ
浅倉大佐によって出撃を命じられ、それを、艦長の絹見(まさみ)少佐(役所広司)が最初は知らないことです。
 頭脳明晰なのですが、その頭脳に溺れて「反逆」を企ててしまった浅倉大佐に対して、当時の日本海軍軍人にあっては例外的にヒューマニストとして設定されている絹見少佐が、日本人の誇りと希望を信じて独自の判断で行動するというのが、ストーリーの柱の一つです。

 そして、もう一つの柱、大事な要素Aが、その探査装置は実は、
機械ではなく「人間」であったという奇想天外な設定です。
 イ507号は、絹見大佐の艦長赴任前にも、ドイツから日本に回航される途中にアメリカ艦隊と遭遇し、その何隻かを撃沈していました。
 撃沈される間際、アメリカ艦隊の将兵は、海の中から、あり得ないことに、若い女性の歌声を聞いていました。歌はモーツアルトの子守歌です。これが主題歌です。
 ※「ローレライ」のオフィシャルサイトにつなげると、ずっとBGMで流れます。こちらです。

 何故歌声が聞こえるのか?
 実は、この探査装置は、ある少女の超能力を増幅して、ディスプレイするものでした。
 少女の名は、パウラ。ドイツ人ですが祖母が日本人という日系クオーターです。ナチスドイツが進めた、異常能力のある子どもの五感を医学的に増幅して、戦闘兵器に仕立て上げるという作戦の犠牲者(成功例)でした。腕には、無数の注射のあとと、コード番号の焼き印が付いています。
 
 彼女は、海の水を通して、物体がどこに存在しているのかを感知することができ、それを増幅してディスプレイし、敵を攻撃するというシステムだったのです。
 ドイツ海軍は、この兵器を、ライン川で旅人を淵に引き込む魔女ローレライにたとえ、「ローレライ」と呼びました。これが映画の題名です。

 さて、映画にはもう一人大事な若者が登場します。
 イ507号に乗務を命じられた、
回天特攻隊員折笠(おりがさ)一等水兵です。
 イ507号には、特別攻撃用の特殊潜航艇回天は搭載していないのですが、折笠にはパウラの乗るN式潜航艇の操縦という任務が与えられていました。当然、他の乗り組み員とは違って格別に、兵器そして人間のパウラの両方に接する重要な役です。
 パウラは人間です。人間に完璧はありません。秘密兵器パウラの弱点と折笠一水の思いとがまた次の物語を生んでいきます。
 
 ここまでが、複雑な設定の説明です。
 父の影響で比較的戦争ものに知識のある次男Yでも、「父ちゃん、回天って何?」となってしまいます。それがわからないとストーリーが読めないというほどではありませんが、折笠という人物の心情を深く味わうためには、必要な知識です。

 ストーリーを進めます。
 いろいろあって、絹見艦長は、東京におとされる手はずになっていた
第3の原子爆弾を積載したB29爆撃機の出発を阻止する決断をします。広島、長崎につぐ第3の原子爆弾です。もちろん歴史上は、これは存在していません。

 たった1艦で、アメリカ艦隊が待ち受ける
テニアン島(B29爆撃機の基地)に向かうイ507号
 艦長以下、乗員の思いは・・・・・・。生きて帰る可能性はあるのか・・・・。

 希望をもって真っ直ぐに生きることを大切さ、大義に向かう人間の凛々しさに涙する作品です。
 最後は、映画「タイタニック」のダイヤモンド、「碧洋のハート」のようなある品物(原作にはありません)が、観客をほっとさせてくれるラストになっています。

 いかがですか、映画館で・・・。 


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