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南阿蘇鉄道と阿蘇カルデラ             

 このページ、その2は、南阿蘇鉄道阿蘇山の地理の話題の前半です。

旅  程

第1日目

中部国際空港→宮崎空港→宮崎県庁→延岡→高千穂(宿泊)

第2日目

高千穂五ヶ瀬→高森→立野→肥後大津→熊本空港→中部国際空港

 朝、高千穂を出て五ヶ瀬の視察を終わったの時は、午後1時半過ぎ。出張の予定はこれで終了、あとは帰るだけです。
 往路は中部国際空港から
宮崎空港へ来たわけですが、それは、第1日目に宮崎県庁を訪問する予定があったからです。
 地図を見てください。
 
五ヶ瀬は、宮崎市とは違い、宮崎県の北西部の県境近くです。
 最寄りの空港は、
熊本空港ということになります。
 というわけで、五ヶ瀬からタクシーで向かったのは、
阿蘇山のカルデラ内にある南阿蘇鉄道の高森駅


上の2枚の地図は、グーグル・アースよりGoogle Earth home http://earth.google.com/)の写真から作製しました。都市・川・鉄道の位置ともフリーハンドで書いていますので、正確さは今ひとつです。あくまでイメージ図です。


この地図は、3D地図作製ソフト「カシミール3D」を利用して作成しました。川や鉄道路線は概ねのもので、あくまでイメージ図です。
カシミールについては、「ITを活用した授業」参照。(こちらです。
「ここに掲載の地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しました。(承認番号 平15総使、第523号)


 五ヶ瀬から北へ向かうと国道265号線は、すぐに県境を越えて宮崎県から熊本県に入ります。

 しばらく走ると、
阿蘇外輪山の南東側の斜面になります。
 国道265号線は、高千穂から北325号線と合流して、外輪山のひとつ、標高882mの御成山の下を高森トンネルで通って、外輪山の内側、カルデラの内部に入ります。

 
南阿蘇鉄道高森駅は、トンネルを出てすぐの所にあります。
 


 南阿蘇鉄道のレールバス。
 この鉄道の前身は、旧国鉄
高森線です。1986(昭和61)年、第3セクターとなりました。今年で20年目。
 
阿蘇カルデラの南側を半周して、カルデラの西の出口立野で、JR九州豊肥本線(九州横断線)とつながります。
 駅は、ホームが南北に作られており、南側から撮影すると、後ろにうまく阿蘇山が入ります。
 ところで、阿蘇山というのは、阿蘇の山々の総称で、具体的には、東側から
根子岳

高岳、中岳烏帽子岳杵島岳阿蘇五岳が並んでいます。写真の背景は、右端の峰が高岳、左の峰が中岳です。  


 南阿蘇鉄道の線路は、高森駅出発時には、南北方向に向いていますが、300mも走るとすぐに90度右カーブして、西に向かいます。
 その後は、外輪山の西の出口に向かって進みますから、立野に向かう上り列車からは、
進行方向右側に阿蘇山本体左側に、外輪山の南側部分が見えることになります。
 写真の山は、
阿蘇五岳の、一番東端にある、根子岳1433mです。
 ギザギザの山頂が印象的な山です。


 (高森駅の次の駅、見晴台駅付近で撮影。)

阿蘇白川付近の線路。
 南阿蘇鉄道の路線は、カルデラ内をおおむね西に向かって伸びています。遠くの山は、外輪山の西側方面。右端の見えなくなっているところで
外輪山は低くなっており、そこを越えて外輪山の外へ出ます。そこにある町が豊肥本線との接続駅、立野

 車中から南を向いて撮影。南側の外輪山の様子。
 カルデラ内には二つの大きな河川があります。南を流れる
白川、北を流れる黒川です。
 この二つの川も立野の手前で合流して、外輪山を出たあと、
白川として、熊本平野をつくり島原湾へ注ぎます。
 この写真では外輪山のすぐ内側を白川が流れており、南に向かって緩やかな傾斜地に棚田が作られています。


 列車は、高森駅を14:44に出発し、立野駅到着は15:11です。
 これは途中にある、
中松駅。始発・終着を含めて、駅の数は9駅。路線延長は、17.7km。
 夏ダイヤでは、1日2往復、
トロッコ列車が運転されます。
 それも含めて1日15往復のローカル路線です。
 そのうち、7往復が、この
中松駅ですれ違います。
 下の時刻表をご覧ください。
 私が乗った
高森14:44発の上り列車は、立野まで、27分で行きます。 


 ところが、中松駅ですれ違った、立野14:35発の下り列車は、31分かけて、高森に到着します。
 この2本だけでなく、立野発の
下り列車は、所要時間が31分前後、反対に、高森発の上り列車は、26分・27分ぐらいで、立野に着きます。
 この所要時間の違いはどうして生じるのでしょうか?
(答えは、下の写真の次にあります。)  

駅名

上り列車

下り列車

高森
見晴台
阿蘇白川
中松
白水高原
阿蘇下田
加勢
長陽
立野

発↓ 14:44
発↓ 14:46
発↓ 14:50
発↓ 14:54
発↓ 14:57
発↓ 14:59
発↓ 15:02
発↓ 15:04
着   15:11

着   15:06
発↑ 15:03
発↑ 14:58
発↑ 14:54
発↑ 14:50
発↑ 14:47
発↑ 14:44
発↑ 14:42
発↑ 14:35

所要時間

27分

31分


 南阿蘇水の生まれる里白水高原(みなみあそみずのうまれるさとはくすいこうげん)駅を過ぎると、阿蘇の天然のわき水、阿蘇白水の水源地が車窓から見えます。左の山は、烏帽子岳です。ちなみに、この駅名は、5年前までは、日本一長い駅名でした。
 しかし、現在は、島根県松江市の一畑電鉄の北松江線にある、ルイス・C.ティファニー庭園美術館前駅(るいす・しー・てぃふぁにーていえんびじゅつかんまええき)が1番だそうです。どっちにしても、こんな駅名にした関係者の遊び心に拍手です。 

 【追記】 2010(平成22)年8月15日追記
 上記の、一畑電鉄北松江線の『
ルイス・C.ティファニー庭園美術館前駅』は、2007年3月末に、同庭園美術館が廃館となったため、同年5月に『松江イングリッシュガーデン前駅』と改称されました。
 この結果、日本一長い駅名は、再び、この『南阿蘇水の生まれる里白水高原駅』に戻ってきました。
  ※一畑電鉄北松江線については、こちらでレポートしています。(→旅行記『出雲・石見旅行記3 一畑電鉄』


 さて、上の、上りと下りの所要時間が異なる問題の解答です。
 右のグラフをご覧ください。
 これは、
南阿蘇鉄道の各駅の駅間距離と標高です。
 南阿蘇鉄道は、17.7kmの路線の距離の間に、なんと
標高差270mを上り下りするのです。
 しかも、言葉と実態が反対になっています。
 
「下り列車」と表現される立野から高森に向かう列車が、実際は、山登り列車です。そして、反対に、「上り列車」と表現される高森から立野に向かう列車が、山下り列車です。
 ディーゼル動力のレールバスですから、
この山登りはきついものです。したがって、立野から高森にむかう「下り列車」は、反対の列車より、時間がかかるというわけです。地図へ戻る


 カルデラの西部を走る列車内から。
 線路がずいぶん下りになっているのが、左右の水田の水面と線路の角度との違いから、分かります。
 運転手は、駅から発車する時を除いては、ほとんど惰性で走ります。
 前方は、
阿蘇外輪山の西部で、左の尾根と右の尾根の隙間を通って、外輪山から、抜けます。
 その隙間に、JR
豊肥本線との接続駅、立野があります。
  地図へ戻る
 


 長陽駅を過ぎると、次の終着の立野駅まで、かなりきつい下り勾配です。
 路線距離4.7kmの間に、標高差77mを下ります。
 16.38パーミル(1000mで標高差16.38m)の勾配です。
 その間に、トンネルが2つあります。右の写真は、2つのうち長い方の
戸下トンネルを出た所です。 鉄橋の向こうに、2つ目のトンネルの入口が見えます。
 間に
白川を渡る鉄橋があります。これはかなり古い鉄橋で、す。 


 運転士は、鉄橋の上でほとんど停車せんばかりにスピードを緩めて、乗客にシャッターチャンスを提供します。
 これも、観光地の第三セクターならではのサービスです。
 右の写真が、鉄橋上から撮影した、
白川の渓谷です。
 阿蘇カルデラの南部を流れてきた
白川は、この少し上流で、北部を流れてきた黒川と合流し、外輪山の低い部分をおもいっきり浸食して深い谷を作りながら、島原湾へと流れていきます。
 
  


上と同じ鉄橋から、白川上流部分を撮影した写真。
 前方の山の中腹に道路が見える部分の右側が、
白川の谷、左側は、うまく映っていませんが、合流する黒川の谷です。

 自分が列車に乗っているので不可能ですが、反対に、この鉄橋を渡るこの列車を写すと、非常にいい写真ができることは請け合いですね。

 このあたりの森林は、植林などがなされていない、
阿蘇北向谷原始林です。
 


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