さて、冷夏のおかげで、稲の作柄は一時は非常に心配されましたが、9月の暑さで、関東地方以西は少し持ち直しました。しかし、1993年以来の不作であることは間違いありません。
米価も、品種によって違いますが、平年に比べ10%から30%の高値が予想されています。
その為、10月に入って、米が倉庫から盗まれるという米泥棒事件が各地で発生していることが、ニュースで報じられています。
また、新聞各紙によると10月10日には、滋賀県近江八幡市牧町の水田で、収穫前の稲が刈り取られて盗まれると言う前代未聞の事件まで発生しました。
約1800平方メートルの田んぼのうち中央部分を除いて、約1000平方メートルがコンバインで刈り取られ、栽培されていた約840キログラム(約22万4000円)のヒノヒカリが盗まれました。
※『朝日新聞』2003年10月10日第39面)
ニュースでは「前代未聞」と言う文句が強調されていましたが、歴史の教師には、室町時代のところで教える、「刈田狼藉検断権」というのが思い出されます。
※石井進他著『詳説 日本史』(山川出版1999年)P121
近代以前の社会では、田地を巡る争うがあったときは、実力で解決する手段として、その地の稲を刈り取ってしまうという強硬策が執られることが往々にしてありました。それが「刈田狼藉」です。
※刈田狼藉検断権は、それを取り締まる権限のことです。
今と違って、昔の土地は、宅地として売るわけでもなく、駐車場にできるわけではなく、その価値はひたすら農産物、とりわけ米を産出することにあったのです。したがって、とりあえず現に実っている稲を刈り取ってしまうという強引な方法は、争いの中で利益を確保する一番手っ取り早い方法でした。
我が地方では、素人の私が水田を見る限り、実りはいつもとそれほど違わないように見えます。
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