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 軍港クルーズの船は、海上自衛隊の潜水艦バースと反対側の横須賀駅との間まで来ると、反転します。
 次に向かう地図の記号
J・Lの場所は、海上自衛隊が使用する吉倉桟橋です。

 2005年8月6日は、あまり多くの艦船が停泊しておらず、ちょっと残念でした。お目当ての、
イージス艦きりしま(海上自衛隊の4隻のイージス艦のうち横須賀を母港とするのが、きりしま)もいませんでした。| 目次と地図へ |



 
 それでも、いくつか有名な艦を見ることが出来ました。
 何気なく停泊している艦船の中にも、現在の海上自衛隊の在り方を象徴している艦があります。

 そのひとつが、
423補給艦ときわです。
 (すみません。写真の貨物船の向こう側の、逆光でよく見えない艦です。05/08/06撮影)
 この艦は
主に艦船の燃料の油を補給する艦です、といえばこの艦の「現代政治上の意義」を推察していただけるでしょうか。

 この艦は、湾岸戦争後の機雷の掃海部隊の補給艦としてペルシア湾に出動したのを皮切りに、この10年の間に何回も「出撃」(表現がちょっと物騒ですか、(-.-))しました。

 2002年2月には、護衛艦
さわかぜ、同はるなとともにテロ対策特別措置法(2001年11月成立)によるインド洋派遣部隊の第2陣として、インド洋に向かいました。
 この法律は、端的に言えば、アメリカが2001年の9・11事件の後、テロの首謀者オサマ・ビン・ラディンが潜む、アフガニスタンを報復攻撃することへの支援、つまり、
対テロ戦争の後方支援(作戦に従事するアメリカ艦船等への燃料補給等)を定めたものです。
 当初、2年間の時限立法でしたが、
2003年3月にイラク戦争が勃発したことを受け、同年11月、2年間の延長措置がなされ、現在に至っています。

 
補給艦ときわは、これまで3回もインド洋に「出撃」し、合計532日間も任務に従事しました。2004年12月のインドネシアのスマトラ沖地震の後の救援活動にも、たまたまインド洋に居合わせて活躍しました。
 2005年8月31日現在は、
護衛艦しまかぜ同ゆうだち補給艦とわだの3隻が派遣されています。
  ※海上自衛隊の公式HPはこちらです。→インド洋への派遣艦船一覧はこちらです。→

 
ときわは、インド洋で任務に従事している間に、アメリカ海軍艦艇をはじめとして、イギリス・ドイツ・イタリア・フランスなど「多国籍」の艦艇に給油しました。もちろん費用は、日本の負担です。その回数は、151回にも及んでいます。
  ※自衛隊海上幕僚部2005年8月30日発表資料
  ※海上自衛隊のデータ「補給・輸送協力支援活動等の実績について」はこちらです。→

 新聞によると、
テロ対策特別措置法による出動部隊が最初に外国艦船への給油を行ったのは、2001年12月。この月の給油量は、約1万6000キロリットル。
 翌年、2002年は、毎月およそ1万5000から2万キロリットルの給油を行いました。2002年3月は飛び抜けて量が多く、約4万キロリットルもの給油を行いました。
 各国のインド洋派遣部隊の活動が鈍くなった2003年3月以降は、給油量は1万キロリットルを超えることはなく、2005年になってからは、5000キロリットル以内となっています。
 それでも、これまでの総量は相当な量になり、
2001年12月から2005年8月25日までに、約40万7000キロリットルになっています。う〜ん、この総量だけではピンと来ません。
 そこで、その燃料費を金額に換算すると、なんと
約160億円になるそうです。これならわかりますね。そのうちアメリカ分への給与が137億円分です。(ちなみに、この数値で換算すると、1キロリットルあたり約3万9300円、1リットルあたり39.3円の燃料ということになります。)
  ※『朝日新聞』(2005年9月3日(日)朝刊第4面)を参考にしました。

 
補給艦ときわ最近の自衛隊のありかたを象徴する艦のひとつです。

 もし、高校公民科目の「現代社会」や「政治・経済」で憲法第9条や自衛隊を教えるのなら、古い時代のことはそこそこにしておいて、現在の自衛隊の在り方や、今世紀に入ってから自衛隊が進んでいる方向を解説し、日本の進むべき方向を考える授業を展開すべきでしょう。これは、その際に、生徒の思考を促す資料となります。
 
 
授業のポイントは、今横須賀で、そしてインド洋で何が起こっているかを理解することです。
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【05/12/11追記】 インド洋派遣部隊、1年派遣延長

 政府は、10月4日の閣議で、時限立法であるテロ対策特別措置法が11月1日で期限切れとなることから、同法を1年間再延長することを決定した。
 前回2003年の改正では延長期間は2年間であり、自民党は今回も9月段階では2年間の延長を考えていたが、艦船への補給実績が減少していることから不要論も起こり、小泉首相が再延長に慎重な考えをもっていたこともあり、1年間のみの延長となりました。

 延長を決めたテロ対策特別措置法改正案は、10月の特別国会に提出され、10月26日の参議院本会議で与党(自民党・公明党)の賛成多数で可決され、成立しました。(民社党は反対)

 2005年12月2日現在、補給実績は以下のとおりとなっています。(実際に補給を開始した2001年12月2日から丸4年間の実績)
 上記の換算数値を使うと、約162億3000万円の補給額となります。


項目

艦艇用燃料 艦艇搭載ヘリコプター用燃料

補給回数

566回 42回 28回

補給量

約41万3千kl 約2,200t 約430kl


 関連して記述しますと、
2005年12月9日には、政府はイラク復興支援特別措置法に基づく自衛隊のイラク派遣期間を1年間延長する新たな基本計画を閣議決定しました。延長期間は2005年12月15日から、2006年12月14日までとなります。この法律は、航空自衛隊と陸上自衛隊を派遣するもので、当初は2004年12月まででしたが、昨年1年間の延長となり、今年再延長となりました。
 政府は、現段階では2006年6月ごろに陸上自衛隊の撤退を開始し、8月に完了する方針です。ただし、航空自衛隊については、アメリカ要請を受けて、陸上自衛隊の撤退後も継続させるということです。

423補給艦ときわです。8月28日は、湾の真ん中、地点に停泊していました。(撮影日05/08/28、Eより)


 補給艦ときわの隣に停泊する、砕氷艦しらせです。(撮影日05/08/06、E地点より)

 この艦も海上自衛隊の艦でした。基準排水量11600トンで、
海上自衛隊最大の艦船です。 
 ただし、建設時の予算は、現在でいう文部科学省の予算でした。    
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