これは、私が2002(平成14)年9月18日(水)〜9月22日(日)に研修で出かけた北方領土色丹島の訪問記と、ついでに回った、北海道東部の旅行記です。


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D オホーツクの航海、イルカ・クジラ?

 
○コーラルホワイト号、ブリッジ

 コーラルホワイト号は、巡航速度10ノット(時速約18`)でオホーツク海を走りました。
 W船長が気さくな人で、事前研修会の時に、「航海中はどうぞブリッジにおいでください。いろいろご説明もできると思います。」といってくださいました。これを単なる社交辞令と受け取っては、人生無味乾燥です。遠慮なく伺いました。

 船長は58歳、北方4島交流事業用のこのコーラルホワイト号でもう何十回とオホーツクの海を渡っているベテランです。
私「昨日は船長の言うとおり酔い止め薬を飲んだので、よく眠れました。」
船長「そりゃよかった。んだけど、このくらいの波じゃ、酔えねぇー。オホーツクの海はこんなもんじゃねぇー。ここは海面からの高さで言うと、ビルの5階にあたる。ここまで波がかぶる時なんか、そりゃひどいもんだ。」
 
 そんな目に遭わないことを祈るのみです。 
 実は私は、酔い止め薬を飲むと、すごく効き目が出てしまうありがたい体質で、三半規管が酩酊状態、つまり、頭の芯がすーぅっと抜けていくような気持ちいい状態の航海二日目でした。下の写真で分かるように天気は申し分のない晴天です。

私「この船は毎年同じ任務に就くのですか?」
船長「5月の最初の渡航から、この9月の最終まで半年の任務だ。オフは広島のドッグでやすんどる。」
私「船長さんや乗組員のみなさんはどうするんですか?」
船長「船に乗る5ヶ月の間の契約だから、それ以外はバラバラに別のことをやっとる。私は、別の船に乗っている。」

 艦橋(おっと、軍艦ではないんですから船橋ですね、でも海軍ファンの私としてはついこの用語が出てしまいます(^o^))には、コーラルホワイト号の諸原表が貼ってあります。それによると本来の乗組員は10名なので、この運航の8名というのは、きついやりくり任務なのでしょう。

船長「日本人ばかりをやとうのは、経理の面で大変だから。日本人なら月給50万円、外国人なら5万円ってとこかな。」 私たちにしてみれば、クルーが全員日本人でこの上なく安心です。

 司厨長(コック長)のさんは、ビザなし交流に最初から参加している唯一の人です。
コック長「ロシア人は最初ののころから比べればだいぶ変化して、融通が利くようになった。最初の頃は、自分たちロシアは1等国、お前ら日本は2等国という意識が見え見えだった。今はそんな意識はなく、敬意を払ってくれる。これも交流の成果だ。こんな小さな船のコック長にも、その変化が分かる。でも、ロシアの軍人は、今でも融通が利かねぇー。」 




 ブリッジ内、左は私、窓側の帽子姿が船長   ジャイロコンパス、いわゆる羅針盤です 

 ○イルカ・クジラ?
 北方4島交流推進全国会議の事務局からは、今回5人の方が同行されました。一番上役は課長さんですが、実際の切り盛りをするこの団の陰の実力者は、陽気で積極的な事務局員S氏です。
 
 船室で談笑しているとスピーカーから彼の興奮した声が。
「左舷、イルカ多数発見、10時方向」

 軍艦の敵艦発見の号令のような口調にせかされて、みんな甲板へ。
 20日午前11時30分、初めて海で泳ぐイルカを見ました。
 
 下の写真は、復路に撮影したものです。往復の航海で、イルカは何十頭も見ることができましたが、ちょうど海面上に飛び跳ねた瞬間の写真というのは、なかなか撮影が難しく、うまくいったのはこれ1枚だけです。ただ海だけが映っている20枚近い失敗作と引き替えの、貴重な1枚です。

 22日の復路は、天候は快晴無風。海はべた凪の状態でした。船長に、「今日は酔い止め薬を飲まなくていいかな」といったら、「おめー、今日のここは海じゃなくて、プールだ」といわれてしまいました。こんな天候なら、どこを見ていようが、船酔いになる心配はありません。

 早速ブリッジにのぼって、今度は「ホエール・ウォッチング」に挑戦です。
 仕事が一段落した甲板員のTさんも協力してくれます。船長を始め団員数人で、必死に海面を見つめます。
船長「くじらなんざ、おめー、くるときにはくるもんだぞ、こないだ、本船の下をくぐった」

 べた凪ですから、何か水しぶきが上がったり波頭が見えれば、そこに何かいる証拠になります。

 見張り続けて1時間半、甲板員さんが叫びます。
「3時方向遠く、何か浮き上がった。大きい。」
 といわれて見ても、もうそこには何もありません。待つこと数分、もう一度何かが海面へ。
「やった、あれクジラ?」船長も双眼鏡で確認します。「船長、あれクジラですよね、大きかったですよ。」
 
 しかし、我々の期待を裏切って、船長は「判定」します。
「いや、ちがうべ、クジラはいくら遠くても、もっとでっかい。」
 船長、うそでもいいから「クジラ」っていってくださいよ・・・。
 しかし、専門家のことばは曲げられません。

 それからさらに1時間半、つごう3時間のウォッチングでしたが、ついに、ホエールは現れずじまいでした。イルカは、飽きるほど見ましたが、さすが、クジラはそう簡単には出て来やしませんでした。残念無念。 




オホーツク海のイルカ、潜水艦ではありません  22日快晴べた凪のオホーツク海 

 ○舵輪
 同じく、べた凪の22日の話です。

私「船長、これがカジを切る舵輪ですか。映画で見る昔の海賊船のと違って、ずいぶん小さいですね。」
船長「そうだ、電気仕掛けだからな。別にでかくなくてもいいんだ。わしがこの前乗のった大型船なんか、音声で操船できるやつだった。」
私「音声って、口で取り舵何度、とかいうの。」
船長「そうだ、おまけに間違えると、コンピュータの声が聞き返してくる。」
私「へー、すごいですね。」
船長「すごくねー。わしなんざ、なまりがひどいから、なんべん言っても、聞き返してきやがる。うっとおしい機械だ。」

船長「操船はな、そんな気楽にやるもんじゃない。今は、自動操船になっているが、こんなべた凪の時だって、少しの風とか微妙な潮流があって、まっすぐ走らせることすら難しいんだ。」
私「そういうもんですか」
船長「試しにやってみるか」
私「え、え、??」

 船長は驚く私にお構いなく、自動操船のスイッチを切って、説明を始めます。
船長「今の進路は、中間点へ向かって、185度(真南が180度、そこからやや西向きの進路というわけです)。185度に本船を走らせて見ろ。」
 
 やはりこれが難しいのです。風のせいか潮流のせいか、進路が185度から少しずれます。カジを切るんですが、曲がるまでに少し時間がかかります。すると今度は、曲がりすぎて、結果的に蛇行してしまいます。貴重な体験でした。

左上 舵輪です。舵輪の上にあるのが、進路計。左下は、その拡大。円形中の白い舟形が本船の向かう方角を示しています。この時は185度が決められた進路です。
右上 GPS(衛星を利用した自動位置測定装置)のモニターに現れた、コーラルホワイトの航路図。点線は、国後島古釜婦から納沙布岬沖の中間点までの、進路185度の線。微妙に曲がった実践が、実際のコーラルホワイトの進路。誰がずらした?
右下 ブリッジから見たコーラルホワイトの航跡。やあ、まがってる、まがってる。




 カワイイ小さな舵輪   GPSモニター 点線が予定路線 実線が実際の航路 ずれた  



 進路計、白い舟形が現在向かう方向、この時面舵1度     ブリッジから後方を撮影 航跡が曲がっている 

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