ところで、今日のテーマは、「セイタカアワダチソウの撮影」でも、「夕陽」でもありません。
ゴビンダ被告です。
これだけ書いて、何のことか理解される方は、もともとこの事件に興味がおありか、この「未来航路」をよく読んでいただいている方です。
ネパール人ゴビンダ・プラサド・マイナリ被告(37)。
1997年に渋谷区のアパートで起きた、女性殺人事件の被告です。
事件当初は、殺害された女性が、一流大学出の才女で一流企業のOLでありながら、夜な夜な渋谷の町で売春を繰り返していたということの方に注目がいき、勤務先会社名の東京電力を冠して、「東電OL殺害事件」と呼ばれました。
この事件の報道に関しては、被害者の生活そのものがワイドショーネタとなってしまった結果、被害者やその家族の人権が守られなかったという点で、各メディアに反省を促すことにもなりました。
本題に入る前に、そのメディアですが、各新聞は今回の記事を次の見出しで報道しました。「毎日」と「朝日」に、配慮が見られます。
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○ |
東電社員殺害(東京電力の女性社員強盗殺人事件) |
「毎日新聞」 |
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○ |
電力会社女性殺人 |
「朝日新聞」 |
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○ |
東電OL殺害事件 |
「中日新聞」 |
その事件の最高裁決定がなされました。「上告棄却」です。
※これまでのおおむねの経緯は、この日記の2002年6月22日の項目をご覧ください。
この裁判では、マイナリ被告が、捜査段階・公判を通して一貫して無罪を主張してきました。
検察側は、被告が殺害現場のアパートの鍵を持っていたこと、トイレのコンドーム内にあった精液が被告のDNA型と一致すること」などの状況証拠を積み重ねて起訴しました。
2000年4月東京地裁の一審判決は、「現場のアパートからは被害者・被告以外の人間の体毛が複数見つかっていること」、「被害者の財布が捨てられてあった場所が被告の行動範囲外にあること」などを斟酌し、「体液などは一見して有罪の物証と思えるが、被告以外の者が存在した可能性がぬぐえない」として、無罪判決を言い渡しました。
ところが、2000年12月の第二審東京高裁は、逆転有罪、無期懲役の判決を下しました。
全く同じ証拠をもとに、判断を有罪と変えたのです。
先週、10月20日の最高裁判所第3小法廷は、「記録を精査しても、重大な事実誤認はない」と結論し、第二審判決を支持し、被告の上告を棄却しました。
『毎日新聞』2003年10月22日朝刊によると、被告が起訴事実を否認している場合で、しかも、状況証拠しかない場合は、これまでその事実認定の方式は確定されていませんでした。
これに関して、最高裁が、「状況証拠を積み重ねれば有罪となる」ということを示した判例となるということです。
これに対し、被告側は、10月23日に、異議申し立てをおこないました。
まだ、未確定です。私個人も納得がいきません。
詳細を理解されたい方は、佐野眞一著『東電OL殺人事件』(新潮社2000年5月)及びその続編の、同著『東電OL症候群』(2001年12月)を読みください。
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