○交流会1
20日・21日の両日とも、夕食は、それぞれの町の教育関係者との交流会でした。場所は、斜古丹のカフェです。
20日は穴澗の関係者との交流会です。
テーブルの上には、ロシアの料理とアルコール類が、所狭しと並べられています。豪華な料理というわけではありませんが、心を尽くしたもてなしです。
穴澗の村長、小中学校の校長の挨拶の後、もちろんウォッカで乾杯です。
ウォッカは、乾杯の後はグラスにつがれた分をちゃんと飲み干すのが礼儀だそうです。
事務局S氏「そうはいっても、ロシア人と対等に飲んだらつぶれてしまいますから、弱い人は、遠慮なくグラスの口を塞いで断ってください。」もちろん、酒に弱い私は、慎重に、自制です。味が分からないくらい強いお酒です。
総勢、80人ほどの中に、通訳は6人。
いろいろ話したいのですが、そう簡単にはいきません。通訳さんは料理を食べるヒマもなくて大変です。
少し時間がたってから、事務局のSさんが呼びかけてきました。
「私の席の隣は、穴澗小中学校の英語の先生ですが、私は英語は苦手なので、誰か英語が話せる人、いませんか。」
「どのくらい通じるか分かりませんが」といって、出しゃばりの私は、席を移動しました。
○ナタリヤ1
「今日は、岐阜県から来たMです。」「ダネリヤ・ナタリヤです。」
聞くと彼女は、穴澗小中学校の英語の先生でした。
ナ |
「岐阜というのはどこにありますか」 |
M |
「大阪と東京の中間より、すこし西、海に面していない県です。」 |
ナ |
「趣味は何ですか」 |
M |
「サッカーをすることと、インターネットでメールを送ったり、ホームページをつくることです。あなたは。」 |
ナ |
「色丹島はインターネットに接続できないので、見られなくて残念です。メールアドレスは持っていますが、ここからは打てません。私の趣味は水泳です。」 |
M |
「えっ、この島で泳ぐことができるのですか。」 |
ナ |
「夏の暑いときは、穴澗や斜古丹とは違う水のきれいなところで、水泳します。」 |
なんか、寒そうな気がしますが、ここの住民にとっては、夏はやはり暑いのでしょう。そういえば、ニュージーランドの人たちも、夏とはいえ30度には達しない日に、今日は特別暑い暑いといって、海水浴していました。
インターネット環境は、予想どおりです。燃料に事欠くような今の状況を見ると、簡単につながりそうもありません。
彼女の英語は、英語母国民の英語より発音がきれいでゆっくりで、とてもわかりやすい英語でした。おかげで、いろいろなことを話すことができました。
ナ
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「日本ではみんな英語を学習するのですか。」
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M
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「今も昔もそうです。中学から大学まで8年間です。今の子どもたちは、小学校からやる場合もあります。」
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ナ
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「ロシアでも年上の世代は英語はほとんど駄目ですが、今の子どもたちは、本土では幼稚園から英語教育を取り入れています。色丹島では、教師がいないので、中学校から週3時間です。」
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もっと難しい事柄も、思い切って聞きたいことも聞けました。
M
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「あなた方夫婦はどこからなぜこの色丹島へやってきたのか。」
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ナ
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「私は、黒海とカスピ海の間のコーカサス出身です。高校生の時代から、自然や自分たちと異なる民族(民俗)に興味があって、特に日本語には興味があったのですが、自分の故郷では日本語を勉強することはできませんでした。語学系の大学を出て、調査研究所で通訳をしていました。その後、色丹島にやってきました。学校の英語の先生の就職口があったので、ここに住み着くことになりました。1983年のことです。」
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M
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「あなたのご夫君は?」
ナ「彼はペテルブルク(旧レニングラード)の出身です。英語の先生の働き口を見つけて、ここへやってきました。夫とはこの島で知り合って結婚しました。9歳の娘がいます。」
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ナ
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「彼はペテルブルク(旧レニングラード)の出身です。英語の先生の働き口を見つけて、ここへやってきました。夫とはこの島で知り合って結婚しました。9歳の娘がいます。」
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M
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「ここへきたのは、あなたたちの自由な意志ですね。特別な政策ではないのですね。」
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ナタリヤは不思議そうな顔で答えました。「もちろん、自分の意志でやってきました。誰かの命令ではありません。」
ロシア人がどうしてこの北方領土へやってきたかという問いの答えは、様々であることが分かりました。俗に聞く、ソ連・ロシア政府の「植民政策」という政治臭の強い理解は、あまりあてはまりません。
斜古丹小中学校の音楽の先生も、音楽教員の職を紹介されて、この島へ来たと聞きました。
ナ
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「あなたは明日は穴澗の小中学校へ行くグループですか?」
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M
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「僕は、斜古丹小中学校へ行くグループだ。残念ながら会えない。」
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ナ
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「もっと時間があれば、いろいろ聞くことができるのに。」
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彼女は実は、今年から中学生に日本語も教えていて、盛んに日本語の確認を求めました。もっとも、日本語での会話はまだできません。ほんの初歩の日本語です。
「日本語には文字が3種類もあって困るが、とくに漢字は多い。あなた方はいったい幾つの漢字を知っているのか?」と聞かれ、答えに窮してしまいました。
ナ
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「ロシア語はいくつ覚えました?」
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M
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「こんにちは、おはよう、ありがとう、さようなら、私の名前は○○です。ヒストーリャ(歴史)の6つです。ロシア文字は、英語と違って、見ても分からないから難しい。」
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ナ
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「よいロシア語を教えてあげます。セヨ ビロ ハラショー,意味は Every thing was good.です。あなたにとってこの旅がそうなるといいですね。」
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少し酔っぱらって、楽しく話して、時間はあっという間に過ぎました。はしけに乗って、船に帰らねばなりません。
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