いくら優秀な諜報網があったとしても、当日の、戦艦の完璧な繋留位置まで事前につかむことは不可能です。
戦艦ペンシルバニアは修理用のドックにいました。
ましてや、戦艦アリゾナの右舷にいる特務艦ヴェスタル、戦艦カリフォルニアのそばにいる油槽船ネオショー、これらは、この12月7日(現地時間)の全く偶然の配列です。
開戦日より前の真珠湾の航空写真は、前掲『戦旗クラシックス 真珠湾攻撃』に合計3枚掲載されていますが、そのいずれにおいても、繋留位置の戦艦群の隻数も配列もすべてバラバラです。
つまり、上の写真のミニチュアには、攻撃日より事前には入手することがあり得ない情報が含まれているのです。
4 写真の正体は
ということは、この「真珠湾ミニチュアセット」は、真珠湾攻撃のあと、攻撃隊が撮影して持ち帰ってきた写真をもとに作られたものなのです。
では、誰が何の理由で、こんな精巧なミニチュアを作ったのでしょうか?
これから示す結論には、証拠はありません。あくまで、推理結果です。
「真珠湾ミニチュアセット」は、1942年12月3日、つまり太平洋戦争開戦ほぼ1周年を記念して封切られた、東宝映画「ハワイ・マレー沖海戦」のセットでしょう。
この映画は、日本海軍による真珠湾の米軍奇襲攻撃とマレー半島沖のイギリス東洋艦隊撃滅の大成功を喧伝し、国威を発揚するために、
大本営海軍報道部が企画し、海軍省が後援した戦意高揚映画です。
監督は黒澤明の恩師・山本嘉次郎で、実際の予科練(海軍飛行予科練習生の略、茨城霞ヶ浦に基地があった)で撮影された訓練シーンなど、
今となっては、歴史的な価値も高いといわれています。
しかし、 この映画の最大の注目点は、 戦後に"特撮の神様"と呼ばれることになるあの円谷英二の記念すべきデビュー作である点です。
その独創的なアイディアと、 ミニチュアを駆使してダイナミックに描かれた真珠湾攻撃とマレー沖海戦の2大海戦シーンは、
圧巻の出来映えとされ、戦後の東宝特撮映画の原点とも位置づけられています。
この写真は、そのセットの写真と推定されます。
実は、この映画のフィルムは、戦後のアメリカ軍の占領の際に、作り物ではなく記録映画と間違えられて押収されてしまったという「名作」です。
この写真も、勘違いされて、タイトルが付けられたと考えられます。いかがでしょう。
映画「ハワイ・マレー沖海戦」は2001年から復刻版が、DVDで販売されています。定価6000円、特価4800円です。
我が家の財務省と相談の上、できたら見てみたいと思っています。
もし、他の情報がありましたら、お教え願います。 |