これは、私が2002(平成14)年9月18日(水)〜9月22日(日)に研修で出かけた北方領土色丹島の訪問記と、ついでに回った、北海道東部の旅行記です。


| 北方領土・北海道訪問記へのメニューへ | | 前へ | | 次へ |

K 摩周湖・釧路湿原

 
○摩周湖
 22日は、色丹島から根室港に着いたのが12時半過ぎ。
 根室港では、町を上げてのサンマ祭りが行われていました。我々が出発するときに右翼の街宣車がいた場所に、屋台が並んで、みんなでサンマを食べ放題です。

 よほどそちらにより道をと、思いましたが、サンマの香りをふりきって、計画通り旅を急がねばなりません。
 トヨタレンタカー根室営業所で借りた車は、ヴィッツ・オートマ。今日はクラッチ切り忘れのエンストをする心配はありません。

 22日から23日へかけて、根室→根釧台地→摩周湖→釧路湿原→釧路市内(泊)、釧路市内→釧路湿原→太平洋炭坑→釧路空港、とこのレンタカーも頑張って200キロほど走ってもらわなければなりません。

 ハナサキガニをクール宅急便で送ったあと、13時20分根室発。
 途中、弟子屈(テシカガ)町には、山の裾のを直線で10qほど走る道があり、帰りは、まるでスキーの直滑降のような気分の運転でした。

摩周湖から雌阿寒岳・雄阿寒岳方面を見る

 第一の目的地摩周湖には、2時間後到着。
 「霧の摩周湖」はもう少し、神秘的でもよかったのですが、今日の天気は、周りはずっと晴れていて、摩周湖の真上にだけ雲があると言う不思議な天気で、湖面は、ご覧のように、絵にならない写真となってしまいました。 

 展望台をめぐって、駐車場に戻ると、16時。

 今からなら、釧路湿原の細岡展望台からの夕焼けが望めるはずです。ヴィッツオートマのアクセルが深くなります。

 霧の摩周湖ならぬ曇天下の陰鬱な摩周湖
霧が出てるか、もう少し晴れていれば、絵になったのに・・・・。

 中央の湖面からそそり立つ山が、摩周岳855b。
 奥の高い山は、斜里岳1545b

 第一展望台からの眺望。2枚の合成写真です。


 ○釧路湿原、細岡展望台1  
 摩周湖から釧路市まで南下する途中に釧路湿原があります。
 湿原を作っているのはクッチャロ湖に源を発する釧路川です。日没20分前に、中流の塘路(とうろ)湖の南にある、細岡展望台に到着です。
 ガイドブックには、ここから見る夕焼けの釧路湿原は、筆舌に尽くしがたいと、説明されていましたが、今その光景が眼前に広がっています。
 
 広々と続く湿原と、蛇行する釧路川。地平線に沈む夕陽、そして、淡い雲に生える夕陽の赤。

 釧路湿原細岡展望台、日没10分前。デジカメ合成写真。


 ○釧路湿原、細岡展望台2
 ここで、この旅行中の最大の「失敗」をしました。

 細岡には展望台がいくつかあるのですが、歩いて行ってみると、手前の展望台は、ものすごい大きな望遠レンズを持ったプロ・アマ取り混ぜた写真家で一杯です。
「今日は絶好の天気だぞ。この雲の感じ・・。」という声が聞こえます。写真家が狙って来るような日に偶然来ることができたのは、本当にラッキーです。あとは、このチャンスを生かせるかどうか。

 ごった返す手前の展望台をあきらめて、奥の展望台に行きます。
 そこは、三脚を据え付けた女性「写真家」が一人いるだけで、あとは、家族連れ・カップルの普通の旅行者です。
 日没10分ほど前に撮影した写真が、上の写真です。
 眺望はすばらしく、落日の赤、闇が迫る大地の緑、夕映えに染まる蛇行する釧路川・・・・。写真でははっきり分かりませんが、本当に素晴らしい光景です。

 但し、景観を楽しもうとする私たちに、邪魔者がいました。数日前の雨とその後の好天気のせいで発生した、ものすごいヤブ蚊の大軍です。中には、体に蚊取り線香をぶら下げている家族連れがいます。あちこち刺されまくります。

 そういうこともあって、そうそうに引き揚げる観光客がほとんどです。
 私と、女性写真家は、じっと時を待ちました。
 夕映えの写真は、日没前ではなく、日が沈む時が非常に美しい、と言うことは何となく分かっていたからです。

 ところが、もうひとつ、まずいことが起こっていました。
 デジカメの、メモリーが残り少なく、あと10枚程度のシャッターチャンスしかないことです。

 17時15分待っていた日没が訪れます。
 隣の女性写真家もシャッターのヒモ(正式には何というのですか、あの、シャッターにつなげて、手元で操作するやつです。写真家ですから、写すときは、ファインダーを覗いたりしないのです)を手に、準備万端です。
 彼女がシャッターを押した音を聞いて、私も、残り10枚の撮影を開始しました。

 実は、どの瞬間が一番きれいか自信がなかったので、写真家の女性のまねをしたわけです。
 何十秒か、北海道の大地に沈みゆく落日をみつつ写真を撮りました。これが下の写真です。 


細岡展望台からの眺望、日没時デジカメ合成写真。この後が本番だった。


 ○釧路湿原、細岡展望台3
 撮影を終えて帰ろうとすると、隣の写真家は、まだ動こうとしません。それどころか、もう一度ファインダーを覗き直して、なにやら調整中です。
 今まで邪魔をしてはいけない、みだりに若い女性に話しかけてはいけない、と思って自重していましたが、ここは聞かなければなりません。
「あのー、まだ撮影をされるんですか?」
「ええ、これからが、きれいですよ。」
「えっ、これから」

 デジカメのメモリーを使い切ってしまった私は、彼女の言葉がうそであることを祈りました。

 しかし、やはり、その道の先達の発言は正しかったのです。
 上の写真で状況を説明します。想像してください。

 この日は、空に薄雲がたなびく絶好の日和だったのです。
 17時25分、完全に地平線の下に落ちきった太陽からの光で、雲が下から照らし出されます。雲が真っ赤に染まります。なんともう、見事な景観です。
 さらに、驚くなかれ、その光が雲に反射して、さらに大地を茜色に染め始めます。太陽はないのに、空も赤、大地も赤です。
 これだったのです。この瞬間だったのです。最高の景色は。
 正確には、この最高のシーンは、17時35分頃から数分間続きました。いわゆる普通の日没から20分後です。
 
 目には、焼き付けました。
 しかし、写真は撮れません。デジカメをぶん投げたい気分でした。

 「また、来なさい。」茜色の空と大地が、そう言っているようでした。

 このあと、駐車場の車まで帰る山道で、また、ハプニングが。
 薄暗闇の中から、何か出てきました。一瞬子犬のように見えたそれは、よく見ると、キタギツネの子です。
 「あれ、これ。キツネ?」
 キツネは、怖がることもなく、私の側をついてとことこ歩いてきます。
 「おっさん、そのカメラ、写せねんだろう」とでも言いたげでした。
 数分後、少し後ろを歩いていた家族連れが気が付いて、大騒ぎするまで、子キツネくんとの散歩が続きました。


塘路湖の船着き場


 ○塘路湖、釧路湿原、ボート1
 9月23日も、またまた好天気。私たちの旅が始まる前の1週間が、悪天候、土砂降りの雨、冷気という悪条件だったのがうそのような、これで4日間連続の晴れです。
 朝早く釧路市内のホテル出発。

 目的地は、釧路湿原の中程、釧路川の中流にある塘路(とうろ)湖です。
 釧路川では、あちらころらで、川や湿原の体験ツアーに参加できます。トレッキング、乗馬、カヌー、ボートなどです。

 そのうちの一つ、塘路湖畔にある「レイクサイドとうろ」で、6人のりカヌー風のボートで、川下りに挑戦です。
  ※レイクサイドとうろ 01548−7−2172 大人一人9000円
 宣伝文句では、「釧路川ツーリングで釧路湿原の雄大さをあらためて実感することができます。タンチョウ・アオサギ・エゾシカ・キタキツネなど湿原に生息する野生動物と出会えることも珍しくありません。」

 ボートとはいえ、カヌー風ですから、漕ぐのは、パドル使ってやります。
 乗る前に説明があったのですが、私は一人旅ですから、他の団体と一緒に乗船しなければなりません。
 乗船場で紹介されて、これはまずいと思いました。一緒に乗った団体は、東京のシルバーご夫婦と添乗員の女性です。これでは、本船の動力は、インストラクターのお兄ちゃんと私の二人になりそうです。

ボートだからね、漕がないと進まないんだけど・・・

釧路川本流 一部を除いて流れは穏やか


 ○塘路湖、釧路湿原、ボート2
 いろいろな動物が見られるかも、というのは宣伝文句だけで、実際は、アオサギが数羽、視界に入っただけでした。残念。
 動物が現れたりのドラマがなかったので、客の話は、自然と昨日何やった、これからどうするの、旅の話となり、次第に、話題の中心は、私の色丹島訪問になっていきました。何しろ珍しいものですから。

 私自身の貴重な体験は、カヌー漕ぎ。
 私の席は、客席の最後尾、インストラクターの前で、隣は、女性添乗員です。
 上の写真のように前の4人は誰も漕ぎません。

 その結果、始めからずいぶん真剣に漕いだのです。それでも、
「インストラクターさん、もう予定時間の3分の2の1時間もたちましたが、予定でどおり進んでいますか?」
「いや、まだ(コースの)半分ぐらいしか来ていない。すみませんが、頑張って漕いでください。」
 やはり・・・・。
 それからは、周囲の景観など目に入れず、ひたすら漕ぎました。
 ずいぶん涼しい気候でしたが、ついには、汗が出始めます。
「インストラクターさん、暑いんですが、ライフジャケット脱いでいいですか。」「駄目、絶対駄目」

 ついには、手にマメまで作って、やっとゴールの細岡カヌーステーションに到着です。
「気持ちよかったね」「最高、最高」
 誰のおかげで、時間どおりついたとおもっとるんじゃ。料金払うどころか、ボート漕ぎの日当が欲しいわい。 


川は蛇行しているため、先が見えないところがまたいい

唯一みた動物、アオサギ


 ○コッタロ展望台
 最後は、車で砂利道を、コッタロ展望台まで爆走です。
 ここは、釧路湿原北部に当たり、湿原の原始的な姿が見られるところです。
 「こんな所が日本にもあるんですね。」
 展望台では、誰しも思わずそういいたくなります。

 23日12時、釧路湿原をあとにしました。緑の風がさわやかです。

釧路湿原最後の訪問地、コッタロ展望台からの、湿原北部の景観、デジカメ合成写真


| 北方領土・北海道訪問記へのメニューへ | | 前へ | | 次へ |