円座石(わろうだいし)というのは、横5メートル、高さ2メートルほどの大きな石で、そのうえに、右の様な文字が書いてあります。(左の家族写真では、顔の位置の背後にあたります。)
D |
「父ちゃん、円座とかいて『わろうだ』と読むのは何で?それに、この○の中の奇怪な文様は何?」 |
父 |
「これは、いくつも説明しないといけない。
まず、円座という言葉の意味そのものだが、これは、もともと、昔の人が座る時に尻の下に敷いた、丸い藁でできた敷物のことなんだ。丸い座布団の様な敷物だから、漢字で、円座と書くのはすぐわかる。」 |
D |
「で、なんで、『わろうだ』なの?」 |
父 |
「わらで作った丸い鍋の蓋のようなもの、つまり、『わらふた』が、なまって、わろうだとなった。」 |
Y |
「何か、嘘くせぇ。」 |
父 |
「嘘じゃない、ちゃんと広辞苑で予習してきた。」 |
D |
「ほんじゃ、あの模様は?」 |
父 |
「その前に、誰がこの石に座るのかというと、なんと、熊野の本宮・速玉大社(新宮)・那智大社の3神がこの石に座って酒を酌み交わしたという言い伝えがある。
熊野の3神は、本地垂迹説(探検1で説明、こちらです。)によって、それぞれ、仏さんの化身とされていたから、この石の上には、それぞれが座る場所、右から、阿弥陀如来(本宮)、薬師如来(速玉大社)、千手観音(那智大社)を意味することばが書かれているのだ。あの模様のようなものは文字だ。」 |
K |
「これって何語?日本語?」 |
父 |
「いや違う。梵字(ぼんじ)だ。」 |
D |
「ぼんじ?何それ。」 |
父 |
「君はまだ習っていない。
世界史の古代インドの所で出てくる、サンスクリット語のことだ。日本では別名梵語といい、それを著す文字をサンスクリット文字、梵字というのだ。古代インドの身分制度の最上級の人びとであるバラモン階級の言語だった。父ちゃんの大学の同級生には、梵語梵文学という勉強をしている友達がいた。」 |
D |
「なんやらわけがわからない、話を聞くだけで得体の知れない石だ。」 |
父 |
「神々しい石と言ってほしい。」 |
この円座石のところで、偶然にも、那智からやって来たというおじさんとすれ違いました。9時過ぎに青岸渡寺を出て、昼ご飯も含めて、17kmの山道を5時間半ぐらいで歩いてきたとのことです。
D |
「あのおじさんすごいな。わられも、「目指せ那智の滝」ってのはどう?」 |
父 |
「う〜ん。」 |
ちなみに、この日、われわれが古道を歩いたのは、1時間半とちょっとでしたが、その間にすれ違ったのは、このおじさんと、もう一組の初老のグループの2組でした。こちらのかた方は、女性も混じっていましたが、このグループも青岸渡寺から来た人たちでした。
人気の熊野古道ですから、蟻のように人がいるかと思いきや、さすがに、ここまで来て歩く人は少ないんですね。
しかし、これは幸いでした。雑踏のようなら、興ざめです。
おかげで、熊野の山の霊気、森のエネルギーを感じることができました。 |